フローラのお手紙(二)

 [そして私たちの自宅でホームパーティーを主催した時に、トムが他界してしまったことを知ってしまったエリー。そのショックが強すぎるあまりか、後に彼女は拒食症ルビを入力…を発症してしまったわ。さらにPTSDも再発してしまうほど、エリーの心も次第に病んでしまった。だけど最終的にエリーは自分の意志で立ち直る道を選んでくれて、私も心から安堵しているわ。

 

 一方ようやく癒えかけていた香澄の傷も、エリーからきつく責められてしまったことが原因でその傷口が再び開いてしまう。こう聞くと無責任に聞こえるかもしれないけど、香澄のことはもちろんだけどエリーの気持ちも分かる――だからこそ、あの時私はエリーへ何も言い返すことが出来なかったの。

 しかしそのことが原因で香澄の心身は少しずつ疲労が蓄積されてしまい、ついにはわずらってしまった。特に解離性同一性障害の症状が強く出てしまったことで、香澄の中にもう一人の香澄の人格が誕生してしまう。


 幸いなことに香澄もエリーと同じように、自分自身の意志で前を向きながら歩くことを選んでくれた――香澄は自分のことをと考えているでしょうけど、私はむしろあなたのことを誰よりもだと思っているわ。


 私がこの場で理由を取りつくろったとしても、香澄が精神病を患ってしまった事実に変わりはないわ。事の発端は私とケビンが教育実習の一環として、香澄にトムの「心のケア」を依頼したこと――そこにがあると思っているわ。

 本来なら私たち夫婦だけで解決しなければいけない問題に、香澄を無理矢理巻き込んでしまった。挙句の果てに、一途に夢を追い続けていた香澄の心を深く傷つけてしまうなんて――あなたにとって私とケビンは、ある意味最低の夫婦かもしれないわね。


 仮に私たちが香澄へ今回の一件を依頼していなければ、あなたは今頃大学院へ進学出来ていたことでしょう。そして結婚を前提に素敵な彼氏と付き合う、もしくはすでに結婚していてもおかしくないわ。


 そんな誰もが夢見る青春を謳歌おうかすべき香澄へ、私たちの勝手な気遣いであなたの人生を壊してしまったこと――何より解離性同一性障害と夢遊病を患わせしまったことによって、香澄をとして入院させてしまった事実は、どんな言葉でつくろっても許されることではありません。

 でも心優しい香澄は“それはフローラたちの責任ではありません”と言ってくれるかもしれないけど、今回の一件において――それだけは忘れないでね]

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