【死霊視】のスキルを極めて【魂視】に上位互換化させれば意識と無意識の波を見ることができるようになるらしい。

 異世界生活七十八日目 場所首都レントゥーエレ、クライヴァルト城


【白崎華代視点】


「……今から敵の情報を伝える。みんなは、長身ノッポと妖艶と大男を相手してくれ。長身ノッポは能力は名付けた魔獣を進化させ、意思疎通を可能とする【命名者】と支配した魔獣を吸収し、その力を得る【融合魔獣】。妖艶は摩擦を操る【摩擦操作】……コイツは多分ほとんどの物理攻撃や魔法が通用しない。相性的にリーファさんが適任だな。大男は周囲から熱を吸収し、成長、再生、自己進化を行う【熱力進化】と対象を虚数空間へ閉じ込める【虚数牢獄】。結界に閉じ込められたメンバーはできるなら救出を、無理なら諦めた方がいい。コイツを倒せば多分解ける。一応だけど、女の子は望んだことが何でも勝手に叶う因果干渉系スキル、この痩せこけたピエロは精霊との親和性が高い者に憑依するスキルと、精霊との親和性が低い者のステータスを大幅にダウンさせるスキル、執事が操り人形を量産する糸系のスキルを使う」


 草子君一人で三人を、私達で分担して残った三人を倒すことになった。

 多分、草子君は一番危険な三人を引き受けてくれたんだと思う。


 望んだことが何でも勝手に叶う因果干渉系スキルってそもそもどうやって倒すんだろう? レベルだし。


 私達は長身ピエロ担当のグループ、女ピエロ担当のグループ、大男のピエロ担当のグループ、遊撃グループの四班に分かれた。


 長身のピエロは聖さん、ロゼッタさん、イセルガさん、志島さん、一さん、柊さん、ミュラさん。


 女ピエロはリーファさんとアイリスさん。


 大男のピエロは私、朝倉さん、北岡さん、レーゲン君、柴田さん、岸田さん、常盤さん、進藤君、久嶋君、大門君。


 遊撃グループは高津さんと八房さん。

 遊撃グループには臨機応変に攻撃と回復を行ってもらおうと思う。


 私の相手は大男のピエロ……レーゲン君によると“悲哀”のジェスター=クライという名前らしい。

 ……強い。あのユェンさんよりも多分、強い。


 エルフの里での戦闘に、私達はついていけなかった。

 でも、今は違う。草子君と一緒に旅をして、色々な敵と戦って、私達は強くなった。

 今はユェンさんクラスの強敵を前にしても、一歩を踏み出せる。


「嗚呼、なんと悲しいことでしょう。人間とは、なんと脆い生き物なのでしょう。ワガハイがせめて楽に命を摘み取って、その身に降りかかる痛みを、悲しみを、摘み取って差し上げましょう!!」


 空気が僅かにだけど冷たくなった。

 これが、【熱力進化】――能力は周囲から熱を吸収し、成長、再生、自己進化を行うスキル。


 先に攻撃を仕掛けたのは朝倉さんと北岡さん。

 【熱力進化】は徐々に強化していくタイプのスキル――だから、先手必勝で攻めようという作戦ね。


「〈世紀の大脱出エスケープ・ゴート〉!!」


 ッ! 朝倉さんと北岡さんの攻撃を瞬間移動して避けた!?

 いや、あれは瞬間移動なんかじゃない!!


「……なるほど。あの〈世紀の大脱出エスケープ・ゴート〉は相手と瞬時に位置を入れ替える技のようですね」


 クライは、朝倉さんと自分の位置を入れ替えた。

 つまり、クライに向かって突撃していた北岡さんは朝倉さんを、朝倉さんは北岡さんを攻撃する構図になる。


「〝邪なるモノから護れ〟――〝禊祓の障壁〟」


 朝倉さんと北岡さんの前に障壁が展開される。

 高津さん、ありがとう!!


 障壁は二人の一撃に長期間耐えられるほどの力は持ち合わせていなかった。

 でも、問題ない。あの二人なら、一瞬だけ時間を作れば後は対処できる。


「嗚呼、なんと悲しいことでしょう。人間とは、なんと脆い生き物なのでしょう。ワガハイはどこまでも高みに行ける。この身体をどこまでも強化できる。貴方達はどこまで、その脆い身体で抗えますか!!」


 ッ! 筋肉が隆起している……いや、もうあれは人間の原型を留めていない。

 歪ながらドラゴンのような翼を持ち、鉤爪のようなものを形成し始めている。


「オラァァァァァァァァァァァァァ!!」


 ――ッ! 進藤君、単身五条突き通せブリューナクを持って突撃していく。

 いや、いくらなんでも無鉄砲過ぎるでしょ!?


 効いている!? 確かに五条突き通せブリューナクにはHPとMPを削る効果があるけど……。


「なるほど……正攻法だと〝終●時間カタス●ロフ〟のような風化能力で再生される前に風化させるのですが……なるほど、確かに回復を上回る速度で攻撃すれば勝てますね」


「風化か……うん? 別に風化させなくてもいいかも。それなら、分解でもいけるよね?」


「〝破滅の波動フィーニス・ウンダ〟なら効果もありそうですね。確かに同時に浴びせればかなりのダメージを与えられます……が、もし仮に生き残られてしまったら、〝破滅の波動フィーニス・ウンダ〟の持つ熱エネルギーを吸収して更に成長してしまう可能性が高いです」


 そういえば、〝破滅の波動フィーニス・ウンダ〟は相剋エネルギーで分解・消滅を行うというもの。

 そして、相剋エネルギーには熱エネルギーも含まれている。


 ん? 熱エネルギー? つまり温度。なら、熱エネルギーを奪う魔法を使えば。


「〝凍てつく女王の抱擁フリーギドゥム・アンプレクスス〟なら、【熱力進化】を止められるのではありませんか?」


「……なるほど、進化の餌を奪ってしまえば良いってことか。確かに、それならばあの【熱力進化】を止められる!!」


「嗚呼、なんと悲しいことでしょう。人間とは、なんと脆い生き物なのでしょう。弱者は知恵を振り絞ってようやくワガハイを倒す力を見つけた。しかしぃ、そんな簡単にワガハイを捕らえることはできないッ!! 〈最終の大喜劇グランド・イリュージョン〉」


 大爆発を引き起こし、クライは灼熱の中に消えた。

 爆発は前衛に居た岸田さん、進藤君、久嶋君、大門君を巻き込んだ。


「〝彼岸と此岸に境あり。魔の者は魔の世界に留まりて決して越えることなかれ。一線を引き、結界を張り、あらゆる魔を通すことなかれ〟――〝護法の結界グレート・バウンダリズ〟」


 岸田さん達を爆発から半球の形をした結界が守る。

 ありがとう。高津さんには助けられてばっかりだな。


「姿を消した……いや、透明化ではない。反応は……ん!? みなさん! そこです!!」


 レーゲン君が指をさしたところが、まるでそこだけ空間がひび割れたようだった。

 そこから現れるクライ……えっ、どういう理屈なの!?


「理屈が存在しない、タネも仕掛けもないからこそ【大奇術】!! 嗚呼、なんと悲しいことでしょう。常識に囚われた哀れな囚人達はワガハイに勝つことはできないのでした。〈飛び出す骨牌トランプ・ストーム〉」


 クライの手に大量のトランプが現れて、嵐のように襲い掛かる……標的は常盤さん。


「オトちゃん! アクアちゃん!!」


『ああ、言われなくても分かっているぜ。あんなトランプ、アタシ一人で十分だ』


『貴女だけでは心配です。オトヒメ、アクアも手伝います』


『竜宮の守護者よ! 海流の王オセアン・ドラゴン!!』


宝瓶の洌流ストリーム・オーシャン


 アクアさんとオトヒメさんのコンビネーション技がカードを押し流す。

 大人の姿になっても何だかんだで仲良いよね。あの二人。


「〈鳩出す帽子ハット・イン・ピジョン〉」


 今度は鳩!? それより、どこからそのシルクハット、取り出したの!!

 突っ込んじゃダメなんだろうけど、やっぱり突っ込みたくなる。


 【瞬間移動】を使い、そのまま飛んできた鳩を二刀で斬ったんだけど……まさか、爆発するなんて!!

 【回復魔法】で十分癒せる傷だけど……油断したわ。


「――さあ、哀れな哀れな人間達よ。貴方達に最後をプレゼントしましょう! 〈華麗なる変身スプレンディッド・チェンジ〉」


 えっ……鳩が全部鏡に変わった。確かに凄いけど……なんで鏡。

 鏡はそのまま空中に固定されている……この配置、まさか!!


「みんな逃げて!! レーザーが来る!!」


「嗚呼、なんと悲しいことでしょう。もう遅いのです。――死ね、暴龍の光芒バハムート・レイ!!」


 クライの背中からレーザーが放たれ、それが鏡に反射して拡散する。

 なんとか全員回避行動を取って無効化できたみたいだ。……良かった。


「〝凍てつく女王よ! 汝の抱擁で凍えさせておくれ! この世界を凍てつかせておくれ〟――〝凍てつく女王の抱擁フリーギドゥム・アンプレクスス〟」


「――〈最終の大喜劇グランド・イリュージョン〉!!」


 大爆発を引き起こし、クライは灼熱の中に消えた。――逃げられた!!


「嗚呼、なんと悲しいことでしょう。私を捕らえることは何人たりともできない」


 勝ち誇るクライ……えっと、まだ私達は戦えるよ? MP切れにもなっていないし。


『――それは、どうかしら?』


 クライの笑みが歪んだ。

 クライの周囲から熱が奪われている。……避けた筈の〝凍てつく女王の抱擁フリーギドゥム・アンプレクスス〟の効果だ。


「どうかしら? すっかり忘れていた相手に一泡吹かせられるってのは」


 変幻自在の秘宝の服ニーベルング・コスチュームの迷彩効果を解除して姿を現したのは柴田さん。

 さっきの〝凍てつく女王の抱擁フリーギドゥム・アンプレクスス〟は、多分私の詠唱に重ねるようにしつつ、不完全なまま止め、最後の魔法名をクライが油断した瞬間に発して完成させたのね。


「ッ! なんの!! 例えこれ以上進化できずとも、脆い人間如きに遅れはとらん!!」


「いえ、これで終わりよ!!」


これで詰みチェックメイトです!!」


 私は【瞬間移動】を使って瞬時に間合いを詰め、クライに連続攻撃を浴びせる。

 レーゲン君の方は、【創剣】で生み出した大量の黒剣を飛ばしながら――。


「〈剣技シュウェルテクニック雷霆シュネーラー・アングルフ万鈞ジー・アイン・ドンナー〉!!」


 体勢を低くして下半身のバネを一気に解放して突進しながら最速の突きを放った。


「こ、こんなところで、こんなところで!! 脆い人間如きにィ!!」


「確かに、貴方のように人間は進化できない。でも、それでも強くなれる! これで終わりよ!!」


 【神聖剣 極】の黄金の輝きと【分解のオーラ】を宿し、【究極挙動】で最適化された斬撃の嵐を放つ。


「――アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」


 【完全掌握 極】でもクライが動くビジョンは見えない……なんとか勝てた。


 さて、草子君の方はどうなっているかな?  えっ!!


 草子君は、何かに掴まれたように空中に固定されていた。

 草子君……このまま負けるなんてあり得ないよね? いつだって、どんな困難も笑って乗り越えてきたんだから、絶対に負ける訳ないよね。


 ――耳障りな金属が壊れるような音を聞いたのは、その時だった。



【高野聖視点】


「改めて、“歓喜”のジェスター=オーサーでございますぅ。しかしぃ、まさか貴女方を相手にすることになるとは……死んでもらいますよぉ〜。これも仕事なんでぇ!!」


 オーサーの足元に黒い影が現れた。そこから、四体の魔獣が現れる。


 リザードマンっぽい魔獣、テンペスト・サンダー・ウルフっぽい魔獣、クイーンアルラウネっぽい魔獣、そして見たことのない狼の魔獣。

 ……どれもあたしが見たことのある魔獣とは違う。


「見たことがないでしょう? これは、全て【命名者】の効果によって進化した魔獣なのですぅ!! ご紹介しましょう!! 彼は鋼鉄装甲の蜥蜴騎士アーマー・リザードナイトのエイブラハム、彼は疾風怒濤の嵐雷星狼テンペスト・アスタ・ウルフのサージェント、彼女は安楽救済の植物女帝レリーフ・エンプレス・アルラウネのミレディ、最後の彼は漆黒移動の凶暴牙狼ダイアウルフ・アサシンのランパード――私の仲間の中でも最強の四体でございます!! では、IT'S SHOWTIME!!!」


 エイブラハム、サージェント、ミレディ、ランパードの四体が前に出る。


 あたしは【瞬間移動】を発動し、エイブラハムの背後に移動する。そのまま、双翼広げ斬れアーティキュルス・ノアの右の剣で【袈裟斬り】を、左の剣で【逆風】をそれぞれ放つ。


『ふっ、効かねえよ、そんな攻撃』


 ――ッ! まさか、槍で防がれるなんて。

 槍を破壊することはできたけど、これで仕留められなかったのは大きい。


『――サージェント!!』


『はいはい。……黒稲妻ダーク・サンダー!!』


 まさかッ! 自分ごと仲間に攻撃させるつもりなの!!


「〝灼熱世界ムスペルスヘイム〟」


 ロゼッタさんの優雅なる令嬢の傘ソーンセク・ドーンジュリに込められた魔法が発動して、サージェントを〝灼熱世界ムスペルスヘイム〟の灼熱が襲った。

 でも、サージェントが放った黒稲妻ダーク・サンダーが消えることはない。

 あたしは再度【瞬間移動】を発動して、一旦離脱した。


『……熱いですね。危うく死ぬところでした』


 炎の中から出てきたのは満身創痍のサージェント……あの上級魔法を喰らって原型を留めているなんて!!


「〝極寒の世界の冷気よ! 死よりも冷たき愛で凍えさせておくれ! 魂を慄わす愛で包み込んでおくれ〟――〝極寒世界ニヴルヘイム〟」


「〝真紅の炎よ。無数の槍となりて、我が敵を貫き焼き尽くせ〟――〝無数灼熱炎槍ファイアジャベリン〟」


「〝轟く雷鳴よ、輝く雷霆よ、降り注いで焼き払え〟――〝霹靂領域セレスティアル・サンダー〟」


 にのまえさんの〝極寒世界ニヴルヘイム〟がランパードに、柊さんの〝無数灼熱炎槍ファイアジャベリン〟がミレディに、ミュラさんの〝霹靂領域セレスティアル・サンダー〟がエイブラハムに、それぞれ襲い掛かる。

 影の中に消えたランパードがミレディを影に引き込んで攻撃を躱してしまった。……結局、エイブラハムだけが雷撃を受けただけか。


「おやおや、なかなか持ち堪えていますねぇ。……これは、予想外。もう少しぃ、早く沈むと思いましたがぁ……いいでしょう!! 融合ですぅ!!」


 オーサーの周りに集まった魔獣がオーサーと共に、突如現れた青い渦に飲み込まれた。

 この光景……まるで、遊●王の融合のイラストみたい。


 渦の中から現れたのは、鋼鉄装甲の蜥蜴騎士アーマー・リザードナイトの鱗と水掻きと尻尾、疾風怒濤の嵐雷星狼テンペスト・アスタ・ウルフの右足と漆黒移動の凶暴牙狼ダイアウルフ・アサシンの左足、安楽救済の植物女帝レリーフ・エンプレス・アルラウネの植物の身体、オーサーの顔を持つ。

 ……これが、【融合魔獣】。


「『これこそがぁ、私、“歓喜”のジェスター=オーサーの真の姿、“魔獣王”のジェスター=オーサー!!! この力、見せて差し上げましょう!!』」


「『〈太陽光線サンライト・レイ〉』」


 草子君の【恒星光線】に比べたら遥かに弱いけど、それでもあたし達が受けたら一たまりもない。


 オーサーの【恒星光線】は志島さん達の方に向けられていた。

 ッ! 今向かっても間に合わないし、あたしには四人を守る手立てはない。


飛行十字架レタユシュクリースト――〝六方障壁ヘキサゴン・バリア起動オン〟」


 あたしにはどうしようもない。だから、志島さん達のことはロゼッタさんに任せた。


「……後ろがお留守ですよ」


 【物質透過】と【透明化】を解いたイセルガさんが、背後からオーサーに右ストレートを、次いで左ストレートを打ち込む。

 そのまま崩れ落ちるオーサーに右回し蹴りを叩き込んだ。


 イセルガさんの装備している闘魂宿す獣王の籠手キングベヒーモス・ガントレットの鉤爪と闘魂宿す獣王の脛当キングベヒーモス・レガースの金属部分には、万物を両断する効果と傷つけた相手のHPを吸収する効果、邪を祓う効果がある。

 オーサーは今の攻撃で深手を負って、HPを削られたみたいだ。


「『痛いですねぇ。この分はきっちり返してもらいましょう!!』」


 オーサーは身体から蔦を生やして、鞭のようにしてイセルガを拘束しようとする。多分、【接触吸魔】と【接触吸勢】を使おうと思ったんだね。

 だけど……。


「私は実態のない透明人間。捉えることはできませんよ」


 いつもは厄介なイセルガさんが、今回はとても頼もしく見える。

 ……あの、可愛い女の子を食べちゃいたいっていう変態性癖、治してくれたらなぁ。


「〝森羅万象を分散し、五素を取り出し、顕現せよ。劫火、暴風、冷気、雷撃、水流――五素の力よ、今こそ荒れ狂って破壊をもたらせ〟――〝五素顕現アポカリプス・ペンタ〟」


 志島さんの放った〝五素顕現アポカリプス・ペンタ〟がオーサーに襲い掛かる。

 火柱に、暴風に、冷気に、雷撃に、水柱に襲われ、頑丈な鋼鉄装甲の蜥蜴騎士アーマー・リザードナイトの鱗は砕け散った。


「『……絶対にぃ、絶対にぃ、ぶっ殺すぅ!!』」


 オーサーはヤケになったのか、無数の蔦を周囲に放った。

 あれに触れたらHPとMPを持っていかれる……今近づくのは危険ね。


「〝灼熱世界ムスペルスヘイム〟」


 ロゼッタさんの優雅なる令嬢の傘ソーンセク・ドーンジュリに込められた魔法が発動して、オーサーと周りの蔦を〝灼熱世界ムスペルスヘイム〟の灼熱が襲った。

 オーサーは倒せなかったけど、これで蔦は全て焼き尽くせた。ロゼッタさん、ファインプレー!!


 あたしは【神聖剣 極】の黄金の輝きと【分解のオーラ】を双翼広げ斬れアーティキュルス・ノアに宿し、構える。


 意識を集中させ、【魂視】――【死霊視】のスキルを発動する。

 このスキルは、【死霊視】の持っている魂を見る力を拡張させて、生きている人間の魂すらも見えるようにしたもの。このスキルによって、あたしは人間の魂の揺れ動き――意識と無意識の波を見ることができるようになった。


 続いて、【ポルターガイスト】の持っているエネルギーを利用して身体を強化するスキル――【霊力式身体強化】を発動して、あたし自身の身体能力を今できる最高レベルにまで高める。


 オーサーの意識が一瞬、無意識に切り替わる瞬間に【瞬間移動】を発動して背後に回り込む。

 そのままオーサーの身体を一閃した。名付けて〈刻撃〉……あんまり練習していない技だけど、上手くいったみたいだ。


 よし、これでオーサーを倒せたみたいだ。


 そういえば、草子君の方はどうなっているのかな? 草子君に限って負けることはないと思うけど。


 ――耳障りな金属が壊れるような音を聞いたのは、草子君の方に視線を向けたその時だった。

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