第60話【まぁさ、一杯飲みながら話さないかい?美味しい珈琲店紹介するぜ珈琲にはミルクが欲しいって?そこのミルクがまた格別でさ、マスターこだわりの産地と乳牛の一体感が素晴らしいんだよね】


 魔王一家が去った射的屋台では、超稀少でありもはや幻の一品とされる〝MPFマジカルパンブアップフィギュアユミコ〟を失ったが、店主の懐には、魔王様のポケットマネーから支払われた大量の札束があった。


『アレを手に入れるのにかなり苦労したがこれだけの金があれば……シッシッシ――――』


 他の景品は木端微塵となり、店を畳もうと準備をしていると、三人の客が店主に話しかけてきた。


『すみませんがこちらに〝角の生えた4M程の大男〟と〝可愛らしい2M位の女の子〟それから――――〝130cmのうるわしい貴婦人〟は来られましたか?』


『あっそちらの方達なら……あっ、あちらに行かれました……よ?』


 震える声でそう言った店主は、ただならぬ雰囲気をかもし出す三人に心底驚き、札束を持つ手が高速で振動していた。


 すると、棒状の杖を持った男が髭を擦りながら言った。


『店主よ……1つ質問をしたいのだが、ここに〝MPFマジカルパンブアップフィギュア〟ユミコが有ると聞いたのだが?見当たらぬぞ?あれは、世界に数体とない貴重なフィギュアであり、俺の大好きな〝魔界ラジオ〟の〝MCまかいちゃん〟がラジオで言ってたんだよ……『私が小さい頃から憧れ、今でも大好きで魔界で絶大な人気を誇る超絶美少女アニメ【マジカルパンプアップユリカ】ですが、実は、彼女わ2代目なんですよ!!知ってました?初代は、【マジカルパンプアップユミコ】と言って【闇萌属性】の魔法を使い、敵をバッサバッサ血渋きを上げながら捻り潰し、笑みを浮かべながら倒すその姿に、幼いながら感動しました!!何て言ったって最終回で己の筋肉を犠牲に【たんぱく質坊や】を助けるシーンなんて涙なしでは、語れませんよ(悲)。そんな【マジカルパンプアップユミコ】のプレミアム変身セットですがななななんと!!シリアルコードが付いた完全生産限定版で【NO.99】までしかない超激レア品なんですよね!!私わたまたま......ね?ラジオの力をなんとやらで魔界中に2つとない希少な【NO.01】を......しかも【ユミコ】ちゃんご本人のサイン付きで持ってますけども......今回は、非常に残念ですね(泣)あっ!!ちなみに【ユミコ】ちゃんの肩にいつも乗っている小悪魔なんですがアレ一般公募で選ばれた悪魔で彼の壮絶な生き方に思わず涙が(泣)......(キ~ラキラ上腕二頭筋☆ミ)』ってな?そりゃぁファンとして欲しいだろ?それが無いだと――――?』



『ヒッヒッヒ~!!』

 男の気迫と今にも斬り殺されそうな殺気に、店主は札束を置いて逃げてしまった。


 辺りには静寂と園内アナウンスが流れていた。


『『本日は、当〝憎虚憎虚ニコニコ幽怨血ゆうえんち〟にご来園くださり誠にありがとうございます。当園では~お客様に楽しんでいただけるため様々なイベントをご用意しております』』


『コラッ!!〝覇将〟!!貴方が訳のわからない話をするから、怖がって逃げちゃったじゃない!!』


死死死死二人とも、そんな事よりまおうさまをびこうしないと……』


【家来達へ 我ら三獣士は魔王様の忠実なしもべである。少しばかり魔王城を留守にする。PS.お土産はプリントクッキー買ってくるからね】

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