確率の低過ぎるガチャはソシャゲの闇のようだ。
異世界生活百四十七日目 場所ジュドヴァ=ノーヴェ魔族王国、ピュレフォフの大森林
【宅警ノ王】を発動して安全を確保し、俺はメーアとアイリスと対峙した。
「ということで、今から別バージョンの『FANTASY CARDs』のラスボスを召喚します。二人で倒してください」
「「ということで、じゃないですよ!!」」
……いや、突っ込まれても困るんだが。腕試しをするんだからこれくらいの強敵は普通だよね? 伝説の勇者パーティの一員なんだしさ。
「まあ、何かあったら俺が入るし大丈夫じゃないかな? まあ、俺なんか信用できないだろうし、白崎さん達を呼ぶ方が賢明だと思うんだが……」
アイリスとメーアが首を振っている……白崎達に失礼じゃないか? と思ったら張本人? 張本柱? の“天使様”も首を振っていた……おいおい、マジかよ。俺なんてただの補欠要員なモブキャラだぜ! ま、まさか「私が手を下すまでもないわ!」っていう奴か! くっ……なら仕方ないか。
「ランク:
魔獣使役版『FANTASY CARDs』のラスボスにして、王族から竜人となり、
まあ、要するに魔竜レリ●スと
現れたのは半竜半人の黒と紫が混ざった長髪の男。
「コイツ一体につき
「「結構です!!」」
あっ、この程度なら二、三柱束になっても簡単に粉砕できると思うんだけどな……神殺しで。
「〈
「魔法騎士クリステラをセット!」
アイリスの衣装が黒く染まり、布面積が減った代わりに、腕や脚に金属質の
メーアの姿がミニスカートに改造された騎士風女性に切り替わった。
さて……お手並み拝見といきますか。
「〝小型大量槍魔法〟――〝
「〝時間早送り魔法〟――〝
アイリスの投げた槍が割れ、無数の小さな槍となり、巨大な水晶玉に映し出された槍が超高速で紫神へと襲い掛かる……が。
紫神は口を開けると大きく息を吸い込み、小さな槍は青白い塊となって紫神の口の中に消えていった。
「あらゆる魔を喰らう……聞いていなかったとは言わせないぞ」
「……それ、魔法少女の私では絶対に倒せないということですよね!!」
「……僕の魔法系スキルも怪しいですね。スクエア・スラッシュなら通用すると思いますが、他のスキルだと魔法系も含まれてしまうので」
まあ、そうなんだけどね。それをどうにかするのが強くなる第一歩だと思うんだよ。
相手が常に自分の得意分野で倒せる相手だとは限らない。もしかしたら、得意分野を封じてくるかもしれない。
そもそも【物理無効】や【魔法無効】を使う相手に魔法少女が勝てないのか? ……いや、勝てるでしょう? メーアが悩むのならともかく、魔法少女のアイリスが悩む理由はさっぱり分からない……それを「最善を尽くしていない」というのだよ。
「まあ、仕方ないか。……メーアさん、コイツを使ってくれ」
俺の【叡慧ト究慧之神】には、高い解析能力がある。……『FANTASY CARDs』の全てを解析し、そこから望む情報をカードとして抜き取るくらいは造作もないほどの。
「ランク:
黒を主体とした絹のような光沢のドレスで、そこに青薔薇のコサージュをふんだんにあしらった豪華なドレスを纏ったベルベットのような光沢の長い黒髪の少女が
「……これは、もしかして僕が転移する当日に追加される筈だった」
「ご明察――現状ただ一枚存在する
真●超帝国の姫陛下と対をなすようなデザインは狙ったようだが、きっと気のせいだろう……そもそも汐見の世界にあのライトノベルがあるかどうかも定かではないしな。
その能力は――。
-----------------------------------------------
◆通常攻撃・青薔薇の劔
◆青薔薇の斬嵐
◆幽薔薇の束縛
純白の荊を設置する特殊系スキル。荊を破壊することで大ダメージを与えることができる。使用後60秒のクールタイム。
◆虹薔薇の魔術
火・氷・風・雷・土・光・闇のランダムダメージを発生させる魔法系スキル。色とりどりの薔薇が爆発を、吹雪を、竜巻を、雷を、地割れを、光線を、暗黒を巻き起こす。使用後300秒のクールタイム。
◆治癒の白薔薇
白薔薇に触れたものの傷を癒す魔法系スキル。使用後30秒のクールタイム。
-----------------------------------------------
と、まあ意味不明なほど強大なスキルが詰めに詰め込まれている……まあ、ガチャ確率0.0000000001パーセントで獲得可能なキャラだからね。ソシャゲの闇もここまで行くと恐ろしいを通り越して笑えてくるな……というか、本当に出るのか? これ。
「――幽薔薇の束縛!!」
「占い師の
ヴェールで顔を隠している中東の占い師風の格好をしている、胴体部分の露出は結構激しい
-----------------------------------------------
占い師の
LEVEL:10000
HP:10000/10000
ΣΑ:1000000/1000000
STR:10000
DEX:10000
INT:0
CON:10000
APP:99999
POW:10000
LUCK:1000
SKILL
【占い師の堕魔の呪法】LEVEL:1000000
→占い師の堕魔の呪法だよ!
ITEM
-----------------------------------------------
-----------------------------------------------
槍使いの
LEVEL:10000
HP:1000000/1000000
ΣΑ:1000000/1000000
STR:1000000
DEX:10
INT:0
CON:1000000
APP:0
POW:1000000
LUCK:100000
SKILL
【槍使いの堕魔の呪法】LEVEL:10000000
→槍使いの堕魔の呪法だよ!
ITEM
-----------------------------------------------
二体召喚は魔法少女マルミット以来だな……まあ、マルミットは固有魔法一つに対して二つの悪堕ち魔法少女を持っていたから別と言えば別なんだけど。
「――
「――
アイリスが使っている戦術は魔法少女の時と同じもの――しかし、それを呪法でやることに意味がある。
そもそも、呪法の最大の利点は魔法を無効化する敵にも効果的だというところだからね。
更に言えば【魔法無効】も貫通できるという……なんで異世界カオスは呪法対策を取っていないんだろうね? スキルもだけど。
占い師の
幽薔薇の束縛を打ち破り、ダメージを受けつつも不敵に笑い、
そこから、大振りした
「〈
おっ、段階を上げることで出力を増大させて斬撃を振り切ったか。
確かにいい戦法ではあるが、一つ段階をあげたということが変身の自動解除の瞬間が早まるということだ。
さてさて、アイリスの変身が解けるまでこの戦いは長期化するのか……まあ、するようなら俺が横槍を入れるんだけどさ。
「――
手に現れた
更に、
「――青薔薇の劔、青薔薇の劔、青薔薇の劔、青薔薇の劔、青薔薇の劔、青薔薇の劔、幽薔薇の束縛、青薔薇の斬嵐!!」
蒼雪――メーアの連続攻撃が紫神のHPを削り切る。それで、終。
後にはキラキラとした欠片――
◆
「……草子さん、これってカードそのものも改良を加えることができるということですよね?」
「ん? あっ、装備の話か。確かにUpdate Versionカードごとに装備が設定できるようだから、一枚のカードをカスタマイズするだけでも一苦労だろうな。まあ、そういう組み合わせが多いところがソシャゲの魅力なんだろうけどさ」
紫神撃破後、俺達は
エンリに頼んでアクセルフルスロットルで走行しているが、白崎達から突っ込みは入らない。割と白崎達もスピード狂なのかもしれない……勇者にして聖女様がそれで本当にいいのか? 真似する奴が出てくるんじゃないか?
「アポイタカラの長剣が……に、2,000,000,000
どうやら、メーアは武器SHOPを確認して魂を飛ばしてしまっているようだ。……しかし、
「じゃあ、それを一振り購入で」
「………………えっ?」
あっ、メーアが完全に力尽きた。一ノ瀬達が必死で介抱しているけど、〝
「まあ、流石に何度もあれを倒して周回しろとは言わないよ。射出装置に竜殺しの短剣をセットして発射して、ドラゴンを倒して手に入れた竜の盾を売り払ってまた射出装置に竜殺しの短剣をセットする無限ループのようなものを他者に押し付けるようなお嬢ほどの権力はない。……まあ次からは
途端に女子達の目が鋭く見開かれて銀の光を宿らせたのだが……何か焚きつけたらいけないものを焚きつけたかな?
ちなみに、高槻斉人の切り札ではないというのは、そもそも高槻斉人があれをカード化できなかったということであり、高槻斉人があれ以上の手札を持っていたという訳では断じてない。
高槻が転移後新たに七十二枚のカードを生み出し、切り札としていたことはフィードを通して聞いているが、迷宮で戦ったのがその七十二枚ではなく人造魔獣だったことに関してはよく分かっていない。
カードではサイクロプス、ケルベロス、ヨルムンガンドクラスのものを作り上げることができなかったから、スキルを使わずに新たな魔獣を創造する必要があったのか、或いは耐性スキルを持たせるためにあの方法を取らざるを得なかったのか……まあ、紫神を使っても三魔獣を使ってもヴァパリア黎明結社に大打撃を与えるのは無理だっただろうが……あれだと部門長クラスは絶対に倒せないからな。
もしかしたら、誰かがあの魔獣達を喰らって糧とし、ヴァパリア黎明結社と戦うことを望んでいたのか……いや、そんなまさかー。
「ところで……ちょっと寄り道してもいいかな?」
「あたし達は別にいいわよ? 草子君について行っているだけだし拒否権はないわ。でも、珍しいわね。そのまま魔王領アィーアツブスの首都に向かうと思っていたのだけど」
「いや、聖さんに拒否権が無かったとしても白崎さんにはあるだろう? 能因パーティではなく白崎勇者パーティなんだから」
「…………まだその設定を引き摺っていたんだ。もう誰も草子君をただのモブキャラとは思っていないと思うんだけどな」
いや、聖よ。どう考えても俺は白崎パーティの取り巻きN……朝倉や北岡から数えてかなり後ろの方のモブキャラだろ? おい、他の連中も一ノ瀬以外首肯するな……後ジュリアナが同意していた!?
「こっから少し行ったノトルディムの村ってところから《
うん……明らかに危険だよね! もし、イセルガとか一ノ瀬とかに渡ったら絶対に危険なスキルを持っていそうだ! どっちかじゃなくて両方とも!!
……ま、まあ。《
「まあ、《
ちなみに、白崎は
聖女カタリナに関しては
「…………私も行きます」
「ありゃ? これは予想外。まあ、遠方から〝
というか、ジュリアナを連れて行くとオマケにお前が付いてくるのかよ、って奴が付いてくるし。お前は仲間と百合? ハーレムでイチャイチャしてろ。一々敵意向けられると面倒だし。
「ボクも付いて行きますよ。ジュリアナさんに何かあってからでは遅いですし、何より心配ですからね。草子君にボクの仲間を預けるのは」
「あっそ。俺はお前と違って節操もなく他人様に手を出さないよ? だって俺ぼっちだもん。責任もろくに取れないのに手を出すとかあり得ないし、そもそもそういう展開にすらならないのだよ。Seul, seul, je suis seul!!」
「……草子さんはぼっちじゃないですよ! 少なくとも私は草子さんの同志であり、恋人のつもりです!」
「はいはい、BLの同志じゃないし、恋人でもないよー、美人だけど残念なリーファさん。とりあえず、趣味に理解をしてしてくれそうなイケメンを探そうねー、難しいだろうけど」
何故かリーファ撃沈。正論を言われると沈むのは世の常のようだ。
なんか、白崎達がリーファに同情の視線を向けてから俺にジト目を向けてくるし……何か変なことを言ったかね。ついでに、一ノ瀬――お前からジト目を向けられる理由はない!!
「それじゃあ、ちょっと行ってくるんで居残り組は警戒よろしく。まあ、この辺りの魔獣に負ける可能性は皆無だし大丈夫だろうけど、なんかあったらゲートミラーで屋敷に移動しておいてくれ」
俺、白崎、ジュリアナ、一ノ瀬の四人で
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