8、変化

 時   二〇二六年六月十一日(水)

 場所  N市T区、自宅



 Y市のY歯科クリニックから、一年経過時の歯科検診案内がとどいた。引っ越したばかりで、N市にかかりつけの歯科医院がないため、私はY市のY歯科クリニックへ行った。

 昨年、私を担当した歯科衛生士はいなかった。知った顔ぶれは二人ほど。他は年配者もいるが新人のようだ。

 私は昨年の歯科衛生士を思いだし、はじめて胸がキュンとなる感覚を知った。

 彼女は私くらいの身長で細身。細面でマスクの外からわかるほど鼻筋が通って高かった。左の目尻から頬に小さなほくろが三つ、正三角形に散ばっていた。少し離れた、目尻の下がった大きな眼が印象的だ。他の患者を治療する時、左の二の腕にもほくろが三つあるのが見えた。遠くから見たマスクを取った彼女は、唇が薄く口角があがっていた。

 歯科検診結果を説明する彼女が傍にいるだけで、すごく熱いのを感じた。もう彼女に会えないのか・・・。


『被災地を視察した震災復興担当大臣が、

「津波に襲われればマッチ箱のような家はつぶれて当前だ。東日本大震災から何も学ばなかったのか?」

 と暴言を吐き、二日後に辞職した。

 東日本大震災後、福島県知事を見下した暴言を吐き、その事を報道したら地元テレビ局を潰す、と脅したあげく、翌日、辞職した、あの東日本大震災の震災復興担当大臣と同じだ。

 今回も、現内閣に批判的な立場の人物が、懐柔策として総理から依頼され、断れずに大臣になったと言われている。大臣は、大臣になって権力を得たと思っていたのだ。

 辞任する機会を狙っていた大臣の、思わく通りになったのかもしれないが、更迭と変わらない。

 国会議員はこんな馬鹿ばかりか?総理は、党内反対勢力を大臣に取り入れて不満分子を吸収しつつあると踏んのだろうが、自分で首を絞めてしまった。これでは野党に追求の種をばらくことになる。これで、過去の政権同様、現政権も終わりだ』


 復興担当大臣が辞職を発表した日の午後、T通りに停車した街宣ヴィークルから低周波が響いてきた。防音された家で感じるのだから、外は大音量だ。

 オープンキッチンのハッチタイプの窓をわずか開くと

「政府のエネルギー政策を批判するな」

 と怒鳴り声が響いた。

 大政同志会から通信が来なくなくなって安心したら、今度は街宣ヴィークルだ。

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