第105話 真っ赤な涙なんか大っ嫌ぃ!




「。。。ア、レ?。。どぅ、し。。。。。」


「。。。スミちゃんごめんな」


「。。。パイ、?。。れは。スミ、は、せ。。パイの、、りに。。。。。」


「おやすみ、スミちゃん。。。」


「。。。。。せん、パ。。。」




 噴き出した真っ赤な噴水の真ん中に見えたのは、紫色コバエのお胸をズブリと貫いた氷の手。その酷く冷んやりと冷たそうなお手々は、ナイフが小さい娘の頸を切り裂くみこがみこパンチするよりも速く、紫色偽物心臓を潰した。

 ドバドバと真っ赤な涙を大量に垂れ流す紫色の魔法少女しつこいストーカーは、自分のお胸を貫いたお姉さんの冷たい腕の中、死出へと誘う口付けおやすみのキス悪夢に沈む眠りに堕ちる


 どうしてかな。。。?

 みこは紫色コバエの最期に頬を伝った真っ赤な涙が、何でか羨ましかった。何でかは、分かんないけど。。。とても羨ましかった。




「。。。久しぶり、やね?。。。元気、しとった?」




 お姉さんは紫色の魔法少女動かなくなったお人形をソッと座らせると、哀しそうな笑顔をみこへと向ける。。。

 そしてピキピキと、みこが斬り落とした足氷の魔法で作った義足で床を凍らせながら、ゆっくりとみこの方へと歩いて来る。




「みこちゃん?みこちゃんなんやろ?本当は、怪人に操られてなんか無いんやろ。。。?」


「。。。」




 みこの方へ振り返ったお姉さんは、泣いていた。。。真っ赤に染まる氷の義手じゃ無い方のお手々をみこに伸ばしながら、ピキピキと泣きながら近寄って来る。




「お姉さんには判るょ。。。こない見た目は変わってしもうても、みこちゃんはみこちゃんやって。。。」


「。。。ないで」


「みこちゃん」


「来ないで!!!それ以上来たら殺す!」




 みこはもう、魔法少女は信じないには騙されない!。。。だって、魔法少女お姉さんは!魔法少女は、嘘吐きだからお姉さんは、魔法少女だから




「みこちゃん」


「来ないでって言ってるでしょ!!!」


(バキ、バキバキバキ!!!)




 と音を立てて、お部屋に穴が空く。

 一個、二個、三個。。。魔法少女ウザい眼鏡を狙ったはずの魔法が、全然当たらない。。。全部が全部、眼鏡のメガネじゃ無くて床や壁、天井に向かって逸れて行く。どうしてかなんて知らない!ちゃんと狙ってるはずなのに、どういうワケかみこの黒い必殺の魔法はお姉さんに当たらない。




「会いたかった。。。ずっと、ずっと。。。みこちゃ」


「嘘吐き」




 お姉さんのピキピキは、みこが魔法のを首に突き付けた所で漸く止まった。どうして魔法が当たらなかったのは知らない!知らないけど、当たらないなら絶対に当たる魔法物理にすればいい。。。

 みこはもう、絶対この魔法少女お姉さんには騙されない!




「。。。嘘や無ぃょ?お姉さんはホンマにずっと、ずっとみこちゃんに会」


「だったらどうしてお迎えに来てくれなかったの!!!」




 自分でもどうしてそんなこと言ったのか分かんない。みこはこのお姉さんが嫌い!

 だからお迎えに来て欲しいなんて思った事は一度も無い!お迎えを待ってなんかもいなかった!!!

 なのに、じんわりと霞む右眼がイラつく。カタカタと震える、杖を持つ右手がイラつく。そして何より、目の前のお姉さんの哀しそうな笑顔が一番ムカつく!!!!!




「ごめんな。。。」


「ウルサイ。。。」


「ほんまにごめんな?」


「ウルサイウルサイウルサイウルサイ!!!」


「みこちゃん。。。」


「ウルサイ!それ以上みこに近寄らないで!!!!!!」


「みこちゃん」


「ウァァァァァ!!!!!」




 みこは振りかぶったを、振る。

 これまで何回も何十回もヤってきた様に、大嫌いなお姉さん魔法少女無防備おバカな首を目掛けて、何でも切り裂く魔法のを横凪に振る。。。みこはもう、お姉さん魔法少女になんか騙されない!!!


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