最近のクルマは引導を渡さない。
最近のクルマってすごくドライバーに優しい。私が免許を取った頃はパワステ無しのクルマなんてザラにあったし、今よりマニュアルミッション車も多かった。チョークレバーを引いてエンジンをかけるクルマも有ったし、デコンプレバーを引かなきゃエンジンが止まらないクルマだってあった。ブレーキもクラッチもとにかく重かった。バックモニターなんて大型車にしか付いて無かったんじゃないかな?
歳を取って『ハンドルを回すのが辛くなった』となれば普通車から小さな車に乗り替えざるを得なかったし、オートマチックのクルマは『ヘタクソが乗る物』って若者はマニュアルミッションに乗ったりしていた。『MTしか運転出来ない』って年寄りもいたな。それこそワイドタイヤなんて若者じゃ無きゃ無理でした。
いつの間にかパワステが付いていない車なんてほとんど見なくなったし、新車販売台数の九割がAT車になったとか、バックモニターは大型車だけじゃなくて軽にも付けられる。チョークレバーなんて死語の世界だ。少なくとも新車で見たことが無い。最近はオートバイもインジェクションだからチョークを引いてエンジンをかけるなんて旧車の世界でしかない。
だからって訳じゃないけれど、年寄りでも太いタイヤを付けた車重二トンのミニバンや大型セダンのハンドルをクルクル回せるし、車両間隔が掴めなくてもバックモニターのおかげで車庫入れもスイスイ出来る。脚が弱っていてもブースター付きのブレーキペダルを踏めば車は簡単に止まるし、ABSのおかげでポンピングブレーキをしなくても雪道でもタイヤロックせずに停まれる。トラクションコントロール付きなら思いっきりアクセルを踏んでもホイルスピン無しでフル加速だってできる。加速だって車が適切なギヤを選択してポンポンとスピードが出る。
……と、良いこと尽くめに思えるんだけど、それってどうなのよって気もする。
確かに運転が楽だと良い事もあるんだけど、『本来運転してはいけない人まで運転出来てしまうのではないか?』と思う訳ですよ。
昔は体力が弱ったり車両間隔が掴みにくくなったら小さな車に買い替えたり、それこそ『ハンドルが重くて回せない』となれば運転を止めたりしていた。
今は体が衰えても運転できるクルマが多いんだけど、やっぱり体が衰えていると判断力が鈍ったり、思い違いをしたり、間違えた操作をした場合に対処できなかったりすると思う。
特に最近は高齢者の暴走事故が目立つんだけど、体の衰えから感覚が鈍ったのであろうアクセルとブレーキの踏み間違いと思われる事故が多い。運転手が『アクセルが戻らなかった』って言う場合が多いんだけど、ソレックスやウエーバーの多連装キャブをリンクで動かしていた時代ならまだしも、最近のクルマでアクセルが戻らないなんて滅多に無い。しかも暴走した車を見ていると決して古い年式では無い。どちらかと言えば新しい車だったりする。
私に言わせればアクセルとブレーキを踏み間違えたことにさえ気付かない程に鈍っているんだ。運転はやめた方が良い。とっとと免許を返して来い。
スポーツ選手は体の衰えから引退を決意するんだけど、安楽な方向へ走り過ぎた現在のクルマは衰えた体をカバーし過ぎて本来運転してはいけない人、つまり体が衰えすぎた老人にまで運転させてしまっているのではないかと思う。
どんなに優秀なブレーキを備えていても、運転手がペダルを間違えてたらどうしようもないよ。で、ブレーキペダルとアクセルペダルを間違えて踏み込めば車は自動的に加速。判断力の衰えか体の衰えからか分からないけれど、足をペダルを放すことなく、踏み変える事も無く、エンジンを止める事も出来ず……結果として老人が未来ある若者の命を奪う事故が起こっている。
最近のクルマは甘すぎる。運転してはいけない者に引導を渡すくらいの厳しさがあっても良いと思う。私はクルマ好きだから、運転を引退するなら『もう止めておこうか』ってクルマに引導を渡してもらいたい。
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