第21話 怪しい2人

 しかも、その状態のまま、次のことわざが知りたいという雰囲気だったので、先生は手をほどくことなく、次のことわざを言った。


『誠の道に幸歩く』


「これは、他人に誠意を尽くしていれば、その人にしあわせがやってくる、という意味です」


 今度はなぜか、先生の方が侍女の目を見て言っている。

 何かを伝えようとしているかのように。


 何だか気まずくなったので、その目を避けようと王子さまの方を見ると、机に突っ伏したまま寝息が聞こえる。

 いつの間にか、寝ていたようだった。


 王子さまは、寝てしまっているので、今の状況は先生と侍女2人きりという感じか…。


「…」

「…」


 2人して、黙ってしまったのを破るように、先生が言う。


「これが終わったら、元の世界に戻らないといけないのでしょうか?」

「ええ、その予定と聞いております」

「ことわざは多く、王子さまや“あなた”に伝えたいことは限りない。このままずっと、こちらに居たいのですが、どうにかならないでしょうか」

「居てくださるのですか!」

「ええ、可能ならばずっと、“あなたの側に”…」


王子さまが、起きた時にはなぜか2人ともいなくなっていた。

侍女がお世話をする主人を置いていくことは問題行動だったが、その理由を聞いて、あきれてしまった。


ことわざ先生と侍女が、付き合い始めた…と聞いたから。

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