第65話【本人の知らぬ所で有名になったりする時もあるよね】

 ――――一家の大黒柱以前に魔界の主(影武者)が地上へと自由落下している頃、下で〝幽怨血名物〟絶対零度氷菓子アイスクリームをベンチに座り堪能し、親子水入らずに楽しんでいる母子がいた。



『ママ上~ニコニコして良いことあったの?』


 2Mもある娘〝フレデシカ〟は、頭上にクエスチョンマークを浮かばせながら、ちんまりと隣に座る母上に質問をした。


『所で一年は溶けないって、てんちょ~店長さんが言っていたアイスがもう形が残ってないよ?お熱あるの?』


 手から溢れる蒸気で顔が見えなくなっているユリシャ妃は、溶けたアイスクリームを地面へと垂らしながら答えた。


『フフフッ……さっき温泉掘ったのもあるけどね、貴女フレデシカと三人で、来れたのが嬉しくてね……思わず興奮しちゃったわ』


 その麗しき声には、娘や夫を思う妻の愛情が混じっており、蒸気で顔が見えなかったが娘が見るママ上の頬が、少しだけ赤い気がした――――〝怒り心頭〟で拳を振り下ろしたせいかも知れないが、真実は妃様だけが知る。


【愛するあなたへ 早く地上へ帰ってきてね。娘と二人、あなたの帰りを待ってます――――魔王を愛する妻ユリシャより】








 一方――――上空2100M付近



『いや゙ぁ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙あ゙ぁぁぁぁぁぁあぃあぁぁぁぁぁあぁあははぅぇあぇぁええぇ!!』

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