第60話 キスなんか大っ嫌ぃ!



「。。。お姉、ちゃん?」



 どうしてそう感じたのかなんて知らない。

 それでも白い狐さんに壁まで弾き飛ばされても、大きなお手々でお顔を潰されそうになっても。

 みこはこの狐さんのこと、ブチ殺どうにかしたいなんて少しも思わなかった。。。


 メシメシと、みこが躱した狐さんの大っきなお手々は壁にめり込んでいる。きっとコレが、壁ドン?とか言うヤツなのかな?

 確かにこんな風に!てされたら、死な墜ちない女の子は居ないかも知れない。。。狐さんの壁ドンは、それくらい激しい必殺押しの一手だった。



「グルルルルルルル。。。」



 低い唸り声をあげながらみこを睨む狐さんは、クンクンとみこの首辺りの匂いを嗅いでいる。クンクンてされる度、生暖かい風がブワッ!とみこのお顔にかかるのはちょっぴりくすぐったい恥ずかしい。。。

 それでもみこはみこはね?本当はやっぱり反撃しようなんて思えなかった猫派だけど全然イヤじゃ無かったよ?


 ポタポタ、ポタポタと。

 グルルルルと鋭い牙を剥きながら、みこをクンクンする狐さんの大っきなお口からは、赤色の混じった涎が垂れている。

 だけど狐さんは、床に転がる汚ない生ゴミ綺麗な赤色を食べてはいい。きっと噛みちぎっただけ。だって狐さんからは、臭くて臭くて堪らないあの怪人生ゴミ特有のムカつく腐ったいがしないから。。。



「。。。お腹が空いてるの?」

「ガウ!!!グルルルル。。。」



 みこがソッと狐さんのお顔に手を伸ばすと、狐さんは嫌がる様に後ろに飛び退いてしまった。

 やっぱりみこは、狐さんが動く度に漂うこのいいいを、知らない知っている


 この甘い匂いを知ってる知らないけど、知らない知ってるの。。。


 だから、狐さんに避けられるのはスゴく寂しぃ。。。



「お姉ちゃん。。。なんでしょ?」

「グルルル、ガゥ!!!!」


「痛っ。。。」



 さらに近寄ろうとしたみこは、狐さんの大きなお手々に拒絶払い飛ばされてしまう。

 障壁さえも張れなかったそれが悲しくて辛くてみこは、そのまま壁に身体を強く打ち付けて床に倒れてしまった。


 動けない痛いょ。。。そして身体は動哀しいょ。。。かない。。。


 みこの倒れる回廊の床はヒンヤリとしていて、ちょっぴり気持ち良かったりもして。それに、さっきぶつけたおデコの辺りがスゴく痛床に拡がる赤色がとても綺麗だった。かった。



「ウッ!。。。ぉ姉ちゃん、苦しぃ」


「グルルルル」



 倒れたみこを、追い撃ちする床に圧し付ける狐さんのお手々が重い。

 ミシミシ、ミシミシとお胸からは骨が軋む音もする。。。だけどお姉ちゃん?みこは、何もしないよ?


 ブッ飛ばしたり、バラバラに切り刻むなんてことはしないょ?みこはただ、お胸を圧さえてる狐さんのお手々にソッと触れてみたいだけ。。。。。。


 ほらね?やっぱりそうだ♪

 やっと触れた狐さんのお手々は、汚い怪人達の血でお掃除したから真っ赤に汚れてしまってはいるけど、思ってた通りに温か優しかった♪

 みこにはね、コレだけで判るょ?



「。。。喰べても、ぃぃょ?」



 どんなに姿が変わろうが、痛いことや意地悪らしく無い事をされてもみこにはちゃんと判る。



「グルルルル。。。」



 この匂いを、優し温かさをみこはちゃんと憶えてるもん♪



「ぉ姉ちゃん?みこを喰べてもぃぃょ?」

「。。。。。。ガル、ゥゥ。。。グルル、ゥゥゥゥ」



 グルルルルと逆立っていた狐さんの真っ白な毛並みは次第にサラサラと短くなり、鋭く剥き出しだった牙も段々と萎む。そしてみこを床に圧し付けていた大きな狐さんのお手々は、いつものみこが大好きなあのの手へと戻っていく。。。


 赤い浴衣に白い狐さんのお面を着けた。

 みこがってるけどらない、大好きなおちゃん。


 姉ちゃん大好きだょ?は、だぁれ?



「ゥゥ。。。」



 義姉ちゃんお姉ちゃんは、泣いている。お面を着けてたって、みこには判る。

 だってみこはお姉ちゃんの妹で、姉ちゃんと同じだから。。。同じに、心を喰べられてしまっているから。。。


 決して満たされない寂しさ埋まらない空虚な闇

 泣いても啼いても喰べても食べても流しきれない無くならないその後悔を、みこが埋めてあげられるのなら私は喜んで義姉ちゃんお姉ちゃんのエサになるに全部をあげる


 だってみこは、義姉ちゃんに助けてもらったからお姉ちゃんが大好きだから。。。


 みこは泣いてる義姉ちゃんのお面を取ってお姉ちゃんのお顔に手を伸ばし、キスをした。

辛くて哀しい甘くて切ないありがとうサヨナラのキスをした。。。






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