文学少年(変態さん)は世界最恐!? 〜明らかにハズレの【書誌学】、【異食】、にーとと意味不明な【魔術文化学概論】を押し付けられて異世界召喚された筈なのに気づいたら厄災扱いされていました〜
【相沢秀吉視点】まさか僕が最初に【傀儡】を使う相手がクラスの美女ではなく魔獣達になるとは思わなかったよ。
【相沢秀吉視点】まさか僕が最初に【傀儡】を使う相手がクラスの美女ではなく魔獣達になるとは思わなかったよ。
異世界生活三日目 場所???島(無人島)
この無人島から脱出する目処は、昨日のうちに立った。まあ、僕はインテリだからね。莫迦な無能どもとはココの使い方が違うのだよ。
スキルの中の【叡智(機械)】を使い、船の設計図を作り出し、地面に書き出す。
船そのものは作り出せないが、小さい部品程度なら【機械作成】で作り出せる。後は図面に合わせて組み立てれば完成だ。
インテリの僕でなければ思いつかないだろう。科学の結晶たる統合電気推進を利用した中型船を組み立てて無人島を脱出しようとは。
ちなみに、理解不能だが発電機も材料無しに作り出すことができた。
もしかしなくても、異世界で現代日本並みの生活が送れるかもしれない。無人島から一気に文明化だ。いっそこのまま地球の科学を超えるか。まあ、天才の僕に掛かればその程度容易だけど。
島を脱出するのは明日ということにして、今日中にこの島を探索し切ることにした。海岸は一周したが、特に強い魔獣が出ることもなく、密林の奥深くに入るにつれ、強い魔獣が出現するという層構造になっているらしい。
島を脱出すれば、二度と探索することはできない。ここは、探索するのが賢明だろう。
密林を進む。猟犬に限りなく似た得体の知れない魔獣も今日までに両手では数えられないほど殺している。
目のない烏賊に似ている奇妙な奴や、顔は無く黒い皮膚に蝙蝠の羽と長い尻尾が特徴的な奴、一見すると蟻のようだが触角は短く、人間のような皮膚と目、爬虫類のような耳と口、肩と尻の付根辺りにそれぞれ鋭い鉤爪が付いた手足を左右二本一対ずつ持つ二メートル越えの巨大な奴、一メートル弱のピンク色か薄赤色の甲殻類のような姿の奴、半ポリプ状で物質的なのは体の一部という奴、頭から節のある巻きひげ状の器官が突き出した昆虫のような奴など、まあとにかく色々な奴と戦った。
寧ろ、普通の動物をモチーフにしたような魔獣と遭遇した数は限りなく低い。
猟犬に限りなく似た得体の知れない魔獣を倒したあの地点以降、異形の存在しか出現しないことを踏まえると、この先に――中心部に何かがあるのではないかと思う。
まあ、僕個人の力は弱い。僕はインテリ――つまりは頭脳派だ。
戦いなどというものは下等な者達にやってもらえばいい。そして同士討ちで弱ったところを僕が潰せば、それで僕の勝ちだ。永遠の勝利だ。
「……まさか、僕が最初に【傀儡】を使う相手がクラスの美女ではなく、魔獣達になるとは思わなかったよ。しかも、このスキルは長時間効果を発揮しないし、戦力差があり過ぎると効果時間が大きく減ったり、最悪の場合は傀儡にできなかったりする。……というのは、悪用する場合の効果。たとえ無生物であってもそれを人形と認識すれば操ることができるというのが本来の効果というところか。まあ、他にも使い方はありそうだが」
この世界のスキルは解釈次第でその領域を広げられる。要は連想ゲームだ。
かけ離れていても、イメージが繋がっていればそのような効果を得ることができるのかもしれない。
まあ、僕ほど柔軟な思考を持つものはそうそういないだろうけどね。
今のところ何体か野獣と出くわしているが、【傀儡】で操り潰し合いをさせることに成功し続けている。
【運率操作】の効果でギリギリの範囲は自動的に補正される。……まあ、0を100にすることは無理なようだが。
さて、そろそろ島の中心部……か?
これまでに見たことのない三体の魔獣。島の中央に立つのは円錐状の頭部を持つ、絶えず流動する不定形の黒い原形質の塊。体のいたる所から腕や触手や鉤爪が伸び縮みしている。
右に従えるのは霜と硝石にまみれた翼とたてがみの生えた馬のような頭部を持ち、象よりも大きな体は羽毛ではなく鱗に覆われている存在。
左手上空に従えるのは巨大な空飛ぶ蝮と形容するべき、ただ妙にゆがんだ頭部や大きな鉤爪のようなものがあり、弾性のある黒い翼で宙に浮かんでいる存在。
『……見ツケタ。……一ツニナル、ソレコソガ我ラガ宿願。一ツニナル、ソレコソガ我ラガ宿願。今コソ一ツニ。今コソ一ツニ。今コソ一ツニ。今コソ一ツニ』
嘘だろ……知性がある魔獣だと。
そんな奴今までにいなかった。……コイツは、別格だ。
「【傀儡】ッ!」
中央の奴が従える二体を操ってぶつける。
「【運率操作】、因果干渉による確率変動。二体の魔獣の攻撃命中確率を百パーセントに!」
その間に僕は【模倣】でできるだけスキルを奪う。
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Skill Log
【模倣】により、スキル【透明化】を獲得。
【模倣】による獲得のため使用制限あり。使い切った場合に【模倣】による再度獲得不可。
【透明化】 LEVEL:1(残り15回)
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Skill Log
【模倣】により、スキル【迅雷縮地】を獲得。
【模倣】による獲得のため使用制限あり。使い切った場合に【模倣】による再度獲得不可。
【迅雷縮地】 LEVEL:1(残り15回)
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Skill Log
【模倣】により、スキル【重縮地】を獲得。
【模倣】による獲得のため使用制限あり。使い切った場合に【模倣】による再度獲得不可。
【重縮地】 LEVEL:1(残り15回)
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Skill Log
【模倣】により、スキル【掣肘】を獲得。
【模倣】による獲得のため使用制限あり。使い切った場合に【模倣】による再度獲得不可。
【掣肘】 LEVEL:1(残り15回)
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Skill Log
【模倣】により、スキル【気配察知】を獲得。
【模倣】による獲得のため使用制限あり。使い切った場合に【模倣】による再度獲得不可。
【気配察知】 LEVEL:1(残り15回)
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Skill Log
【模倣】により、スキル【覇潰】を獲得。
【模倣】による獲得のため使用制限あり。使い切った場合に【模倣】による再度獲得不可。
【覇潰】 LEVEL:1(残り15回)
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Skill Log
【模倣】により、スキル【魔力察知】を獲得。
【模倣】による獲得のため使用制限あり。使い切った場合に【模倣】による再度獲得不可。
【魔力察知】 LEVEL:1(残り15回)
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Skill Log
【模倣】により、スキル【熱源察知】を獲得。
【模倣】による獲得のため使用制限あり。使い切った場合に【模倣】による再度獲得不可。
【熱源察知】 LEVEL:1(残り15回)
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Skill Log
【模倣】により、スキル【振動察知】を獲得。
【模倣】による獲得のため使用制限あり。使い切った場合に【模倣】による再度獲得不可。
【振動察知】 LEVEL:1(残り15回)
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Skill Log
【模倣】により、スキル【剛力】を獲得。
【模倣】による獲得のため使用制限あり。使い切った場合に【模倣】による再度獲得不可。
【剛力】 LEVEL:1(残り15回)
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Skill Log
【模倣】により、スキル【駿身】を獲得。
【模倣】による獲得のため使用制限あり。使い切った場合に【模倣】による再度獲得不可。
【駿身】 LEVEL:1(残り15回)
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いくつかスキルを奪うことができたが、もう限界のようだ。二体の魔獣が撃破された。
『……一ツニナル、ソレコソガ我ラガ宿願。速ヤカニ融合シ、我ラト一ツニナレ。……不完全ナド許サレヌ。不完全ナド許サレヌ。不完全ナド許サレヌ。不完全ナド許サレヌ。残ッタ最後ノピースヲ持ッタ、
称号だと! あの、よく分からない称号が関係しているのか!
どちらにしろこのままでは殺される。融合? そんなことをされたら、僕の自我がどうなるか分からない。
あんな異形などになってたまるか。僕は相沢秀吉だ。クラスを我が物にし、真の勝利者になる天才だ! こんなところで死んでたまるかァ!!
「【運率操作】、因果干渉による確率変動。――宇宙空間にあるスペースデブリがあの異形目掛けて落下する確率を百パーセントに。隕石落下によるダメージを僕が受けない確率を百パーセントに!」
今僕の打てる最強の手で、この異形を食い止める。それで止まらなかったら僕の負けだ。
隕石の落ちた衝撃で巻き上がった砂埃が消えた。後に残されたのはクレーターだけ。周りに敵影は無し……僕は勝ったのか?
◆
【三人称視点】
ミンティス教国に存在するとある教会。小さくあまり目立たないこの教会は、外観こそミンティス教国の国教であるミント正教会を信仰する風を装っているが、実際は全く別の神を信仰する、隠れキリシタンのような形式をとっている。
十字架に向けて祈りを捧げるのは、浅黒い肌の神父。
気さくで話しやすく、ミント正教会の信徒からも多くの信頼を勝ち得ているこの男には、裏の顔が存在する。とはいえ、彼の特殊な立場上、そのことを知るものはごく限られた……両手で数えられる人数しかいない筈なのだが。
「なるほど、敬虔な信徒というのは素晴らしいものでございますね。ただ、信仰する相手も神、信仰するものも神というのは、なかなか見かけない構図ではございますが」
道服を身に纏って目を細めて拱手をする男が一人。
絵に描いたような中国の仙人の雰囲気を有し、現に
「確か、ユェン=シー・ティェン・ズン殿でしたね。お噂はかねがね」
「まさか、ヴァパリア黎明結社の最高幹部――七賢者の一人……いえ、一柱であるナイ神父。……いえ、ナイアーラトテップ様にお名前を覚えていただけているとは、恐悦至極に存じます」
ヴァパリア黎明結社の最高幹部――その存在はヴァパリア黎明結社に所属する者にすら知らされない圧倒的上位存在。
末端の末端のそのまた末端でしかないユェンが、ナイアーラトテップの化身……否、その分体を突き止めたというのは、とんでもない快挙である。
「生憎と今の私は気が立っててね。ようやく見つけた最期のピースにまんまとやられてしまった。もし、あのまま隕石にやられてしまっていたら、欠けたピースが二つになっていたところだったよ」
「それはそれは、とんだ災難でございましたな。仕える主人達を同胞を憎むべきマルドゥーク文明の者共に滅ぼされ、自身の一部である【這いよる混沌】も彼らに殺害された。……本当に災難続きでございますね」
「……よく調べ上げましたね。ところで、貴方は私を嘲笑いに来たのですか? 生きとし生けるもの全てを【冷笑】する私のお株を奪うつもりで?」
「いえいえ、
ユェンには、以前ヴァパリア黎明結社のメンバーであることを見抜かれた挙句、むざむざと逃げ帰ってきたという前科がある。
「しかし、ヴァパリア黎明結社からなんのお咎めも無しと聞いた時は驚きでした」
「ヴァパリア黎明結社は、一つの目的の動いているように見えますが、実際は己が利権のために所属している者の総合体ですからね。来るもの拒まず去る者追わず――そんな緩さが売りでもあるのですよ。というより、本当に全てのメンバーを把握しているのかすら疑問ですね。実際、私は主人様達を復活させるためにヴァパリア黎明結社と手を組んでいるというのが大きいですし、他の七賢者の中にも自分の利権のために所属している者もいます。……まあ、中にはかつて結社のトップに受けた恩を返すために七賢者として籍を置いているという義理堅い方もいらっしゃいますが。まあ、この組織の目的自体トップの私的なものだったりしますからね。まあ、どっちもどっちです」
「……はは。緩い結社なのですね。なるほど、道理でお咎めが無かった訳だ」
「寧ろ、ユェン殿は自分の功績を誇るべきだと思いますよ。この先結社にとって最大の敵になる可能性を――ハリボテの混沌の先を看破し、我々の存在を知覚した存在の情報を我々に伝えたのですから」
結社内でユェンの功績は大きく評価されている。
勝負に勝って試合に負けた……あの時のユェンの撤退は、まさしくそう形容すべきものなのである。
「それで、ユェン殿はどのようなご用で?」
「そうでした。
プライドなどない。どんな手を使っても必ず生き残る。その泥臭い生き方は嫌いではない。
だからこそ、ナイ神父は自らにユェンの願いに応える力がないことを申し訳なく思う。
「……私にはユェン殿の願いに応える力はございません。七賢者の中でも私は弱い部類に入りますので……そうですね。
ナイ神父から紹介状とアドバイスを受け取ったユェンは拱手をし、来た時と同じように静かに去っていった。
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