三章幕間 喪うモノ、得るモノ①



「思う存分楽しんで欲しいっス♡」


「チッ。。。」



 今出来る万全の防御を固めたみこに、紫色の魔法少女しつこいゾンビバエは一層不敵な笑みを向けた。まるでみこの準備が整うのを待っていたみたいにも見える、その気持ち悪い微笑みムカつくニヤリ顔はスっごく目障りでイライラする。


 みこは痛いのが嫌い。

 焦ら意地悪されるのも嫌い。

 調子に乗られるのなんか、もっと嫌い!


 フン。とっとと撃ちなさいよ、紫色ストーカーのクセに!!!

 但しその後には、アンタなんか微塵粉斬りの塵炭にしてるんだからね!


 。。。そんな決意殺意に満ちた眼差しを向けても、紫色ストーカーゾンビ不敵な笑みをやめなかった気持ち悪いままだった。そればかりか、楽しくて愉しくて堪らない♡そんな感じのお顔をしている。




「。。。エッ!!!!?。。。ウソ?ねぇ、止めて?

 ヤメテよ!!!ダメーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」




 紫色の魔法少女陰湿なストーカーゾンビが、不気味にキモく微笑みながら掲げる紫電の魔法。バチバチと嘶くソレは次第にその姿を雷の紫龍へと変え、まるで生き物本物みたいな咆哮をあげる。

 みこが紫色の不敵な微笑みムカつく違和感理由正体に気付いたのは、ソレが放たれる直前。紫色ストーカーが、骨の飛び出したグチャグチャの右腕を振り下ろす瞬間だった。。。



 あの煩く咆える魔法の矛先紫龍の顎門は、みこに向けられてなんかいない!!!紫色ストーカーの狙いは、端から私の後ろのお姉ちゃん一番大切な人!!!



 みこに残る選択肢出来たことは、万全に備えた全部を速さに換えてその射線上に身を投げ出す事くらいしか無かった。でもそんなみこの身体捨て身の盾は、紫電の魔法雷の紫龍を止める事も逸らす事も出来ず、ただ容易く貫かれてしまっただけ。。。

 魔法が貫通したお腹の辺りが熱くて、全身がビリビリとスゴく痛い。


 。。。嫌。もう一人ボッチは、ヤダょ。。。。。。




 夢の終わり。

 雷の魔法紫龍に弾き飛ばされ、海へとただ力無く落ち逝くみこが最後に祈りを込めながら目にしたのは、紫龍の顎門が右腕片前足を失った魔法少女ゴキブリ諸共、私のお姉ちゃんを呑み込む最悪な瞬間。

 紫龍が消えた後、そこには風に吹き攫われる魔法少女の残骸僅かな塵炭以外何も残ってはいない。。。手遅れ、だった。。。。。。

 私は、お姉ちゃんを守れなかった!大好きなお姉ちゃんをまた!!!。。。護れなかった。




「キャッハハハハハハハ♪いい気味っス♡

 どうスか?目の前で大切なモノをぶっ壊グチャグチャにされる気分は♪

 悔しいスか?憎いスか?スミレのこと、もっとグチャグチャにしたいブチ殺したいっスか?♡



(紫色に捕まった私は、髪の毛を掴まれてムカつく笑い声と気持ち悪い顔のアップに晒されている。。。でもみこにはもう、ブチ殺す振り解く力も残ってはいない。

 こんなムカつく光景を最後に、この胸くそ悪い悪夢は終わる。本当に最悪で最低で、嫌な夢。自分で自分をブチ殺したくなる様な、そんな夢。。。)



 アァ?寝堕ちとか、何甘えた事してんスか?

 スミレの受けた屈辱は、こんなもんじゃ全然足り無いんスよ!

 オラ!泣けよ!叫べよ!ロリはロリらしく、ワンワン泣いて苦しめよ!ホラーーーーーー!!!」


「。。。ウッ!」




 グチャグチャ、ヌチュヌチュと紫色ストーカーは私のお腹に空いた傷を虐める。。。夢なのに、スゴく痛くてスゴく苦しくて、みこの夢なのに紫色をブチ殺すワル者を懲らしめることも出来ない。


 でもね、コレは夢なの♪絶対そうに決まってる♪




「その調子っス♡スミレは、最初からアンタのことを滅茶苦茶グチャグチャにしたかったんスよ♪

 アンタはボクの先輩を誑かしてくれたんス。。。だからホラ、もっと血吐け!!叫べ!ククククク♪楽に死ねるなんて思うなっスよ?このクソロ、



(だって紫色ストーカーゾンビに虐められてるみこを助けてくれたのは、)



 。。。イッたいスね?

 いきなり現れて、スミレの左手ごとロリッ娘掠めるぶった斬るとか何スルんスか。。。?先輩」




 みこの大好きなおちゃんだったんだもん!フフ♪夢で。。。本当に、良かっ。。。た。


 みこの悪夢は、ここでお終い。

 だからみこは、この夢に続きがあるのなんて知らない。そもそもお姉ちゃんが生きていたハッピーエンドを迎えたのだから、悪夢のきなんて観る必要無いじゃない♪?





 ************





「スミちゃん。。。堪忍な?」


「本当に言う事聞かない先輩っスね?♪大人しく待ってて下さい。そう言ったじゃないっスか。。。。。。そんなに、そのロリッ娘の方がいいんスか?

 やっぱり、スミレじゃ、ダメなんスか。。。?なんで?どうして!なんでロリッ娘にばっかり優しくするんスか!!!


 少しは、スミレのことも見てよ!!!スミレのことも。。。愛してょ?

 なんで。。。?なんで、なんで先輩は、スミレを、愛して、くれないの。。。。。。?



(フェ~~~~~~~ン。。。)



 プフ♪なぁんて♪スミレが泣くとでも思ったっスか?。。。で?オタク、何者っス?

 まさか、その程度の擬態魔法でスミレを騙しきれるとでも思ってたんなら、魔法少女を狩る者異端審問官も舐められたモンスね〜?♪


 だいたいボクに眼鏡ッ子お姉さんサファイア・アイシクルの真似して近づくなんて、いい度胸にもほどがあるっス♪

 普通の魔法少女なら気付かないだろうスけど、先輩のとオタクのじゃタユンタユン♡具合が全然違うんスよ、タユンタユン♡が。


 。。。さて、オタクが誰かは知らないっスけど。ブチ殺される覚悟は出来てんスよね?偽物さん♪」



「お気に触ったのなら、申し訳ありません。ですがコレは、致し方のないこと。

 貴女様の眼に私がどの方のお姿として映っているのかは存じませんが、私にはどうすることも出来ないのです。何卒ご容赦を、」


「アァ?訳の判らないことをペラペラと。。。大体ごめんなさいで済むんなら、この世界に魔法少女正義の味方なんて要らないんスよ?判るっスか?偽物」


「仰ることは重々承知しておりますが、私は見る方のが真に求める者。

 即ちその方が一番する者を、この醜き身の上に写してしまうのです。コレに私の意思などは介在しておりません。故に先も申しました通り、致し方ないのでございます」


「え!?そんな一番愛するだなんて♪

 そりゃぁスミレが先輩ラブ♡なのはぁ、周知の事っスけどぉ♪他の人に改めて言われるとちょっと照れるっス♪


 けどいくら話が判るからと言って、偽物と仲良く出来るほどスミレは優しくはないッスよ?」



「こちらこそ、貴女様方と事を構えるつもりは毛頭ございません。

 ですが、我らが母なるがこの方のをご所望にございますので、えにあがった次第。

 出来ればこのまま、手をお引きくだされば幸いです」


「。。。手を引け?キャッハハハハハハ♪

 ア~、バカも休み休み言って欲しいっスね♪。。。て言うか、偽物さん怪人ソッチ側だったんスか。しかもそのクセ、スミレの手をブッタ斬ってソッチから仕掛けておいて、随分な注文ッスね♪

 そもそもたったこれだけの手勢で、このスミレを仕留められるとでも思ったんスか?


 まったく、ロリッ娘にしろ怪人どもにしろ、本当スミレのこと舐め過ぎっス。アンタには悪いっスけど、流石にムカついたんでこの場の全員殺させて貰うっス♪」



 虫カゴを呈する魔法の消滅に合わせ、現れた怪人達は100や200では無い。

 空を覆い、海を埋め尽くすほどに周囲を囲む彼らを目の当たりにしようとも、片腕を失ったハンデを負った紫色の魔法少女から、微笑み不敵さが消えることなどありはしない。





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