第51話 *魂を守るための壁面強化は、知識なのか?

「知識は何でも良いと言うことは、いろいろな事を覚えればいいのですか」

「知識の広さと深度によるところがある」

「広さとは」

「前述された通り、いろいろな事がそれに当たる。分野を定めずに様々な事柄を学習することだ。ただし、ある程度は、覚えたり考えたりすることは必要だ」

「深さとは」

「簡単に言えば、専門性だ。その分野のみを専門的に研究、仕事とするならば、魂の強度ではなく、壁の強化になる」

「なるほど。最初の方に戻りますが、転生などと言っていましたが、などの意味するものは何でしょうか」

「魂の格によっても強度が変化する」

「その格とは」

「魂自体で行動するのではなく、その外側にある身体を介しての場合が弱い。一般的には、肉体というものがそれで、肉体には固体や液体、ガス状も含まれる」

「ガス状の肉体とは…」

「一般的に、群体と呼ばれるものと同じだ。ただし、この場合の群体には総体としての意識しかなく、群体個々に意識はない。これは、固体と同じで、細胞ひとつひとつには意識はなく、全体を統括する機能である脳などの中枢が存在する。これらから、肉体を持つ魂の格を体格という。それに対して、魂だけの存在は、真格という」

「魂だけの存在ですか」

「過去に、神格という用語があったが、こちらが正しい。ただし、体格の中にもいくつか種類があり、肉体や精神性に神が介在している場合に、神格と呼ぶ場合がある」

「現段階では、様々なことを学ぶことで壁の強化になるということか」

「知識とは、広義で言えば特別な学びを必要としない」

「え?」

「日常を過ごすことだけでも、何らかの知識を得ている。毎日が同じことであっても同様だ。ただし、頭脳的か、肉体的かで、活性度からの知識量を比べると肉体を伴う知識は頭脳的を上回る。これは、肉体の経験が中枢にも反映されと思われるからだが、確証はない」

「スポーツなどの肉体運動は、事務などの頭脳労働よりも厚い壁を作れるという風に解釈しても?」

「よい」

「ありがとうございます。最後に、強度が強いというのは、転生を繰り返すことだと聞きました。この世界では、その強度が強い魂を持つ者はいるのでしょうか?」

「…そのことについては、私は発言できない。詳細なことを話すことが出来る者がいるが、どうするか?」

「できれば、お願いします」

「…端末に情報を送信した。では、私は失礼する」


そう言うと、こちらの送還術を使わずに、その者は消えた。

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