15、洋田副総理

 時   二〇二五八月十八日(月)夕刻

 場所  帝都内、某ホテル、最上階特別室



 副総理の洋田は、帝都内某ホテル最上階特別室の窓辺にたたずんで言った。

「公務員特別措置法を改正し、警察と検察を一元化してオープンにする。

 お前はこの理由をわかっているはずだ・・・。

 現在の首都圏の一般家屋を集積高層建築化し、低層階に中小企業、商店を入れ、鉄道道路などの地下機能を廃止する・・・。

 震災による被害が復興したら、首都機能を内陸へ移動する・・・。

 経済的機能を優先して、東北大震災と東海大震災から何も学ばないのは、お前くらいだろうな・・・」


「財界と政界の連絡が粗雑になるぞ!

 国家政策が国家利益を産まなくなるぞ!

 誰の考えだ?内閣ブレインか?そいつらはどこだ?

 連絡装置があるだろう?ここに呼べ!

 入れ知恵した奴の首をへし折ってやる!」

 経済統合会会長の倉本は、ソファーの肘掛を握りしめ、怒りを抑えた。


「企業利益に癒着した政策をやめ、安全な国民生活のための政策を行うだけだ。

 国民のための政策を行うのに、企業経営者の意見を聞くより、国民の意見を聞くのが本筋だ。

 それとも、お前が国家の支配者で、国民の意見を聞く必要などない、と言うのか?国民と敵対しても、企業は存続できる、と思っているのか?」


「・・・」


「お前は日本を中国の属国にする気か?

 二〇一〇年、お前は、中国政府と中国経済界を怒らせまいと画策し、政府に、尖閣諸島に侵入した中国漁船の件を隠蔽させた。

 これは事件を暴露した自衛官を処分する問題じゃない。事件を隠そうとした政府閣僚と官僚、そうさせるように官僚と閣僚を恫喝したお前の国家反逆罪だ。処分されるのはお前と閣僚と官僚だ。

 そのお前が、翌年、福島原発を再稼動させるため、与党と野党と官僚と電力会社に圧力をかけた。

 そしてまた、浜岡原発に関して同じ事をやっている。


 お前は国家をつぶす気か?

 お前に言っておく。お前は経済界の大物じゃない。独裁的に経済界を動かそうとしているだけだ。経済界にしろ政界にしろ、お前が出てまとまった話はない。球界を動かそうと、日報新聞の田辺を通じて球界に圧力をかけたのがいい例だ。

 皆がお前や田辺の歳を考え、一目置いているふりをしているだけだ。

 それに気づかぬお前たちは、マスコミに自分のまぬけを示しただけだ・・・」

 そう言って洋田は窓外を一望した。

 ゲリラ豪雨に隠れ、東海地震に耐えたこのビルの最上階から北関東一帯は見えない。


 倉本はソファーの肘掛けを握りしめ、怒りでふるえている。


 倉本を無視したまま、洋田はつづけた。

「自分の国を創るがごとく、とかく経済界人は群れたがる。港湾がある都市に、必ずといだっていいほど大手企業の施設とコンビナートがあり、実質は治外法権だ。

 お前がそれらをお前の国家と思うように、経済に対する忠誠と誇りと寄与はお前たちものだ。

 だが、国家は国民のものだ。忘れるな!」

 洋田は力強く床を指さした。

「ロシアの役人は、ロシア政府に媚びる日本の経済界を見て、日本政府が腰抜けだ、と判断した。ロシア国旗を汚した、などと抜かし、内政干渉して、北方領土を我が物顔で歩きまわっている。

 いつまでも経済優先の懐柔策を取って、自国防衛をせずにいれば、他国から侵略される。

 パンダごときで舞いあがっているお前たちにも、国家にも、マスコミにも飽きれる・・・」

 洋田は倉本を見すえた。

「よかろう。ブレインとの特殊通信装置はあるよ。

 彼らを今すぐSPと機動隊つきでここに呼ぼう。

 ただし、私のSPがここでの映像を記録しているのを忘れるな」


「お前を政界から引きずり降ろしてやる!」


「また、恫喝か。そんなことを言えるのは今だけだ。経済界は嫌でも我々に従わねばならなくなる。覚悟しておけ」


「くそっ」

 倉本は怒りを抑えてソファーから立ちあがった。

「おぼえていろよ!」

 そのまま部屋を出て行った。


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