第27話 お荷物なんか大っ嫌ぃ!




「しっぷうの刃よ、てきを切りさけ!」

『ウインドカッター!』



 小さな魔法少女チャバネゴキブリが放った風の刃は、瀕死で微動だにピクリともしない怪人の頭をようやく刎ねた。



「やったー♪先生、私にもできましたよ!ちゃんと見ててくれました?♪」


「。。。チッ」



 都合6発、うち3発は掠りもしないほど明後日の方へと飛んでいる。。。正直、才能のさの字も感じないコイツの頭も斬り飛ばしたいのだけど、今はで我慢するしかない。

 それにしても、たったこの程度の魔法でここまで喜べるのだからやっぱり魔法少女子どもは嫌いだ。


みこみーちゃん、アカンよダメだよ?」


 本当、煩くてしょうがない。。。



 ************



 あの後、私は眼が覚めると自分のお家の中に居た。

 あの会長ナメクジのお陰で、血とヨダレでベチャベチャになっていたはずの服は全身新しくなっていて、お腹にも綺麗サッパリ傷は無い。

 その代わりなのかは知らないけど。お人形が着るような如何にも趣味の悪い黒いドレスの下には、割りとお気に入りだったパンツ猫さんが失くなっていた。。。


 あのクソ虫、次に会ったら叩き潰す!!!


(ピーンポーン!)


 そんな決意を固めたところに訪ねて来たのが、この小さい魔法少女チャバネゴキブリだった。

 私は最初いつも通りにを使っていたのだけど、1時間経ってもその気配は消えることは無く。。。居なくなるどころか、玄関の前ですすり泣きまで始めたので仕方無く嫌々応対したのだった。



鮮血色の戦乙女クリムゾン三白眼の小桃プラムちゃん』



 三白眼?の意味は知らない。

 この雑魚チビの話によれば、どうやら私は頼んでもいないのに序列20位の魔法少女にされたらしい。。。別に序列順番とか興味も無いし、嬉しくも何とも無かったのだけど。



「先生本当にすごいです!あこがれちゃいます♪」



 この雑魚チビの無駄なテンションはしゃぎ様の通り、一応は最年少の二つ名持ちニューレコードなのだとか。


 まぁそんな事はどうでも良くて、それより問題だったのはこの魔法少女チャバネが持って来た魔法協会からの手紙の方だった。

 それは私に序列を与える事とは別に、お姉ちゃんの遺体の占有をと一緒に居る事を許可する条件として、



 1、魔法協会の指示には服従する事。

 2、問題行動(魔法少女の品位を落とす行為)を起こさない事。

 3、この魔法少女チャバネを指導育成する事。



 の三つを課し、従わなければお姉ちゃんは即刻回収。私の事もとして粛正する。。。という内容だった。

 どうして妹の私がお姉ちゃんと一緒に居るのに条件がいるのか?は、全然理解出来なかったのだけれど。わざわざ脅し文句まで書いてあるところが、如何にもあのクソ虫ナメクジらしい陰湿ウザさでイライラした。。。




「もぉ!先生、きいてますか?」


「。。。チッ」


「あ!待って先生!おいてかないで!」




 それから大体一週間。

 仕方無く私は、この魔法少女チャバネの面倒を見ているわけなんだけど。。。さっきも言った通り、この雑魚チビには魔法少女としての才能を全く感じない。


 最初は、魔法協会が私の見張りとして寄越した異端審問官潜入捜査官かも知れない!と警戒してみたりもしたのだけど、それだけは絶対に無いと思う。



「アスミはもう一度。。。もう一度、ママに会いたくて魔法少女になったんです!」



 とかカッコつけて言ってたくせに。

 夜中に急に泣き出すわ、暗いと一人でトイレにも行けないし、手を繋がないと寝れもしない。。。

 むしろこの雑魚チビさが演技だったのなら、私は喜んであの会長ナメクジの前で全裸になる!と断言出来るくらい、コイツは本当に子供チビだった。



「みーちゃん?そんな小さい子殺しちゃダメだよ?」



 もぉ〜、そんなに何回も言わなくても分かってる♪

 でもさ、こんなの育てて本当何の意味があるんだろうね?お姉ちゃん。




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