文学少年(変態さん)は世界最恐!? 〜明らかにハズレの【書誌学】、【異食】、にーとと意味不明な【魔術文化学概論】を押し付けられて異世界召喚された筈なのに気づいたら厄災扱いされていました〜
restart and determination.
restart and determination.
【三人称視点】
異世界生活百四十一日目 場所ジュドヴァ=ノーヴェ魔族王国、魔王領シェリダー
『……あの角獣車、バチカルのものだな。今日、ヘズティス様がお越しになる予定はあったか?』
『本日はバチカルの使者の訪問の予定はなかったと思いますが……』
『確認すればいいだろう。一応警戒はしておけ』
『『『『――はっ!!』』』』
「第二騎士団長ローズクォーツ=ルチルだ。本日、魔王領バチカルから使者が来るという連絡は受けていない。すまないが、身分の確認できるものを提示してもらいたい」
ローズクォーツと名乗った
「はじめまして、白崎華代です。友人の人間――能因草子君を探して旅をしております。この角獣車はヘズティス様からお貸し頂いたものです。こちら、ヘズティス様とヴァルルス様から頂いた書状です。これがあれば私達の身分が証明されると思いますが」
「……なるほど、草子殿の友人達か。……すまないが、私では手に余る案件だ。スフィリアに確認してくるので少々待ってもらいたい」
スフィリアの判断を仰ぐまでの間、白崎達は騎士団詰所に通され、お茶とお茶菓子を出された。
ほとんど軟禁状態だった草子とジューリアとは扱いが段違いである。
「高野聖様、リーファ=ティル・ナ・ノーグ様、白崎華代様、朝倉涼音様、北岡胡桃様、柴田八枝様、岸田美咲様、八房花凛様、高津寧々様、常盤愛蘭様、ロゼッタ=フューリタン様、イセルガ=ヴィルフィンド様、アイリス=メージュネルト様、クリプ様、進藤臨様、久嶋康弘様、大門龍次郎様、志島恵様、一薫様、柊眞由美様、ミュラ=アンディルサント様、レーゲン=イーザー様、狩野照次郎様、藍川孝徳様、一ノ瀬梓様、ゼラニウム=レーラ様、メーア・ゼーエン様、ジュリアナ=スワン様、コンスタンス=セーブル様。お待たせしました」
数十分後、ローズクォーツが騎士団詰所に戻ってきた。
「スフィリア様から書状を預かってきた。『一人よりも二人、二人よりも三人の後ろ盾があった方がいいですよね』とスフィリア様は仰っていた。草子殿には魔王領シェリダーを救ってもらった。だが、その恩を返せないまま草子殿は旅立たれてしまった。彼に返せなかった恩を、その友人に返すことのできる機会を与えてくれたこと、とても嬉しく思う。――謁見は必要ないそうだ。草子殿は昨日の早朝、魔王領アディシェスに向かった。このまま角獣車を飛ばせばもしかしたら追いつけるかもしれない」
「ありがとうございます、ローズクォーツさん」
ローズクォーツにお礼を言い、白崎達は魔王領アディシェスに向けて出発した。
◆
異世界生活百四十二日目 場所ジュドヴァ=ノーヴェ魔族王国、魔王領アディシェス
早朝、白崎達はアシャッフテの森を抜け、魔王領アディシェスに到着した。
『……あれは、角獣車か。どこの角獣車だったか』
『あれは魔王領バチカルの騎士団長以上のみが使用することを許されている最高ランクの角獣車だ。……今日、バチカルから使者が来るとは聞いていないんだが……俺が確認を取ってくる。お前達は念のために警戒しておいてくれ』
騎士団長と思われる魔族の男が騎士団詰所から角獣車の方に向かって歩いてきた。
「…………ニンゲンか?」
馬車の中を確認し、騎士団長は瞬時に武器を構え、臨戦態勢を取った。
「……その角獣車はバチカルで盗んだのか?」
「違います! これは魔王領バチカルのヘズティス様にお貸し頂いたものです。こちらヘズティス様、ヴァルルス様、スフィリア様から頂いた書状になります。これがあれば私達の身分が証明されると思います。……私達は魔王領に向かった能因草子君を探している同郷の出身者です」
「…………何? どら焼き様のご友人!?」
「「「「えっ! どら焼き様の!!」」」」
騎士団長の口から発せられた単語に反応し沢山の魔族が角獣車の付近にやってきた。
「……あの……どら焼き様、とは?」
リーファは聞きなれない単語に首を傾げた。リーファ達にどら焼き様という知り合いはいない。
「すまん……草子殿が魔王領アディシェスに来た際……昨日だな。美味しいどら焼きを振舞ってくれたのだ。我々もあの甘味には抗えなかった……おかげで次サボったら減給というお達しが下ってしまった」
仕事中に何をやっているんだ、と思わずジト目を向けてしまう聖達であった。
「ごほん。書状には魔王軍幹部に手渡すように書かれているようだな。少々お待ち頂きたい」
騎士団長は書状を預かると門を潜って都市の中に消えていった。
それから数十分後、お茶とお茶菓子を召し上がっていた白崎達のいる騎士団詰所に騎士団長が戻ってきた。
「ハンスィスは直接貴女方に面会したいそうだ」
全員がお茶を飲み終わってから白崎達は騎士団長と共にハンスィス城へと向かう。
魔族達からは奇異な視線を向けられたが、騎士団長と行動しているということもあり、直接危害を加えられることは無かった。
「デュミュレーフォ=シュラーイムであります!」
『入り給え』
デュミュレーフォが扉を開け、白崎達を通す。
うっすら青みがかった銀髪金眼の愛くるしい少女寄りの中性的な容姿の存在が玉座に座り、白崎達を迎え入れた。
「はじめして、俺が魔王領アディシェスを統括する魔王軍幹部ハンスィスだ。草子殿の友人達だね。書状は読ませてもらったよ」
姿形こそ愛くるしいが、その風格は魔王軍幹部そのものだった。
これまで魔王軍幹部と対峙した時と同様に白崎達は気を引き締め、正対する。
「残念だが、今この地に草子殿とジューリア殿はいない。二人には余裕がなくて調査できなかった遺跡の探索を任せているからね。ただ、草子殿は依頼達成後、必ずこの国に戻ってくる。どれくらいかかるかは分からないが、帰ってき次第会えるように取り計らうから、安心してくれ」
「ありがとうございます」
「いやいや、礼を言うようなことではないよ。……ところで、宿を利用するのは危険だろうし、良かったらこの城の部屋を使ってくれても構わないが」
「そこまでして頂けるのですか?」
「なに、部屋はいくらでも余っている。メイドをつけるから何かあったら遠慮なく頼んでくれ」
「何から何までありがとうございます」
実は、書状には「白崎達に全面協力をしてあげて欲しい」と書いてあった。
そして、そこには当然白崎達の安全な滞在地なども含まれる。
それにハンスィスも草子の《
魔族の一人として、草子の友人達に恩返しをしたいと考えるのはごく自然な流れだった。
その後、白崎達はメイド達にそれぞれに割り当てられた部屋に案内される。
草子とジューリアが戻ってきたという連絡があったのは、その日の十五時頃だった。
◆
……なんでこんな状況になっているんだろう?
とりあえず、状況の整理だ。
俺は老害に異世界召喚され、残り物のスキルを押し付けられ……遡り過ぎたな。
ハンスィスに依頼されて謎の迷宮を探索し、気持ち悪い日記と謎の写真を発見して、ハンスィスに報告しようのハンスィス城に戻ったら、懐かしい顔触れ――聖達が居たんだ。
とりあえず……。
「お久しぶりです、勇者様方。やはり皆様も魔王討伐のために魔王軍幹部巡りをしているんですね。もしかして、次はハンスィス様ってことかな? 幹部を倒して結界を壊して魔王城に乗り込む、常套手段だよね? でも、残念。結界は俺が解除してもらいました。だから、ハンスィス様と戦う理由はないんだよね。まあ、勇者だから魔族なら問答無用で殺すってことなら戦いは免れないけど」
「――草子君。私達は、魔王を倒すために魔王領に来たんじゃないよ。……私達は、草子君に覚悟を伝えに来たんだ」
覚悟ってなんだろう? あれか? 魔王を倒すだけに留まらずこの世界を平和にするって奴か? 無理だと思うよ? ヴァパリアいるし。
「私はあの戦いの時までクラスを一つにするために旅をしてきた。でも……もう自分に嘘を吐くのはやめた。もう、クラスなんてどうでもいい! 草子君、君は私達に沢山のものをくれたんだよ。それは、もう返せないくらい沢山。……草子君は信じてくれないかもしれないけど、私は、いえ聖さんもリーファさんもロゼッタさんも、みんな草子君に本気で恋心を抱いている。草子君は私達にとってそれほど大きな存在なんだよ。だから、離れ離れになるなんて絶対に許せない。……まあ、一ノ瀬さんは置いといて、草子君と一緒に旅をしてきたメンバーは草子君と離れ離れになりたくないからここまで来た。……だから、草子君。もう一度チャンスをくれないかしら?」
……まさか、こんな顔をするなんてな。
こんなモブキャラに一体どれほどの価値があるというのだ?
少なくとも高嶺の花が、美少女幽霊が、エルフの美少女(但し腐女子)が、公爵家令嬢が恋心を抱くような相手ではないと思うんだよね。
……まあ、しかし心を折ったつもりだったんだけどな。
ここまでやられたら最低の男だって認識すると思ったんだけどな。
例えここでもう一度完膚なきまで叩きのめしても、きっとまた追ってくるだろう。
……仕方ない。
「〝距離に隔てられし世界を繋ぎたまえ〟――〝
〝
「俺の屋敷に〝
白崎達だけのつもりだったんだけど、ジューリアまでついてきた。……いや、ジューリアは関係ないんだけどな。
「白崎さん、告白ありがとう。うん、それ確実に気のせいだから。こんなモブキャラに恋心を抱くなんてあり得ないからね」
「……私は本当に草子君のことが好きなんだけどな」
うん、一時の感情だよ、それ。絶対に後悔するやつだよ!!
「……一つ質問したい。その質問の答え次第では一緒にもう一度旅をしてもいい。……君達、俺のために死んでくれないか」
『……まあ、仕方ないわね。もう死んでいるけど』
「まあ、草子さんのためなら」
「死ぬのは怖い……でも、草子君のためなら……し、死んでも構いませんわ」
聖、リーファ、ロゼッタ。即答できるお前らが怖い。
「……なんで、そんな話になるのかしら?」
「朝倉さん、その質問を待っていたのだよ。まあ、簡単に言えば地球に帰還する意思があるかということだ。……俺の考える地球への帰還方法ではどうしても一度死ぬ必要がある。地球に帰還する気がないのなら、この旅についてくる意味はない。この世界でも地球でもどっちでもいいじゃない。本当に帰りたいという意思を持つものだけしか許可できないということだ」
「……それって、この世界の人間は旅に同行してはいけないということかしら?」
「ミュラさん、いい質問だね。まず、翠雨君達他世界線の出身者には二つの選択肢がある。俺達の地球か君達の地球か、どちらに帰るかということだ。ミュラさん達この世界の住民の場合はこの世界に留まるか、俺達の地球に行くかの二択……但し、これも場合によっては一択になってしまう。俺はヴァパリア黎明結社を倒し、地球に帰るまで共に行動する者を本物の仲間だと考えている。ジューリアさんのように特別な事情があるのなら話は別だが、基本的に本物の仲間以外をこの先の旅に連れて行く気は更々ない。全ての話を聞いてもらってからそれぞれに選択をしてもらいたいが、もし地球に帰還する或いは行くつもりがないのならこの場から立ち去ってもらいたい。……安心しろ、これが最後だ。二度と篩には掛けない」
まあ、掛けたどころで熱意があるうちは何度でも追ってくると思うからね。
一時の感情に流されて駆け落ちって展開もごく少数だがある……まあ、それが長続きするかどうかは本当に人それぞれだけど。
「まあ、ポカンとしている人もいるみたいだし、簡単に俺の考える帰還方法について説明させてもらうよ。題して『地球に転生作戦』……異世界に転生するって展開は昨今のライトノベルにはよくあることだが、地球に転生っていうのはそれほど数がない。まあ、勇者や魔王の因縁を地球に持ち込むならともかく、それ以外ではそれほど面白くならないからね。まあ、面白いか面白くならないかはどうでもいいんだけど。……聖さん、当初考えていたこの世界の〈
「…………もう帰還することはできるのね」
「まあ、柴田さんの言う通り現状でも帰還は十分にできるが、色々と問題があるってことだ。それを解消するために、俺は地球に転生するという方法を考えた。これならばスキルや魔法などを持ち込む心配はない」
「ですが、草子君。それだと…………なるほど、それで【永劫回帰】なのですね」
「流石はロゼッタ様だ。【永劫回帰】の世界修正能力――これを神界から発動してもらい、転生したことやスキルを使ったことを隠蔽する。そうすれば多少は影響を減らすことができるだろう?」
草子の口から飛び出した予想外の帰還方法に一同絶句してしまう。
「……その条件として神界に出されたのはこの世界の全てのカオスを消し去ること。魔王や超皇帝に関してもなんらかの形で落とし所を見つけて神界から脅威判定されないようにするつもりだ。別に魔王を殺したところでカオスが消える訳じゃないからね。魔王を倒しても別の魔王が現れるだけだし。それと、YGGDRASILLだがヴァパリア黎明結社との交渉の材料として手に入れておきたい。まあ、これまでの旅から極端に方針転換するという訳ではないってことだ。……さて、話すことは全て話した。で、聖達はどうしたいんだ?」
「……えっ、駄目と言われてもついていくわよ? 別に元の世界に未練はないし、帰っても草子君と一緒にいられないなら意味がないから」
「私も草子さんについて行きます。それに、地球のBLを見てみたいですからね」
「私も草子さんの世界に行ってみたいですわ。草子さんについていくためにジルフォンド様との婚約は解消して頂きましたし」
「私も勿論草子君と一緒に行くよ。この世界に残っても草子君がいないのなら意味はないから」
聖、リーファ、ロゼッタ、白崎の動向が決定したか……一部動機が不純な気がしないでもないが。
というか、ロゼッタよ。わざわざジルフォンドとの婚約を解消してきたのか? そのままの方が絶対に幸せになれると思うのだが。
「草子、私も地球に連れて行ってくれないか? 勿論、そのための努力は惜しまない」
「私もお願いできるかしらぁ。白崎さんも朝倉さんも帰っちゃうのに私だけが残る意味は無いからねぇ。それに、私も家族や友人と再会したいしぃ」
「草子様の世界にも幼女はいるのですよね? 幼女いるところに私あり。是非私もお供させてください!」
「家族もいないし、唯一の繋がりは草子さん達だけだから、私も地球に連れて行ってくれるかな?」
『……僕は端末だから地球までついていくことはできないけど、最後の最後までアイリスに同行させてもらうよ』
朝倉、北岡、イセルガ、アイリス、クリプもか……イセルガ、お前の動機はリーファ以上に不純だぞ。きっと、地球に行ってもすぐに豚箱に入ることになりそうだな。
「草子君、私も草子君についていきたいわ。地球に帰還できるのならしたいし、草子君にはまだ恩を返していないからね。……勿論、足手纏いになるようだったら容赦なく切り捨ててくれて構わないわ」
「私も草子君の旅に同行させてください。地球に帰って家族と再会したいというのもありますが、草子君が心の底から地球に帰りたいと思っているのなら達成できるように私も力を貸したいですから。それが、奴隷商人の魔の手から救ってもらった私にできる唯一の恩返しです」
「アタシも連れて行ってくれるのよね? ……勿論、アタシも地球に帰りたいという気持ちを持っている。でも、それ以上に柴田さん達や草子君がいないこの世界にいても意味がないのよ」
「草子君、私も連れて行ってください。沢山のものをもらって未だに返すことができない……そんな私がこれ以上のことを求めるのは欲張りだと思いますが、無理を承知でお願いします! 私は最後まで草子君と一緒に旅をしたいし、地球に帰りたいのです」
「……オトちゃんやアクアちゃん達と別れるのは辛いけど、みんなもきっと分かってくれると思う。……草子君、貴方が地球の浅野ゼミを選んだように、私は草子君と一緒に行くことを選びたいと思っている。同行を許可してくれないかな?」
柴田、岸田、八房、高津、常盤も同行の意思を固めたか。いや、あのビッチビチさんがここまでまともになるとは思わなかったよ。
というか、どいつもこいつも理由の大半が「俺と一緒がいい」なんだが……俺のどこに好かれる理由があるんだ?
「草子、具体的に戻るのはどれくらいになるんだ?」
「転移した直後にするつもりだが……どうした?」
「もしかして、サッカーの大会に出場できるのか?」
「で、できるんじゃないかな? 大会の日、いつか知らないから確約できないけど」
「「「草子、俺達も連れて行ってくれ!!」」」
進藤、久嶋、大門……お前達、そんな理由で地球に帰還するのか? まあ、俺も似たようなもの? だが。
「私も連れて行ってもらいたいのよね? リーファさんという最高の同志と一緒に地球に帰還したいのだけど」
「私もです! 百合派に落ちた梓ちゃんが抜けたので戦力が低下していましたが、リーファさんが加入してくれるのなら百人力です!!」
「ジルフォンド様とヴァングレイ様のBLを描いてBLの良さを広めるわよ!!」
「勿論、ジルフォンド様が攻めよね?」
「……えっ、ヴァングレイ様が攻めよ!!」
志島、一、眞由美も同行するようだ……というか、空中分解しないか? もう既に戦闘モードになっているんだが。カップリングって怖いな……怖や怖や。
「草子さん、僕達もついて行っていいでしょうか? この世界に来てはじめて草子さんのような友人を得ることができたのです。僕はその友人を失いたくない」
「俺は翠雨について行かせてもらう。世話になるな、草子」
「僕も翠雨君や照次郎君と一緒に同行させてもらいたい。僕はこれからも親友達と一緒にいたいからね」
レーゲン、照次郎、孝徳の三人の動向も決定したか。てっきりこの三人はついてくるとしても元の地球に行きたいと言い出すと思ったんだが……。
「私も旅に同行させてくれないかしら? この世界では経験できないことを沢山経験することができるのよね? それに、私は志島さん達とも縁があってここまで一緒に旅をすることができたわ。志島さん達の故郷も見てみたいし、志島さん達との縁がどこまで続くのかも知りたい。お願いできるかしら?」
……ふむ。ミュラの同行は想定外だが、まあここまで来たんだし同行すると答えても不思議はないよね?
「草子君、転生した時に性別って選べるのかな?」
「ゼラニウムさん、メーアさん、コンスタンスさんはどうなさいます?」
「ボクは無視するの!!」
「……私も呼ばれなかった」
「三人を勧誘するということは、もしかしてパーティを破壊したことに対する当てつけなのかい?」
何を言っているんだ? この一ノ瀬という奴は?
「ジュリアナさんは男性恐怖症だから男がいるパーティは嫌だろうし……あれ? でも脳筋共や孝徳君や変態執事と一緒に来たんだよね?」
「俺も脳筋の括りなのか!?」
照次郎が何か叫んでいるが、よく聞き取れませんでした。
「正直どっちでもいいよ。俺は想定こそしていたが、正直命を捨てることになることが分かっていても、それでもついてくるって覚悟はないと思っていたからな。いや、正直驚きだよ? うん、まあ一時の感情や雰囲気に流されて言っちゃう可能性もなきにしもあらずだと思ってはいたけど。このままカオスに留まったって構わない。一ノ瀬梓という人間がいたという空白は責任を持って埋めておくよ。人数的にも問題はない」
「……帰っても帰らなくてもどっちでもいいと言いたいのか?」
「いや、ぶっちゃけどうでもいい。帰りたいならついてこればって話。まあ、ただ君達の理想を叶えるのは難しいけどね。同性愛、認められていないし」
「……僕は一ノ瀬さんについていくよ」
「私もよ。私、一ノ瀬さんのことが好きだから……まあ、最近の一ノ瀬さんはちょっと嫌いだけど」
「わ、私も一ノ瀬さんについて行きますわ」
「私もよ。一ノ瀬さんについていくわ」
「ってことだ。お前がどうするか決めろ。まあ、白崎さんもクラス全員で戻ることにこだわるのはやめたみたいだし、好きにすればいい」
「……ボクも草子君について行くよ。地球は異世界カオスのように
一ノ瀬、ゼラニウム、メーア、ジュリアナ、コンスタンスの同行が決定した……って全員じゃねえか!!
「……草子、我も地球に行く。草子の料理は美味し……嫁にもらはばや」
「……はい?」
「「「「「「「「「「「「えっ!!!」」」」」」」」」」」」
……えっ、ジューリアもついてくるの? というか、俺、嫁にもらわれるの? ……なんで、というか、どゆこと? これって告白的な何かなの?
「……これは、強敵ね」
「…………油断していました」
「草子君って本当に誑しよね……ライバルは多い上に強敵ばかりなのに、これ以上増えるの……」
「……そもそも攻略できるかも不明なのよね」
そして、ヒソヒソ話を始める聖、リーファ、白崎、ロゼッタの四人……俺は仲間外れだ? ぼっちだー。
「まあ、とりあえずお前達のことは俺の仲間だと認めるよ。さっきも言ったがもう二度と篩にはかけない。ここから先は自己責任だし、抜けたいと思ったらすぐに抜けてくれ。再加入は無理だけどな。……ここまでくる間に随分と気合を入れてレベル上げをしてきたみたいだが、対ヴァパリア黎明結社には足りない。最低でも超越者には至って欲しいものだ。まあ、それはそれとして今から一人ずつスキルの調整をさせてもらう。具体的には【貪食ト銷魂之神】というスキルを使って相互でスキルのやり取りをするのと、俺が指定した武器を強化することの二点。まあ、それぞれが持っているスキルを俺が回収し、最適なものを受け取るという感じだと思ってくれればいい。進藤君、久嶋君、大門君には関係ない話だから好きにしていていいよ。武器は今から伝える全員提出を、防具の指定をする場合は着替えた後で提出してくれ。部屋はいくらでもあるしね。それと全員に服のセットを十個ずつ用意したけど、デザイン等に不服な点があったら言ってくれ。作り直すなり追加作成するなりするから。ちなみにステータスの調整は一対一で行う。希望とかも聞きたいしね。――まずは聖さんからでいいかな?」
「やったー。あたし一番!!」
恨めしそうに聖を見る白崎達……いや、一番の古株なんだし譲ってあげてよ。
「終わったら次の人を呼ぶって形でオネシャス。では、行こうか」
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