文学少年(変態さん)は世界最恐!? 〜明らかにハズレの【書誌学】、【異食】、にーとと意味不明な【魔術文化学概論】を押し付けられて異世界召喚された筈なのに気づいたら厄災扱いされていました〜
即死使いが絶対勝てない敵は既に死んでいるから死ねないという理論を振りかざすようだ……えっ? 傀儡師が真骨頂を発揮するのは死んでからのようだ……ええっ??
即死使いが絶対勝てない敵は既に死んでいるから死ねないという理論を振りかざすようだ……えっ? 傀儡師が真骨頂を発揮するのは死んでからのようだ……ええっ??
異世界生活七十八日目 場所首都レントゥーエレ、クライヴァルト城
崩れ落ちたイヴ……他に敵影も無し。だから、勝ったと思うじゃん……世の中そんなに甘くはないんだよ。
「――草子君、終わったんだよね?」
安堵の表情を浮かべ、こちらに来る白崎に向けられた
「……《
「よくこの技の名前が分かったね。一度だって見せたことがない超越技なのに……だって、僕、死ぬの初めてだから」
焼け焦げた箇所を瓦礫や布などで補いながら立ち上がった
「……お前、黒うさ先生よりも凶暴だよな」
「う〜ん、元ネタが分からないものには流石に突っ込めないよ。でも、褒め言葉として受け取っておこうかな?」
まあ、お前は黒うさ先生と違って自分本位の塊でしかないけど……というか、結局オルレウスそのもの? 性別が男から女に変わっただけで吐き気を催す邪悪なところは変わっていない!? どころか、別の被害者が増えてる気が……「ですぅ」語尾のバグウサギとか。
「僕の超越技、〈La Danse Macabre〉は自分自身を操り人形にして蘇生するというものだよ。既に死んでいるから殺すことはできない。だから、【即死】も【即死魔法】も通用しないって訳さ。魂は既に失われている。だから、今の僕は僕という人格を忠実に再現したプログラムということになるね。あはは、どう、上手くできているでしょう?」
某ネットサイトで最強と言われている即死チートさんが勝てないタイプの敵っすね。……いや、あれはどちらかというと消滅だから無理なのか。
《
「さて、敵討ちを始めよっか? 僕の敵討ちを僕がするってのも変だと思うけど。――出し惜しみ無しでいくよ! 〈Marionnette du cadavre〉!!」
嘘ぉ! なんか倒した人達が続々と復活しているんですけど!!
カンパネラ、アレク、魔獣オーサー、フリクション、クライ、ラック……しかも、なんか増えてるし。
具体的には兎人族……死体人形の大量生産っすか。
「……あたし達も手を貸すわよ」
「んじゃ、さっきと同じメンバーとアレク、兎人族の人形をお願い。ラックとカンパネラは相性的には厳しいだろうから」
正直なところ、ここまでは想定済みだ。いや、二択だったんだよ。糸使いといえば、運命を操るか死体を操るかの二択だから、そのどっちかが超越技だろうって考えていたんだけど。
だから、ぶっちゃけ良かった方? いや、【因果無効】がある時点で因果干渉攻撃は無効化できるから、ハズレ籤!!
「さっきのようにはいかないよ! 僕はポテンシャルを120パーセント発揮させることができるんだから!!」
一応非常手段として取っておいて良かったよ。まあ、使いたくなかったんだけどね。
二十四時間の
カンパネラの手から大量の鳩が解き放たれた……【大奇術】か。
「【魔法剣・
禁鞭を皮の袋に戻し、代わりにエルダーワンドを取り出して刀剣に変形させる。
「
光を纏わせた飛んでくる鳩をみじん切りにする。
コイツは無効化系のスキルを持っているから放置だな。数を減らすなら、ラックの方か。
(〝漆黒の世界を塗り潰す光明よ! 爆炎の支配者の名のもとに全てを浄化する真紅となれ〟――〝ヴァーミリオン・エクスプロージョン〟)
〝
こういうのは跡形もなく消すのが重要だ。灰までは流石のイヴでも操れないだろうからな……というか、できたら怖えよ!!
「――〈Costume dramatique〉!!」
糸を使って衣装を編み込んで自身や味方に装備する。 これによって通常よりもパワーや防御力を発揮することができる……まあ、そんなところか。
流石に遠隔では無理だったからかイヴだけだが……まあ、あんまり関係ないんだけど。
敵は本職の糸使い。それほどの相手に素人がやることではないと思うけど、俺も糸を使わせてもらおう。
【糸生成】を応用して【粘糸】を生成――それを【糸理】を使って伸ばし、イヴの足を地面に固定する。
「ッ! まさか、糸使いに糸を使うとはね。こんな糸……うそ、解けない」
「【粘糸】さ。糸使いのお前も流石に使ったことはないだろう? というか、お前の糸は人形師の使う糸であって、糸そのものを扱うタイプの糸ではないからね。……んじゃ、これで終わらせてやるよ」
「そんな簡単に終わってなるものですか!! ――〈Le Théâtre du Ultime Grand-Guignol〉!!!」
全ての糸を解いたか。自身が操る全ての糸を攻撃に繰り出す必殺技というところか? てか、これって数百万の人間を細切れにするレベルなんじゃね!!
【殺気圏域】を発動して糸を切り裂く、切り裂く、切って、切って、切って、切って、切りまくる。
(〝DIES IRÆ〟)
刹那、イヴを包むように光の柱が出現。それが数秒続いた後、さっきまでイヴが居た地点を中心に円形状にそこだけ草一つ生えない土が剥き出しの場所になった。
「イヴ、撃破。これで終わりだな」
〈Marionnette du cadavre〉で操られていた死体人形達が完全に動きを停止したようだ。
「草子君、終わったね」
聖達も死体人形相手に上手く立ち回っていたみたいだ。目立った傷も無さそうだし、あの程度の傷なら〝
「それじゃあ、行くか。まずは……獣人小国ビーストに」
……今回の戦いの顛末を獣人族のトップに伝えない訳にはいかないよね。
◆
「……そう、でしたか」
レオーネは悲哀に満ちた表情を浮かべた。
序列最下位で迫害していた兎人族に対しても、悲しいという感情を抱くんだな。
「【人形師】イヴ=ハウレンと、その弟ヨムはどちらも肉体を蒸発させた。……連れて帰って来れたのは兎人族の死体人形達だけになるな。……まあ、恨まれてもしょうがないことをしたって自覚はあるよ。だから、その恨みをこの身に受ける覚悟はある。まあ、踏み潰していくけど」
「……いえ、私達に草子様を責める権利はありません。兎人族達、弱い獣人族を迫害してきたのは私達獣人族ですから。……寧ろ、私は草子様に感謝しています。彼らを救ってくれたのは草子様ですから」
「……救った、ね」
確かに、彼らは救われたかもしれない。殺すための道具から解放されたのだから。
って言うのも自己満足の話なんだよな。どこまで自分を肯定するか、そういう話になってくる。
「アレクは殺した……というか、イヴが殺した。ってことで、この国は独裁から救われる筈だ。……うん、多分救われると思う。アルドヴァンデ共和国の新政府がどんな方針を取るかは分からないけど、向こうから使者が来たら話くらいは聞いてやってくれ。後、毎年納めていた多額の税金は多分無くなると思うけど、なんか不当な扱いをされたら俺に声を掛けてくれ。モブキャラ如きにできることなんて限られているけど、できる範囲でなんとかするよ」
「何から何までありがとうございます。……草子様には助けられてばかりですね」
「はは、何を仰るのやら? 俺はただボコるべき相手をボコっただけですよ」
兎人族達はレオーネに任せれば問題ないだろう。
これで、イヴの惨劇は本当の意味で終わった、彼らには、安らかに眠って欲しい。
勿論、ヨムって兎人族の子もだよ?
〝
「とりあえず、これがアレクの首です。いらないと思いますけど……」
「ああ、本当に要らないよ。……草子殿、この国を救ってくれて本当にありがとう」
アレクと
まあ、敵とはいえその亡骸を不法投棄する訳にはいかないからね。
「そういえば、草子殿に勧めてもらった再統一の件、他の貴族と話し合ったのだがこちらからは否という声が上がらなかった」
共和政府に対して否定的な立場を取っていたアクアレーティア伯爵家、ウェイライン子爵家、ポランナム男爵家を中心に新政府を発足させることが決定したらしい。
そこで、再統一の方針が固められたのだろう。
「分かりました。自由諸侯同盟にはその旨を伝えておきます。……それと、獣人小国ビーストへの多額の税は――」
「勿論、無しにするよ。我々と彼らは本来対等であるべきだからね。……私個人としては彼らとも交流を持ちたい……流石に我々の同盟に無理矢理取り込もうとまでは思わないが」
「まあ、その辺りは政治家のする話で俺のような小市民には全く関係のない話ですから」
そんな感じでヨハンに報告して、その後ジルフォンド……には会えなかったから遭遇率の高いヴァングレイ経由でエリファス大公家に声を掛けて貰った訳なんだけど。
◆
異世界生活八十日目 場所コンラッセン大平原、能因草子の隠れ家(旧古びた洋館)別邸 影花の館
……で、どうしてこうなった!!
現在、俺の屋敷の別邸として急遽(一日で突貫工事)建てた建物――影花の館に、自由諸侯同盟に所属する貴族全員、新政府の代表貴族(アクアレーティア伯爵家、ウェイライン子爵家、ポランナム男爵家を中心とする反共和政府派の貴族)、エルフの里族長オーベロン、武装中立小国ドワゴフル帝国皇帝ヴァエルドフ、獣人小国ビースト女王レオーネ、海洋国家ポセイドン王ザヴァルナードが集結している……意味が分からないよ。
いや、ここに連れてきたのは俺だよ? いや、それはそうなんだけどさ。
どこにも属していない中立の土地って言ったら、もう完全に俺に支配権のあるこのコンラッセン大平原の一帯しかないってここに連れてきたのは俺だけど……なんで、そもそもこんな展開になっているんだよ!!
「ということで、今回の議題はアルドヴァンデ共和国、自由諸侯同盟ヴルヴォタット、エルフの里、武装中立小国ドワゴフル帝国、獣人小国ビースト、海洋国家ポセイドンによる国家同盟の建国と、その議長の選出ということになる。……ということで、よろしかったか?」
「よろしかった、じゃないですよ、ヴァイサル様。いや、やりたいことは分かりますよ。国家共同体――European Unionのようなものを作りたいんでしょう? 分かりますけど……早くない!? なんでこんなにトントン拍子なの! なんで、エルフ、ドワーフ、獣人、海棲族の各トップもそれに簡単に応じちゃってるの!!」
「「「「いや、草子殿の関わっている話だから謹んでお受けするのは当然だと
……もう、意味が分からない。敵対してたんじゃないの、お前ら? というか、こんなに環境を激変させたら誰もついてこれなくなるよ!!
「アクアレーティア伯爵家のヨハンだ。まず、私から報告したいことがある。この度、アルドヴァンデ共和国はフェニックス議国に改名した。……暴君アレクの名をいつまでも残す訳にはいかないので、な」
そういえば、アレク=アルドヴァンデの家名がそのまま国名になっていたっけ? ……それ、最早共和国じゃなくね!!
「フェニックス議国……寿命を迎えると、自ら薪から燃え上がる炎に飛び込んで死ぬが、再び蘇るとされている伝説の鳥の名を持つ国ですか? 素晴らしい国ですね」
俺もフィードの意見に同意です。ちなみに、今回は次世代の当主達もこの会議に招いている。フィード、ノエリア、シャート、ジルフォンド、ヴァングレイの姿もある。……ちなみに、ロゼッタは家を継ぐ気は無いようなのでこの場には参加していない。
「では、そろそろ本題に入りましょう。フェニックス議国、自由諸侯同盟ヴルヴォタット、エルフの里、武装中立小国ドワゴフル帝国、獣人小国ビースト、海洋国家ポセイドン……この国で代表者を選出、最高意思決定機関――国家同盟で議決する。この方針でよろしいでしょうか?」
異議は無さそうだ。この方法なら、どこかの国の発言権が弱くなるということがなくなるからな。純粋な多数決もこの数なら楽だろう。
「では、賛成ということで決定しました。それでは、次にこの会議の承認者兼議長を決定したい。私は、能因草子殿こそ相応しいと思う」
……なんですと! な、何を仰っているんですか、ヴァイサル様!!
「……このモブ如きに国家会議の議長をやれと! いや、配役おかしいから!! そういうのってもっと政治に向いている人とか、才色兼備揃っている白崎さんとかがやることですよ! ……今、呼んできますんで」
「いや、それには及ばない。……我々には、国家同盟の締結の証人であると同時に、どこにも所属していない人物が必要だ。どこかの国がトップだと対外的に受け取られる訳にはいかないからな。能因草子殿は、どこの国とも関係を持っているが、深い関係を持ってはいない。我々の国のいずれも単体で撃破する力を持ち、戦力は一国以上に相当する。……まあ、具体的に何かをしろという訳ではないよ。名前を貸してくれるだけで充分だ……まあ、本音を言えば知恵も貸して欲しいものだが」
これ、拒否権ないですね。……しかし、よくもまあ、こんなモブキャラが議長を務めるのに誰からも反対意見が出ないよな。
「今回の件は草子殿にとっても悪い話ではないだろう? 今後、旅をする中で肩書きが必要な時もある。その際、エリシェラ学園の客員教授では弱い」
「セリスティア学園長、仰りたいことはよく分かりますが……正直無くても問題ないですよ。ミンティス教国の筆頭
……えっ、何この空気? 時間がカチコチに凍結しちゃったみたいなんですけど。
俺、なんか変なこと言った!?
「……確か、草子先生って前に『アレクとは関わりたくない』と言っていましたよね。面倒ごとは極力回避していく方だと思っていたのですが、今回のこととい、マジェルダのことといい、いつから心変わりしたのですか?」
へぇ、ジルフォンド、よく飯の席で発した一言を覚えているな。普通は、こんなモブキャラの言動なんて一々覚えておかないと思うけど。
「まあ、それが最善手になったから予定を変更しただけですよ。俺はこの世界に来てからずっと、俺だけのために動いているだけです。……ああ、マジェルダの罪ですが、とある有力な情報源によるとミント正教会を裏から牛耳り、自分だけの戦力を作り出して他国に侵略を仕掛けようとしているらしいですからね。アレクと違って悪い噂は聞かないと思いますが、それだけマジェルダが賢いということですね」
「……それ、とんでもない話ではないのか?」
まあ、ミント正教会の闇だからね。多分、ミンティス教国がこの情報が広まっている話をしれば、全力で揉み消しに来ると思う。
「まあ、とりあえず他言無用でお願いします。それと、議長の話は名前だけ貸すということで、あっ、建物は貸しませんよ。会議はそれぞれの国で持ち回りにしてください。ゲートミラーを各国にプレゼントしますので」
別邸とはいえ俺の家に毎回国のトップに集られるのは困るからね。平和なひと時が送れなくなる!!
こうして、異世界もので一番ありきたりな冒険者の身分を得られなかった俺は、エリシェラ学園の客員教授と国家同盟の議長という、一介のモブキャラには不相応な身分を得ることになったのだった。
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