秘密裏に計画されたプランの内容

     『フローラが水面下で動いていた、プランの詳細について』


一 ワシントン大学の教員室でエリノアたちと別れた午後四時〇〇分ごろ、フローラはすぐにマーガレットへ連絡を試みた。そこで自分と同じ気持ちであることを再確認したフローラは、急遽香澄を救うためのプランの一部始終をマーガレットへ説明する。

 プランを聞いた当初はさすがのマーガレットも驚きを隠せなかったが、“香澄を救うにはこれしか方法はないわ”というフローラの考えに同意した。


二 ワシントン大学~ポートランドへ車で向かう途中、フローラは自宅に置いてある銃を取り出す。そこで薬莢に入っている実弾と火薬をすべて抜き取り、空砲入りの銃を隠し持つ。なお銃の使用はあくまでも最終手段となっており、それより前に香澄を説得出来ればそれに越したことはない。


三 フローラたちがワシントン州にあるレストランを出る時に、“メグ、何時くらいにトムの家へ着けそう?”という内容のメールをマーガレットへ送る。そしてフローラがトーマスの自宅に到着した午前〇時三〇分ごろにスマホを確認すると、“思ったより道が混んでいるから、おそらく午前二時三〇分~三時三〇分の間になるわ”というマーガレットからの連絡があった。

 そのことを知ったフローラはジェニファーとエリノア、およびケビンたち三人が説得に失敗した時のことを考慮する。そして三人が説得に失敗した場合において、フローラはマーガレットが到着するまでの時間稼ぎ役を引き受けた。


           『各人物への対応について』


(A) 高村 香澄……香澄を無傷で救出することが、今回のプランにおいて最も重要な点テーマとなる。当たり障りのない言葉で説得しても、香澄の心は変わらないとフローラは考えた。および香澄が何か武器を隠し持っていることを考慮したフローラは、殺傷力のないを使用することを決意。

 またという香澄のを、フローラは逆に利用した。頭の良い香澄の性格を熟知しているフローラだからこそ、今回のプランを考えることが出来たに違いない。

 実際にと香澄が冷静な判断したので、フローラが計画したプランも順調に進行した。逆に冷静さを失った香澄が催涙スプレーを噴射していたら、フローラたちが窮地に追い込まれていた。


 さらにフローラが香澄を撃つのではなく、彼女へように計画していたこともポイント。プランの途中で取り乱したジェニファーが銃をはたき落とし、それが香澄の手に渡ってしまった。しかし何らかの方法で香澄へ銃を渡す予定だったこともあり、フローラにとってはむしろ好都合だった。

 そして空砲入りの銃を手にした香澄が「香澄B」を殺害し、香澄本来の性格「香澄A」を呼び戻す必要があった。多少強引な方法であったものの、香澄を救うにはこれしかないとフローラは判断する。

 なのでフローラもまた心を鬼にするといった形で、命がけで香澄を説得した。


(B) マーガレット・ローズ……この日はマーガレットにとって心から待ち望んだ日なので、自分の元には絶対来ないだろう――という香澄の心理をフローラは逆手に取った。その意外性を利用することで、という演出をより強固なものにする。

 だがそれはマーガレットに長年の夢を諦めてもらう――という残酷な選択肢でもあった。なのでマーガレットが協力してくれない可能性も考慮していたフローラは、彼女抜きで香澄を説得することも計画していた。


 なおサクラメントからポートランドまで、マーガレットはタクシーを使用した。ちょうどマーガレットがタクシー利用前にフローラへ電話した時に、“その子の身分は、AMISA職員のフローラ・S・ハリソンが保証します。そしてサクラメントからポートランドまでのタクシー費用は、AMISAへ全額請求してください”と対処してくれた。

 突然のことで最初は戸惑いを隠せなかったタクシードライバーだったが、フローラの名前、およびAMISAという組織の知名度はアメリカ国内で高かったので、彼女の言うことを信じてくれた。


(C) ケビン・T・ハリソン……ケビンは荒っぽいことや争いごとを好まないなので、詳細を話すと強く反対される可能性を考慮した。同時に詳細を説明する時間がない、およびマーガレットという協力者が得られたこともあり、フローラは秘密裏に動くことを決心した。


(D) ジェニファー・ブラウン……純粋で優しい性格かつ香澄を姉のように慕っていたことを知っていたため、ジェニファーにその重荷を負わせるのは無理だと判断した。同時にジェニファーはことを、フローラは知っていたことも関係している。


(E) エリノア・ベルテーヌ……自分の過去を乗り越えたばかりのエリノアにとって、プランの詳細を知るや否やを懸念した。同時にPTSDなどの精神病を患っていたことも踏まえ、これ以上エリノアの心に重荷を背負わせたくないという、フローラの優しさも関係している。

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