ブラウスとタイトスカートを穿いて教壇に立てば魅力ある女教師になりそうなロゼッタと本好きを拗らせた変態なモブを並べて非常勤講師にモブを採用するのはどう考えても間違っている。

 異世界生活十七日目 場所エリシェラ学園


 貴族の養豚場は臭そうで面倒そうだからとっとと要件を終えて脱出エスケープしようと思ったんだけど、意外にも初めて会った貴族令嬢は知的な女性だった。

 乙女ゲームの悪役令嬢に転生したらしい……正直なところご愁傷様としか言いようがない。……もう、婚約破棄されたらカウンターで顔面吹き飛ばしてやればいいんじゃね? なんか、さあ、理不尽じゃん。悪役だからやられないといけないって。


 しかし、畑違いか。まあ、文学と歴史って密接に繋がっているんだけどね。同じ学部で別の学科ってこともあるみたいだし……どこの大学とは言わないけど。というか、よく考えたら大学生ってことは大先輩じゃん。敬っておかないと。


 ……というか、乙女ゲームを基にした世界? いや、ここはカオスな世界で……あれか、乙女ゲームも吸収したのか。一体どこに向かっているのだろうか? 女子受けだろうか? 男子受けだろうか? コアなオタク狙いなのだろうか? ……うん、需要ないよね、カオスな世界って。


 そして、もっとカオスなことが起きた。なんと、モブキャラを魔法学園の非常勤講師にしたいようだ。……いや、さあ。確かにヒキニートでも魔術学院の非常勤講師にはなれるみたいけどさぁ……俺、教員免許持ってないし、まだ高校一年生だよ。常識的に考えて非常勤でも講師は無理じゃない? 教授とか准教とかはもっと無理だ!!


「あの……無理です。教員免許持ってないし、庶民ですし、にーとですし、高貴な貴族の皆様に教えられるほど偉くはありませんから。……というか、美華さんって最終学歴は大学四年生でしたよね? ということは、家庭教師のバイトをしてた経験があるんじゃないでしょうか? 俺は美華さんの方が適任だと思います」


 だよねー。どっちも教員免許を持っていないけど、どっちが講師にふさわしいかと問われたらどう考えても有名公立大学の四年生の方だ。だって俺、高校生だよ。クラスではぼっちだったんだよ。そんなぼっちが教壇に立って教えられる訳無いじゃん。しかも、貴族相手に……。


「私も無理ですわよ!! 私が転生者リンカーネーターだということは極秘にしてますし……いずれは、打ち明けないといけないとは思っていますけど。一応、教育実習の単位は取りましたけど……」


「……いっそお二人で本学の非常勤講師に」


「「なりません!!」」


 う〜ん、駄目なようだ。ロゼッタはブラウスとタイトスカートを穿いて教壇に立てば魅力ある女教師になりそうなんだが……というか、俺が教師になるよりも需要あるよね!!


「……まあ、草子殿が嫌なら仕方ない。【無詠唱魔法】と霊薬エリクシルについて教える話は無かったこと……」


「分かりました。どうしてもと言うのであれば受けします。ただ、こんなモブが教師をしても誰も得しませんし、徒らに貴族のヘイトを稼ぐだけになると思いますよ。もし、『こんな下賎な教師に教えなんて請いたくない』と言われたら、即刻講師は辞めさせて頂きます。生徒は教えてもらいたくない、こっちはやりたくないのであれば、やめればWIN-WINですから。勿論、【無詠唱魔法】と霊薬エリクシルについては教えて頂きますが……」


「……まあ、致し方ないか。心身の疲労を溜め込むような場所に無理矢理留めさせる訳にもいかないし……分かった。それでいいだろう」


 いいようだ。まあ、結果は見えているけどね。


「講義は明日の一時間目にしてもらいと思う。教室は……そうだな、ロゼッタ嬢のクラスということで」


「分かりました。……ちなみに、どんな講義をすれば? 文学の素晴らしさについて語るのであれば、最低でも週四コマ×前後期くらいは必要ですが……」


「魔法に関する授業をしてもらいたい。本学は教養と魔法学の二種類を教えているからな。実技ではなく、座学で。内容はお任せする」


 ……あの、人選ミスだとは思いますよ! 話すことって言ってもなぁ……というか、俺自身がチュートリアルを受けてない、完全な独学だし。さて、どうしたものか。……テキトーでオーケー?


「あの……そろそろ生徒会室に向かわないといけないので」


「そうだったな。引き止めて悪かった」


 えっ? 生徒会? 王道パターンだと、そこに攻略対象が居たりする? なにそれ、見てみたい。どんな外面だけは美しい貴族なんだろう?


「あの? 良かったら俺も連れて行ってくれませんか? 乙女ゲームのバッドエンドに関しても何かしら回避のお手伝いができるかもしれませんし」


 というか、同業者が命を奪われることを知って放っておける訳がないからね。まあ、にーとなモブに何かできるとは思えないけど。


「お気遣いありがとうございます。……あっ、私のことはロゼッタとお呼び下さい。敬称は不要です」


「ちなみに、彼女は公爵家令嬢で大公家の長男ジルフォンド様の婚約者だ」


「なるほど……つまり、そのジルフォンド様に婚約を破棄され、よく分からない濡れ衣を着せられてポイ捨てされるって展開ですね。……まあ、あれですね。無理だったら隕石落としましょう。首都を消し飛ばせば証拠は隠滅、なにも残りません。残るのはクレーターだけ……って結局残ってる!?」


「……あの、別の意味でバッドエンドになっているんですが! というか、それじゃあ本当に悪役じゃん!」


 駄目なようだ……うん、理不尽には理不尽で返さないと駄目なんだよ。遠慮してちゃ。

 隕石一つで破滅を回避できるのなら、隕石に頼った方が絶対に簡単でいいと思う。……えっ? 駄目?


 うん、悪役令嬢の破滅回避は難題なようだ……いや、しんどいじゃん、好感度稼いで王子様とのヨリを戻すとか、主人公と友達になって破滅を回避するとか。しかも、どんな手順を踏んでも大概断罪されるんだよ。悪役令嬢だからとかいう理不尽な理由で。



 学園長室を出て、外を歩く。生徒会室はもう一つの棟にあるらしい。渡り廊下はないようだ……「目に見えないものに対しては神経質になるのに、目に見えるものには何故か疎かになる」てな感じのことをにーとな魔術講師が言っていたよ。意味は違うと思うけど。要するに、もっと楽な校舎作りをしろよ! って話。


 ……あっ、見たことのある女子達が見るからに偉そうな豚貴族に絡まれている。

 ……(´・ω・`)らんらん? 出荷するのだろうか? 脂ばっかで胸焼けしそうだな。ソードランペ●ジでも使ってろ!!


 あっ、セーラー服を着たちょっと透けてる娘が何かを取り出した。……赤いコードと青いコード、どっち切っても爆発する時限爆弾だ。しかもカウント始まった。


 さてと、少し助力するとしますか。エルダーワンドってどこにあったっけ?


「伸びてからチョキっと。エク●タス! 的な? 金属発光はしないけど」


 如意棒のように伸ばして、爆弾に届いたところで二本のコードをチョキっと。うん、カウントが残り一秒だ。南無不可思議光なーむーふーかーしーぎーこー


 ――バァァァァァン!


「ちっ、きたねえ花火だぜ」


 と思ったんだけど、豚貴族は大火傷を負っただけで死ななかったようだ。……ちっ、もう少し火力上げとけよ。C8N8O16オクタニトロキュバンとかさ……ん? 威力不確かな奴を使うより実証されている方を使った方がいい? C6H6N12O12ヘキサニトロヘキサアザイソウルチタンとか? えっ? ……そういうことじゃなくて?


『あっ、草子君。ギルドで依頼受け取って戻ってきたよー。討伐対象はラドゥーンだって!』


「おっ、ラドゥーンか。『ギリシア神話』に登場する林檎園の黄金の林檎を守っていた、百の頭を持つ茶色いドラゴンだな。黄金の林檎があったら持ってきてくれ。美味しいアップルパイを焼いてもらおう……誰かに」


「……そこは自分で焼くっていうところだと思うけど。というか、草子君。貴族さん吹き飛ばしちゃったけどいいの?」


 あっ、黒焦げになった豚貴族が睨んでいる? あの、そんな風に見つめられるとこっちが腐りそうなんでやめて下さいませんか。速やかに出荷するので、そんな目で見ないで下さい。


「ふっ、お前がこの女共の主人という訳か。庶民の癖に随分な身分だな。――こいつらはこの伯爵家三男のディスクルトゥ=ノルマンディーの側室に迎えてやる。ありがたく思うがいい」


 ……はっ、なんなのコイツ。頭に蛆虫でも湧いているのだろうか? というか、爆発を直に食らっていたけど、それについてはノーコメントなの!? 普通突っ込むところそこなんだね。いや、別にいいんだよ、突っ込まないのは。

 いや、しかしタフネスやべえわ。二重の意味で。爆発に巻き込まれて煤けてるだけで特に目立った外傷がないのもあれだけど、爆弾で「お前、無理」って意思表示されたのに、華麗に無視? 豚なのに華麗に動けるの? まあ、豚って体脂肪率低いんだけど。そもそも豚って比喩が間違っているのはまあ置いといて。

 まだ、女子達を自分のものにできると思っているのかねぇ。そういうのって権力大好きな人達には「こうかはばつぐんだ!」だけど……まあ、とりあえず。


「あのさ、馬鹿にしているの。ノルマンディーってのはフランスのノルマンディー地方を領有していた君主の由緒正しい称号なの。獅子心王の異名で知られたリチャード一世とかね。……その名前をてめえみたいな豚貴族如きが名乗るな! とっとと改名しやがれ!!」


『「「「「「「「「「「そっちなの!!」」」」」」」」」」』


 えっ、違うの? というか、ロゼッタ様も何気に参加してた? 公爵令嬢様の突っ込みだ。きっとご利益があるのだろう。――ありがたやー。


「貴様、俺をノルマンディー伯爵家の三男と知っての狼藉か。面白い! 貴様如き平民、我が家の力で消し去ってやろう。その上で、そこの女共を犯してやる」


「…………へぇ。家の力に縋ってしか何もできない小僧が。モブ如きを殺すために伯爵家の権力を振りかざすの? オーバーキルじゃない? まあ、いいや。戦争するなら受けて立つよ。とりあえず――ノルマンディーとかいう不相応な家名の貴族はこの世界から消してやる。安心しろ、塵一つ残さん。鏖殺してやるよ!」


 というか、鏖殺って読める? おうさつ、皆殺しのことだよ。

 というか、塵もみなごろしってどっちも部首が鹿じゃん。よし、鹿殺してやるよ! って意味が分からなくなった? 鹿の角にぶっ刺されて死ぬのだろうか? というか、どんな死因? 異世界死因あるあるなの!?


「……草子さん、流石にやり過ぎじゃ」


 あれ? リーファが固まった。なんで涙目になっているの? 豚貴族に苛められて怖かった?

 いや、違うか。多分今の俺、滅茶苦茶怖い顔をしているからな。まあ、かなり頭にきてるんだけど。怒り心頭に発する的な?


「……草子君、ここは私に免じて不問にして頂けないでしょうか? ノルマンディー伯爵家は我が家の力をもって必ず爵位を剥奪します」


「例え公爵家の令嬢であっても、そんなことが許されると思っているのかァ!?」


「いい加減に立場を理解しなさい、ディスクルトゥ。貴方は一族郎党と共に殺される運命にあるのですのよ。彼は己の気分一つで隕石を落としてこの首都を壊滅させることすら可能な大魔導師――」


「……いえ、ただのにーとです。それに、ご希望でしたら時空間を歪曲させて領土諸共未来永劫消し去ることも可能ですが……それとも分解?」


 買い被りすぎだし、隕石を落とすしか能が無い訳でもないよ。ちゃんと時空間を歪曲させることだって、物質を元素レベルに分解することだって、大爆発を引き起こすことだってできるよ!!

 ……えっ、どのみち兇悪だって? いやぁ、照れますなー。


「あっ、そうそう。俺、魔法学園の非常勤講師になったんでよろしく。……まあ、すぐに辞めさせられると思うけど。あっ、成績は公平につけるよ。講義に私情は持ち込まないべきだからね」


「草子君、非常勤講師になったんですかぁ。草子君って教えるのが上手いですからぁ、すぐに人気講師になると思いますよぉ」


「買いかぶり過ぎですよ、北岡さん。……さて、今から俺はロゼッタ様と一緒に生徒会室に行くんだけど……お前らはどうする?」


『勿論ついていくよ! ……ところで、そのお姉さんってもしかして悪役令嬢? 時限爆弾は……使わなくても良さそうだね』


「……何度も言うけど転生者の悪役令嬢は大体悪役していないから時限爆弾を贈る必要は無いって! さて、参りましょうか」


「……草子君ってもしかして、そういう美しい女性が好みなの?」


「何を仰っているのですか? “天使様”。貴女ほどお美しい方はどこの世界にもそうはいませんよ。……久々に話が合いそうな相手に出会えたんだよ。浅野教授や浅野ゼミのゼミ生、木下女史以来だ。そりゃ、嬉しくもなるよね」


 やっぱり趣味が合うっていいよね。話が合わないと一緒にいるだけで苦痛だし。

 クラスという固定されたグループで孤立するくらいなら、話が合うグループで楽しくやっていた方がいい。俺はそういうスタンスだよ。

 クラスのしがらみって面倒以外の何物でもないし。お互いに苦痛ならさっぱり関係を絶った方がお互いにいいだろうし……無理して人付き合いしたって何もいいことない。


 だから、無理してついてこなくていいよって言っているんだけど……現実はそう上手くはいかないんだよね。

 なんで、変態なモブに同行するんだろう? この謎は多分アンティキティラ島の機械の謎以上に難解だ。



 生徒会室は校舎の三階の端っこにあった……本当に行くのが面倒な位置にあるよね。もう少しいい位置に作ればいいんじゃないかな? メンバーのほとんどが上位貴族みたいだし。


「遅かったですね、ロゼッタ。……ん? そちらの方達は?」


 まあ、ですよね。自己紹介は……まあ、いつものパターンでいっか。


「はじめまして、国立大学日本文化研究学部国文学科浅野天福ゼミ大学公認特例ゼミ生の能因草子と申します。【宵闇の魔女】様にご教授頂こうと思い、エリシェラ学園を訪れたところ、なんの戯れか非常勤講師に任命されてしまい……解雇クビにされるまではいることになるんじゃないでしょうか? まあ、一日で解雇クビにされそうな気がしますが。……それから、こちらの皆様が俺の旅に同行? している俺には勿体ない、誉れ高き勇者パーティ? 勇者候補? の白崎さん、朝倉さん、北岡さん。元ビッチ? というか、改心系ビッチ? な柴田さん、岸田さん、八房さん、高津さん、常盤さん。後は、変態の聖さんとリーファさん」


「……草子君。落差激しいし、虚偽が混ざっているよ。私は勇者じゃないし、私達は勇者パーティじゃないわ!」


「「「「「アタシ達はビッチじゃないって何度言えば分かるのよ!!」」」」」


『……草子君、酷いよ。リーファさんと一纏めだよ。……爆弾魔が外されて、ただの変態だよ。……爆弾魔の称号が消えたのは嬉しいことなのかもしれないけど、そこのBL狂と一緒にされるのは嫌だよ』


「私も聖さんと一括りにされるのは嫌です! BLとは素晴らしい文化なのですよ。尊い文化なのです。みんなまだその尊さに気づいていないだけなのです! 草子さんは私の気持ち、理解できますよね! BL本を食べたのですから!!」


 どうやら、俺の意見に対して喧喧囂囂、侃侃諤諤で喧喧諤諤なようだ。

 というか、俺は正論を言っただけじゃん。上手く纏めて褒められるのなら分かるけど、なんで文句を言われるんだろう? ぶっちゃけ文章を纏める力ならあの“天使様”にすら勝てる自信はあるのに……やっぱりモブキャラは選ばれし主人公には勝てない運命にあるのだろう。


「はじめまして、ロゼッタの婚約者・・・・・・・・のジルフォンド=エリファスです。現在は生徒会を務めさせて頂いております。今後も色々と縁がありそうなですね」


 ああ、コイツがロゼッタの婚約者ね。絵に描いたような王子様だな。まあ、どうでもいいんだけど。

 というか、なんで初対面でいきなり高圧的なんだろう? 俺が高圧的なのは分かるんだけどさ、貴族嫌いだし。

 もしかして……あのパターン? あまりにも乙女ゲームの世界に酷似し過ぎているからって警戒しまくって、結果徒労に終わる的な。

 ロゼッタを他の男に取られそうだから警戒しているってことか。そんな警戒無用です! 俺、絶対に釣り合わないから!!


「ロゼッタの義弟のシャート=フューリタンです。よろしくお願い致します」


 なるほど、ロゼッタの義弟ね……美形だし乙女ゲームの攻略対象なのだろう。

 所謂可愛い系男子だ。持っている人形は年季が入っているけど、きっちり手入れされている。きっと気に入っているんだろうな。……付喪神みたいに動いたりする?


「ジルフォンドの弟のヴァングレイ=エリファスだ。よろしくな」


 ほうほう。兄弟なのにイケメンであること以外に共通点がないな。

 ワイルド系イケメンってとこか? まあ、コイツも美形だし攻略対象だろう。くぅ、美形ばっかでいいなぁ。……まあ、心底どうでもいいけど。人は中身だっていうし……あれ? 俺、中身もスッカスカなんですけど! ト●ポにすら勝てないようだ。


「フィード=フォートレスです。生徒会では副会長を務めさせて頂いております。非常勤講師をお勤めになるということで、是非講義を拝聴したいです」


 黒髪黒目の長身。そして、やたらと色気を出している。きっとモテるんだろうな、間違いなく攻略対象だし。

 確か、エリファスは大公家でフォートレスは伯爵家だっけ。で、フューリタンは公爵家……大分間が空いていたりしてるけど、交友関係があったりするのかな?

 まあ、この国の爵位は形骸化しているみたいだけど……その割には爵位でしか人を見れない貴族もいるみたいだし……滑稽なり、的な?


「ノエリア=フォートレスです。よろしくお願い致します、能因先生」


 ……うん、どっちだろう? フィードの姉? 妹? 勘だけど妹、かな?

 お兄様を溺愛するブラコン型? 氷の女王なのだろうか? もしかしたら、お兄様と結婚したりする?

 乙女ゲームだとどんな立ち位置だろう? 攻略対象……ではないだろうな。百合ゲーじゃないし。ということは……主人公キャラ、でも無さそうだ。それだとフィードルートが成立しなくなるからね。いや、血縁者同士が結婚できないとか、そういうルールがどうかとかじゃなくて、純粋に兄との距離が近過ぎて兄以外とくっつけないんじゃないかって。

 消去法で悪役令嬢? でも見た感じだと小細工なしで戦うライバルに近い? 要するにライバルキャラ? 妹様との関係構築が成功すれば、追い風になるのか? まあ、俺は攻略しないしどうでもいいけど。というか、俺は令嬢じゃねえ!!


「はじめまして、プリムラ=イノセンスと申します。農民出で貴族の皆様とは釣り合いが取れませんが、足を引っ張らないように頑張って参りますのでよろしくお願い致します」


 うん、乙女ゲームの主人公はコイツだな。なるほど……【光魔法】のスキル持ちか。

 要するに、コイツの動き方次第でロゼッタの立場が悪くなったり、ロゼッタが追い詰められたり、ロゼッタが国外追放されたり、ロゼッタが殺されたりするのか……うん、知らぬ間に元凶となっているパターンだ。物凄い厄介だね。


 というか……これって少々誤差があるけど、見たことある配置なんですけど。その……大丈夫なんですか!! 権利というかなんというか。

 ほら……あの我儘悪役令嬢が野性味溢れる問題児にシフトチェンジする奴。

 まさか、ロゼッタの魅力によって破滅は悉く回避され、友情エンドに……ってはならないんだよね、多分。


 はぁ、やっぱりクソだな。異世界カオス。とことん色々なものを崩壊させたいようだ。どれもこれも全部老害の加護のせい? バラバラの加護的な? そのうち闇堕ちとか出てくるのだろうか? あっ、闇堕ちしたら殺すよ。光堕ちさせるの面倒だから。というか。そういう重たい奴いらないから。


 まあ、あれだ。まだチャンスはある。知らなければ幸せだってこともあるし、例えそうだとしても俺の動き次第では友情エンドも夢じゃない……あれ? 要するに俺が破滅の元凶? 俺が破滅を運んできたの? 破滅が俺を運んできたの? 俺と破滅は表裏一体なの!? \\マジで//!? \\やべえ//!? \\すげえ//!?


 ……まだ、望みは消えた訳じゃない。きっとまだロゼッタが救われる未来は残されている筈だ……残っているんじゃないかな? しかし、悪役令嬢の命運を俺が握っているのか。……俺って何キャラ?


 ……あっ、そういえば。肝心なことを忘れてたよ、いけないいけない。


「あの。ジルフォンド様でもヴァングレイ様でも、まあどっちでもいい訳ですが、一つ許可を頂きたいことがあるのですが」


「……なんでしょうか? ロゼッタは渡しませんよ」


「……いや、もらっても養えませんよ。全く、こんな甲斐性なしのモブによくこんなに女子がついてくるなぁ、って感じですし。……半分は変態とビッチビチのビッチですが」


『「「「「「「変態ビッチじゃない!!」」」」」」』


 違ったようだ。……というか、同時言いだからだけど、これってテキストに直すと、変態のルビがビッチになるとか、ビッチのルビが変態になるんだよね? 多分。

 変態=ビッチなの? なら、俺も広義のビッチなの? ……巫山戯んな!!


「えっと、遺跡ジグラートの探索許可を頂きたいのですが。あっ、断っても大丈夫ですよ。今度は隕石落とすって脅迫するんで」


『「「「「「「「「「「「「「「「「それ、もっとダメな奴だよね!!(だと思います!)(思う)」」」」」」」」」」」」」」」」』


 あっ、初の十七人突っ込みだ。ありがとごぜぇます。

 まあ、だからなんだってことなんだけどね。


「……あの遺跡は調査が済んで、特に何もないということで結論がついていますが。調査するのは勝手ですが、何も見つからないと思いますよ」


「…………えっ、\\マジで//!!」

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