30、クラリック殲滅作戦

 時   二〇二五年十月十九日(日)正午前

 場所  帝都、国家議会対策評議会委員長執務室



 路上に着陸した小型ローター・ジェット戦闘ヴィークルによって交通が規制された。永田町と霞ヶ関周辺を囲み防空バリアが張られている。周辺道路に、一般ヴィークルも人もいない。

 配備されたランチャー・ヴィークルの上で、迎撃用高性能小型ミサイルが薄曇りの空をにらみ、周囲を水陸両用装甲ヴィークルが警備している。


「八重洲と丸の内の連中は?」

 執務室の洋田評議委員長は、端末のディスプレイに現れた映像を見た。

 ディスプレイの隅に、地球防衛大臣の清州地球防衛軍総司令官が現れている。

「予定通りカプセルに捕獲した。意識思考探査と思考記憶探査をカプセル内で行う」

 捕獲したクラリックは、装甲搬送ヴィークルの球状磁場カプセルに捕獲し、地球防衛軍関東師団、宇宙防衛隊入間基地内の、時空間管理部へ移送し、巨大な球状磁場カプセルに幽閉する。

 クラリックを球状磁場に捕獲するのは、省吾たちを狙撃したクラリックの狙撃銃を分析して得た結果から導いた理論だ。


「芳牟田と近藤はどうした?河本と村野は?」

 芳牟田は大政同志会の総裁だ。

「四人とも所在不明だ。芳牟田がヨヒムだ。近藤はヨヒムの側近のレド。河本と村野は、レドの部下のコラドとリノックだ」

 清州が答えた。


「ヨヒムの親衛隊系列か・・・。大政同志会は?」

 投資顧問会社、大政同志会は、行政機関に対抗するための、経済界の裏組織だ。象徴が経済という欲は、右翼ではない。

「存続してる。特務コマンドの映像を見よう」

 清州の映像が隅に引き、ディスプレイに、広いオフィスが現れた。スーツ姿の男女が働いている。

「ネオテニーだけだ。どうする?」

 清州は洋田に訊いた。

「すべて君に任せる」


「了解した。古田指揮官、予定通り、組織を公的機関に変えてくれ」

「わかりました」

 オフィスの四隅に、フル装備のバトルスーツに身を包んだ宇宙防衛隊コマンドが、数名ずつ立っている。

 オフィスの者たちにコマンドは見えないらしく、いつものように、証券取引や金融取引の作業を行っている。


 古田特務コマンド指揮官は、右側頭部のスカウター端末に、オフィスの緯度と経度と高度と現地時間を入力し、上空に静止している三機の情報収集衛星に、思考記憶探査を指示した。

 三機の情報収集衛星が、同時到着の特殊電磁パルスを発射し、オフィスが一瞬に、電磁パルスの干渉波で薄紫の光に包まれた。

「完了した。ただちに移動する」

 ディスプレイからコマンドの映像が消えた。



「長時間の送信は奴らに気づかれる。特務コマンドの送信を待つしかない・・・」

 清洲は洋田の考えを理解して言った。

 ニオブの思念波を使えば、梨田と本間と佐伯の状況は一目瞭然だが、芳牟田に知れる。地球防衛軍と検警特捜局が装備する通信機器は、軍需企業で作った物ばかりだ。通信機から芳牟田は、我々の状況を知る。今は我々が独自開発した通信システムの映像を、待つしかない・・・・。


 その時、ディスプレイの隅に緊急退避信号が現れた。

 日本上空の情報収集衛星が、帝都に向けて発射された十個の飛行体をレーダー捕捉している。

 ただちに、政府周辺に配備されたランチャー・ヴィークルが、迎撃ミサイルを発射した。


「来たぞ。迎撃ミサイルを発射した」

 ディスプレイの清洲が言った。


 評議委員長執務室に緊急アラームが鳴った。

 新任の国家議会対策評議会官房長官が、執務室に跳びこんできた。

「評議委員長!地下へ非難してください!首都に向けてミサイルが発射されました!」


「わかりました・・・」

 洋田は官房長官に笑顔で答え、ディスプレイを見た。

「清州、地下へ非難すべきか?」


「心配するな。富士上空で迎撃する」

「発射点は?」

「G市O区とT市の二か所、大東重工だ・・・。

 中部師団がただちに総攻撃した」


 攻撃したのは地球防衛軍中部師団宇宙防衛隊だ。

 大東重工を制圧するのにどれくらいかかるのか、と洋田は思った。


「梨田は必ず東重工を制圧する」

 ディスプレイの清州は笑顔を見せた。

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