二章幕間 魔女狩りの前触れ




 登り慣れた鉄塔の上。

 久しぶりに独りで登った天辺は閑散と、お決まりの場所は冬も間近に迫った独りで居る所為か昨日よりも寒くいつもより広く感じる。


 お決まりとは言ったけど、別にこの場所に拘りとかがあるわけじゃない。

 けれど何と無くいつもこの場所に登ってしまうのだからあの妖精の言った通りになったみたいでこれはもう癖かな?ちょっとイラつく

 少しだけ余裕を持たせる仕方なくスペースを空けてやるのも、癖になりつつあった私の側。いつも高い恐いと言いながら、私の腕にしがみ付いて腕の血流を止めようとしていた可愛い妹お邪魔虫は、もう居ない。。。




「。。。見つけた」




 そんな右手に、本当にだけの手持ち無沙汰を感じつつ。魔法協会のある方向、丁度此処と協会の真ん中位な海の上に4匹の魔法少女ゴキブリどもの気配を捉えた。


 思ったよりは、そう遠くない。て言うかむしろ、遅いくらいかも?

 。。。好都合と言いたいところだけど、どうにもホイホイの臭いがプンプンする。私の事、待ってくれてる舐めてるのかな?♪

 


 私はお望み通り、気配も隠さず直ぐに跡を追う。

 最短最速、自分の感覚よりも遥かにスピードの上がっていく身体は、しくかな街並みをどうでもいい気持ちいい位にグングンと置き去っていく。


 身体が軽い♪邪魔な私を縛るモノは、もう何にも無いし♪

 今までに無いくらい気分も良い♪


 あの娘の魔力を全部奪ったお陰かは判らないけど、チビの魔力は今まで喰らった他の誰のモノキスよりも私の身体に良く馴染んだ甘くてとても美味しかった。。。


 大丈夫、このスピードならきっと直ぐに追い付ける。


 待っててねお姉ちゃん?♡

 絶対、一人も逃がさない皆殺しにしてあげるんだから♪




 ************




 時を同じく、魔法協会本部地下。

 乙女達の花園シークレット・ヘブンと呼ばれるこの場所も、普段の静けさとは打って変わって慌ただしく。鳴り止まない非常ベルは、敵の襲撃を報せる類のモノである。しかし、魔法少女の総本山とも言うべきこの場所にわざわざ殴り込むバカなど居るはずも無い。



「一体何の騒ぎっスか?煩くてゆっくり寝ても居られないっス。。。」


「ス、スミレさん!」


「丁度いい所に!急にサファイア対象が暴れ出して、我々では手に負えなくて!!!」



 警備の者達のたかりの向こう、壁を伝いながらゆっくりと彼女は外を目指していた。

 失ったはずの手足を凍て付く氷で補い、撃たれる山の様な麻酔の弾丸を消えかけの障壁でどうにか防ぎ。今にも倒れそうな足取りで、それでもなお一歩でも前へと進む。。。



「もう障壁は消える!撃て!撃ち続けろ!!!」


「。。。オイ、ボクの先輩に何してんだ?」


「ヒイイイイイイイイ!!!」


(パン!パパン!。。。パン!)


「。。。。。。。。。。」


「やれやれ、あれほど丁重に♪って言っといたじゃ無いスか?まったく、これだから男ってヤツは。。。」




 パンパン!と鳴り響いていた乾いた音。

 それを止めたグチャ!!!という鈍い音は、言うまでもなく彼女の怒りを買ってしまった代償の印。。。。。。




「せ〜ん輩♪な〜にしてるんスか?」


「ハァ、ハァ、ハァ。。。スミ、ちゃん?」


「そおっス♪先輩の可愛い可愛いスミレっス♪」


「スミちゃん!!!お願い!ウチを外に、あの娘の所に連れてって?」


「ハァ?急にまた、」


「お願い。。。さっき、あの娘に掛けた魔法がえた気配がした。きっとあの娘の身に、何か起きたに決まっとる!だからスミちゃんお願い!!!ウチを、外に、連れ。。。」


「あ!先輩!!!」


「おね、がい。。。」


「。。。ま、まったく先輩は、仕方ないっスね〜♪分かったっス!

 フラフラな先輩の代わりに、スミレが様子を見て来るっス♪」


「スミ、ちゃ」


「あっと!文句は認めないっスよ?

 嫌ならこの話は、お終い。ボクが先輩を拘束してそれで終了。どうする?」


「。。。分かっ、た」


「じゃぁ代金は、先払いでお願いするっス♡」


「。。。ン♡ア。ダ、ダメ。。。これ、以上。。。はッ♡

 アァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。。。。。。♡」


「プハ〜〜〜♡。。。さてと、先輩のロリコンにも困ったものっスね〜♪

 。。。ククク♡心配しなくても、ちゃ〜んと先輩のお漏らし女の子の秘密はスミレが綺麗にしてあげるっス♡


 まぁだから、寝ながら安心して待ってるといいっス♪。。。。。。あの邪魔なロリッ娘の首が届くのをね?


 ククク、ククククク♪アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」




 眠りに落ちた碧き少女を抱き攫う悪魔の笑いは高らかく、彼女の背後に拡がる血溜まりに生ある者など一人も居ない。。。



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