唯一残された打開策とは!?
ワシントン州 某レストラン 二〇一五年八月二四日 午後九時〇〇分
先ほどジェニファーのスマホが受信したメッセージの送信者は、やはり香澄だった。香澄の決意とも取れるメッセージを受け取ったジェニファーは、恐怖のあまり体が身震いしている。
一方香澄からのメールを確認したエリノアもまた、ジェニファーと同じく落胆のため息を吐く。一種の脱力状態となってしまい、エリノアとジェニファーの心情はまさに“どうすれば良いのか分からないわ”といった、一種の責任放棄に近い状況にあるのかもしれない。
それはエリノアとジェニファーの前の席に座り、香澄からのメッセージを確認したケビンとフローラも同じだった。双方ともに手で顔を覆いながらため息を吐いていることから、ケビンとフローラもまた香澄の症状を軽く受け止めていたと自責の念にかられてしまう。
一同は急いで香澄へ連絡を試みるが、案の定彼女はスマホの電源を再度切っているようだ。
しかしだからと言ってここで立ち止まっては、エリノアたちにとって何の解決にもならない。特にエリノアとジェニファーの二人については、今までにないほど心労が蓄積されている。そんな彼女たちを救うためにも、ケビンとフローラの二人が率先して舵取りをする必要があるのだ。
だが香澄が送ってきたメッセージを詳しく読み込むことによって、ケビンとフローラはある事実を発見する。そのことを大きく落胆しているエリノアとジェニファーに対し、
「エリー、そしてジェニー。君たちが落ち込む気持ちも分かるけど、ここで悔やんでも状況は何も変わらないよ!? むしろカスミの親友である二人がここで
ケビンは必死に二人に元気を出すよう励まし続ける。
「…………」
そんなケビンの問いかけに答える気力すらないのか、まるで貝殻のように口を閉ざしているエリノアとジェニファーの二人からは、何も言葉が返ってこない。
エリノアとジェニファーの精神も限界かと思われていた中で、一人難しい顔をしているフローラがこの状況を打開策を持ちかける。
「確証はないけれど、私なりに香澄の心情を読み取ってみたのだけど……みんな、興味ある?」
「えっ……ふ、フローラ、それ本当ですか!? 早く聞かせてください」
「は、早く教えてください、フローラ。一体香澄は何を思っているんですか!?」
それはまさに地獄に仏とも呼ぶような、救いの光だった――フローラの言葉を聞くや否や、これまで青白かったエリノアとジェニファーのまなざしに一点の光が灯る。血眼になってフローラへ問いかけるのだが、
「そ、それは今から説明するから……二人とも、まずは落ち着いて!」
興奮気味のエリノアとジェニファーと二人を優しくなだめる。
そしてエリノアとジェニファーの二人が落ち着きを取り戻したことを確認したフローラは、香澄が置かれているであろう状況を語りはじめる。
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