第87話【女性は24時間365日乙女とは限らない】


 燃え盛る炎を後方に、バルファロ君は怒りの権化となり会場中……もとい、憎虚憎虚幽怨血ニコニコゆうえんち闊歩かっぽする。


 MCが園内に緊急避難警報を発令し、得意のマイクパフォーマンスで速やかに指示を送る。


〝緊急避難警報、直ちにスタッフの指示に従い避難してください。〟


 ――――逃げ惑う人々とは逆に向かう一人の女性の姿があった。


 その女性は、バルファロ君よりも小さいが、堂々と通路の真ん中を歩いていた。


 MCまかいちゃん『そこの女性も早く逃げてください!!』


 MCの声を聞いたユリシャ妃は『ねぇ、司会さん?1つ聞いていいかしら?』と人差し指を立てる。


 MCまかいちゃん『今はそれどころじゃ……。えぇいっ……何でしょうか!?』


『この牛さんぶっ飛ばしたら?』


 MCまかいちゃん『勿論ですともぉお!!早くやっつけてくださいぃ!』


 非常事態にやけくそになるMCと、それを聞いて頬笑むユリシャ。


 バルファロ君は『ブオォォォォオオッ!!』と桁魂けたたましく吠える。


 その声量によりユリシャの体内で幾度の爆発が起こる。

 連鎖的な小さな反応が起こり、小さな口元から鮮血が滲み出る。


 だが、それでも歩みを止めない――――止まる訳にはいかなかった。


 〝愛する家族の元へ帰るために〟


互いに必殺の間に入る――――


『さぁ、そろそろ私も疲れたわ。やるわよ』


 瞳を閉じて大きく深呼吸をしたユリシャ。

 刹那――――開眼と同時に地から溢れでる劫火が現れ、炎揺らめき動く魔装を得る。


獄速炎迅ごくそくえんじん-かた-一獄次炎ひごくじえん


 ユリシャは全ての魔力を右手へ集中し超圧縮させる。


(あなたは、人のエゴが生んだ怪物よ。私が今すぐ――――楽にしてあげるからね……?)


 勝負は瞬き程の一瞬……否、と錯覚して仕舞う程の――――


〝測定不能〟→〝機能停止〟


終わって仕舞えば呆気なかった。

そこに立つのはユリシャただ一人。


『あのテンザでも倒せなかったバルファロ君を……。貴女は一体?――――』


 言葉が出てこないMCに向かって、足元が覚束無おぼつかないユリシャは、キメ顔で『アラ?言ってなかったかしら?妻であり子を育てる〝主婦〟よ……』と言った。


 数百年振りとなる魔力を使ったユリシャ妃は、満足そうな顔でその場に倒れた――――




【次回 憎虚憎虚幽怨血ニコニコゆうえんち編 堂々完結!!】

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