文学少年(変態さん)は世界最恐!? 〜明らかにハズレの【書誌学】、【異食】、にーとと意味不明な【魔術文化学概論】を押し付けられて異世界召喚された筈なのに気づいたら厄災扱いされていました〜
まさかステータスがバグっただけのモブが明らかに主人公な“天使様”達に戦い方を教えることになるとは……異世界生活は何が起こるか分からないようだ。……えっ、そろそろお前はモブじゃないことを自覚しろって?
まさかステータスがバグっただけのモブが明らかに主人公な“天使様”達に戦い方を教えることになるとは……異世界生活は何が起こるか分からないようだ。……えっ、そろそろお前はモブじゃないことを自覚しろって?
異世界生活十一日目 場所フィージャ草原
アルルの町を出て西南西に歩いて二百五十六分、そこが今回の旅の目的地にして聖達と別れてソロプレイを始めるスタート地点でもあるエルフの里だ。
後二百五十六分、後二百五十六分歩けば、俺は変態達と俺には相応しくない白崎達――主人公パーティと別れることができる。冴えなくて目つきが悪い変質者の分際で美少女達に囲まれやがってというやっかみの視線からも解放されるだろう。……というか、俺は一分一秒でも早くコイツらからトンズラしたいと思っているのに、寧ろ被害者は俺なのに、俺に対してやっかみの視線を向けるのっておかしくない!!
全く、男は美女とか美少女に囲まれていたら絶対に嬉しいって先入観はおかしいと思うよ。……まあブスよりは美しい方がいいと思うけど。
俺は美少女と古書を並べられたら迷うことなく即古書を取る男だ! とっくの昔に結婚なんて諦めて人生ソロプレイか、文学研究と結婚するかどっちにしようか決めかねている系男子だ。……うん、浅野教授には「君ならそのまま博士号取って研究職に就くこともできるだろう。文学研究を大きく飛躍させる歴史的な研究者になることだってできる筈だ」って力説されちゃったんだけど、正直大学を卒業したら就活するか大学院に進学して博士号を狙うか本気で迷っているんだよね。確かに好きなことを研究できる生活は素晴らしいと思うけど、近年文学の研究とか基礎的研究には価値がないってどんどん研究費が削られているんだよ。……俺は安定した暮らしをしたいけど、ってそもそも異世界から地球に帰還しないとスタート地点にすら立てなかった!! EASY MODEとは言い難いけど、まあなんとかなりそうだなって大学入学ルートを異世界召喚とかいうとんでもアクシデントでVERY HARDにしやがったあの老害には天罰を与えないといけないね! ……普通は神が天罰を与えるものだけど。
そういえば、昨今、異世界ものの中でも追放ものが流行っているみたいだけど、多分俺ほど追放されることを願っている奴はいない筈だ。追放されたくない奴を追放するくらいなら、俺をパーティから追放してくれ!!
流石に白崎達を戦えないまま置き去りにしてしまうと責任を問われそうなので、とりあえず戦える程度のレベルまでは上げてもらう。
いつもは俺が前衛で片っ端から魔獣をぶっ飛ばしたり、消し飛ばしたり、撲殺したりしているが、今回は白崎達に魔獣をぶっ飛ばしたり、消し飛ばしたり、撲殺したりさせるのだ。要するに狂人への魔改造だ! 目指せ、ヒャッハーだ! ……白崎達、モヒカンになったりしないよね? まあ、お淑やかなままでは普通の異世界ならともかく、カオスな世界を生き抜くことはできない。この世界で生きるためにはこの世界に適応するしかない。綺麗事ばかり言っていたらいつ死ぬのか分からないのだから。
えっ、お前じゃないから撲殺は流石にしないって? ………………ツッコミ遅くない?
「ってな感じでエルフの里に到着するまでに、俺が『お前らなら一人でやっていけるぜ! 流石は勇者様達だ、選ばれし者達だ』って思えるくらい強くなって安心して置いていけるようになってもらわないと流石に寝覚めが悪いので単刀直入に言います、強くなれ!」
「なんで、私達が置いていかれるために頑張らないといけないのよ! 私は草子君と一緒に……」
「あっ、そういう
俺のステータスはバグっているが、だからといってこの世界で猛者として君臨できるという訳ではない。時の運に見放されれば明日どこかで死ぬかもしれないし、そもそもUnmeasurableだってどこまで信用できるか分かったものではない。
結局、世界は有為転変――信用できる
「いや、草子君が死ぬようなことになったら世界が崩壊しているから! 孤独死とかあり得ないから!!」
“天使様”、俺だって死ぬときは死ぬよ。例えばどんなに強いステータスを持っていても、痛いのが嫌だから防御力に極振りしても流石に空腹には勝てない。……アレ、オレッテセントウデハサイキョウキャラ? モブなのに? あれー?
「ということで、ステータスがバグったただのモブが選ばれし皆様に教えを説くなど畏れ多いですが、僭越ながら手短にご説明させて頂きます」
「ステータスがバグった勇者よりも強いモブって何なの! ……いや、私達が勇者だということじゃなくて」
「華代、突っ込むだけ無駄よ。草子君は一度思い込むと簡単に変わらないのは貴女もよく知っているでしょ!」
いや、なんで諦めムードになっているの! なんで朝倉が白崎を慰めているの! なんで聖達、溜息吐いているの! これじゃあ、俺完全に悪人じゃん! 犯人じゃん! 崖まで追い詰められて白状しないといけないじゃん! ……『源氏物語』の最恵本を欲望に負けて食べてしまったのは俺です、って食べてないよ!! 崖に追い詰められるとあることないこと吐かされそうだ。というか……すみません、食べていいなら『源氏物語』の最恵本、味わってみたいです。異世界には無いけど。……いや、紫式部が異世界に召喚されていたりしたら……な訳ないか。
「ついでに見た目は美少女、美女だけど中身が終わっちゃってるそこの変態共もちゃんと聞いとけよ!」
『……リーファさん、あたし達だけ扱い違うよ。ぞんざいに扱われたよ。……白崎さん達はまだちゃんと扱われているのに、差別だよ』
「草子さん、貴方もBL本を食べてBLを理解した同志じゃありませんか! 聖さんの変態性は許容できなくても、私の変態性は許容できる筈です! 草子さんが私を変態と罵るなら貴方も変態です!! さあ、一緒に土に還りましょう!!」
『リーファさん、貴女は仲間だと信じていたのに……酷いよ、裏切りだよ!』
かくして、女の友情は崩れ去ったようだ。……というか、他人を蹴落として這い上がろうとか、『蜘蛛の糸』かよ! まあ、現代にもそういう人いっぱいいるけどね。そういう人に限って周囲を巻き込んで転落するんだよな。……うん、雪達磨式転落人生と名づけよう。……スノーマンブ●ザードは違うか。
「ということで、敵さんが到着しました。まずは適当にやって見せるので、皆様はここでご覧下さい」
現れたのはゴブリンの集団。あの……なんだっけ? 名前忘れた地下迷宮では雑魚敵だった。
こんな奴ら「撲殺☆」で終了だけど、それじゃあLessonにならない。加速して気配を消したまま近づいて殴り続けるとか、ファイアバレットを撃ちまくるとかじゃ、絶対にLessonにならないから! ……まあ、ぼっちだから他人に勉強を教えたことはないし、そんなに上手く教えられないと思うけど。
「とりあえず、基本的な魔法についてはJOBと一緒に手に入れたってことで問題ないんだよね?」
聖達は冒険者ギルドで登録を済ませるのと同時に魔法師の冒険者に
聞くところによれば、この世界でスキルを獲得する方法は二つ存在するらしい。
一つはそのスキルに関連するJOBを習得すること。そのためにはその職業に就いている先人に
もう一つは
JOBを習得してスキルを得る場合、最初は何もスキルを持っていないところからスタートする。最初は弱い代わりに成長の伸び代が存在するのだろう。
一方称号からスキルを得る場合、最初からスキルが揃っているが、最初に持っている以上のスキルをその称号から得ることはできない。
……えっ、お前はJOBを持っていないのに【窯焼】とか【焼物作り】とか【筆写】とか手に入れているじゃないかって? そんなこと言われましても、ねえ。うん、正直なんでJOBが無いのにスキルを獲得できるのかはさっぱりだ。……まあ、
「じゃあ、Lv1から使える初級魔法だけで戦ってみます!」
この世界の魔法には基本的に三つの段階が存在している。……といっても基本的にだ。フランス語のer動詞がフランス語の動詞の90%を占めていて、残りの10%は独特の変化をするみたいな感じだな。……えっ、例えが難しいって?
話を戻すけど、スキルレベルが一から使用できる初級魔法、スキルレベルが五十から使用できる中級魔法、スキルレベルが百以上になると使用できる上級魔法の三種類だ。まだ、スキルを習得したばかりということで聖達は初級以上の魔法を使えない。……まあ、俺は【魔術学最終研究】のおかげか、【魔術文化学概論】のおかげかは分からないけど、スキルレベルに関係なく魔法を使えるみたいだけどね。
「〝真紅の炎よ、火球となって焼き尽くせ〟――〝
俺が適当に作った〝ファイアボール〟ではない。この世界に存在する
ゴブリンに命中、一瞬で焼死体に変える。……あれは食いたくないから、放置だな。
そういえば、放置した魔獣の肉ってどうなるんだろう? 猛毒を含む魔獣肉を分解者が分解しようとしたら、その分解者がころっといっちゃいそうだけど。きっと、猛毒に耐性がある分解者とかがいてきっちり分解して自然に還すんだろうな。
「〝真紅の炎よ、弾丸となって貫け〟――〝
続いて炎の弾丸を生み出して放つ【火属性】の初級魔法を発動する。……あっ、弾丸を放つ魔法とかいいな。〝ナパームショット〟とか〝ジュウタンバクゲキ〟とか作ってみるか。……えっ? 〝ジュウタンバクゲキ〟は弾丸関係ないし、国際法違反だって? いや、異世界に国際法は通用しないし、それなら〝
「〝真紅の炎よ、槍となって貫け〟――〝
続いて炎の槍を生み出して放つ【火属性】の初級魔法を発動する。
……普通、ファイアランスって中級くらいの魔法に設定されているけど、〝
「〝清き水よ、弾丸となって貫け〟――〝
そんな感じで【火魔法】、【水魔法】、【風魔法】、【土魔法】、【氷魔法】、【雷魔法】の初級魔法を一つずつ発動して見せる。
まあ、相手が相手だからどの魔法でも結果はあんまり変わらなかったけどね。……まあ、再会した時の“天使様”達はゴブリン相手に苦戦、というか敗北しかけていたから迷宮戦を経験した俺と聖にとって雑魚なだけかもしれないけど。
そんな感じでゴブリン一掃。よし、お手本を見せたから次からは戦ってもらおう。
「……そういえば、草子君って【片手剣】のスキル持っているのよね? ほら、私達が襲われた時もよく分からない杖? で斬ってたし……何って叫びながら斬ってのかは分からないけど。良かったら私に剣術を教えてくれないかしら」
……と思っていたら、副委員長A……えっと、確か、ちょっと待って、あと少しで名前が……イニシャルがAだから……朝倉だ! 朝倉がそんなことを言ってきた。
そういえば、確かに斬ってたなぁー。だけど、俺素人だよ? こんな奴に教えを請いて本当にいいの? もっと適任いるでしょ!!
「……いや、探せばもっと適任な人いると思うよ。俺の剣は本で読んだ知識とゴブリンエンペラーのものだし……って、あれ? もしかして、俺の剣術の師匠ってゴブリンエンペラーだったの! 俺師匠撲殺しちゃったよ! ……でも、あそこで撲殺しないと俺が殺されちゃうし……もしかして、ゴブエン師匠の教育方針は俺の屍を超えていけだったの!? ……ということは、俺も師匠にならって実戦形式で教えるのがベストなのか? ――よし朝倉、剣を取れ! 剣術を学びたければ俺の屍を超えていけ!!」
「いや、なんで剣術を教えて欲しいだけなのに草子君を殺さないといけないのよ! というか、私に殺せる訳ないでしょ!! 逆に私が死んじゃうわよ!!!」
どうやら、ゴブエン師匠式はお気に召さないらしい。……全く仕方ないな。
「……面倒だけど、一人贔屓すると他からジト向けられそうだから一人ずつ順番にそれぞれに合わせた戦い方講座を開設するよ。……もう、これで文句は無い筈だ」
絶対に一人旅の方が楽だ。他人の顔色を窺って旅をするよりもソロプレイしていた方が絶対に楽しい。“天使様”達も変態と一緒に旅をするのは嫌な筈だ。絶対にパーティを解散した方がWIN-WINの筈なのに、なんで一人にしてくれないんだろう?
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