第19話 優しく殺すのなんか大っ嫌ぃ!




「ギャァァァァ!!!」



 ガチガチ、ガチガチと痛みに悶えながら、それでも魔獣は障壁の向こうの届きもしない私に噛み付こうとする。狂暴。。。と言うよりは、どうしようもなく飢えている。魔力が欲しくて欲しくてお腹が空いて空いて仕方がないみたいな、そんな感じ。



 着地のバランスを崩したあの瞬間、紫色の叫び声コバエのうるさい声と一緒にペラペラの障壁が私の所に飛んできた。ちょっと叩けば簡単に粉々になりそうな位弱々しいそれは、もちろん後ろの紫色の魔法少女ウザったいコバエが放ったものだった。


 何ソレ?手助けでもしたつもり?


 障壁は魔獣に触れるまでもなくの瘴気によってヒビ割れ、攻撃を防ぐどころか邪魔することさえ出来ずに砕け散ってしまう。

 ハァー。。。ねぇ、そんなペラペラ余計な大人しく待っててくれない?お世話でしかないんだけど後でちゃんと殺してあげるから



 私は溜め息を吐きながら、飛び掛かって来ていた魔獣の真っ赤な右目にお姉さんの杖氷を纏った刀を突き立てる。

 思った通り、異様に硬い面倒臭い他の部分とは違ってズブズブと鈍い音を立てながら、氷の刃は魔獣の体に深く深く突き刺さっていく。

 まったく、こんなのは教えられるキスされるまでも無いことなのに。お姉さんあのメガネてば、一体どれだけ過保護変態なんだか。。。。。。絶対あのキスは、ただシタかったなんだと思う。。。




「良かっ。。。た」


「。。。プフッ♪フフフ、アハハ、アハハハハハハハハハハハハハハ」


「。。。?ロリッ娘、どうしちゃったっスか?」


「アハハハハ♪だって急に。。。良かったとか、言うんだもん。ククク、本当ウケる♪

 お姉さんさ、もしかして私が魔獣コレにヤられちゃった!とか思ったりしたの?アハハハハ♪バカ過ぎ♪」


「ギャァァァァ!!!ガァァァァァ。。。ウウゥゥゥゥ!!!ギアァァァァァ!!!!!!」




 右目に氷の刃が刺さる魔獣汚物は、私がする度に人間の泣き声にも聴こえる大きな叫びをあげる。一生懸命突き刺さったを抜こうと頑張ってはいたけど、体内で返し状に凍らされた刃を引き抜くなんてそう簡単に出来るわけは無い。


 痛いの?♪苦しいの?♪

 ね、殺して欲しい?一思いに逝かせてあげよっか?♪

 障壁に阻まれ、目からは魔法の杖氷の刃をブッ刺されて、それでもまだ私を引き裂き噛み付こうともがく魔獣汚物は、私に優しく微笑みを向けられると己の最期を悟ったのか、暴れるのを止めた。。。






「ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!(グリグリグリグリグリ!)」






 アハハハハ♪こんなの嘘に決まってるでしょ?バ〜カ♪


 私のお姉さん所有物に手を出しておいて、簡単に死ねると思ったら大間違いだよ?

 さあ、もっと苦しみなさい♪もっともがきなさい♪生まれて来た無駄に頑丈なことを後悔するといいわ♪




「アハハハハハハハハハハハ♪」


「。。。ロリッ娘、もういいっス!」


「アハハハハ。。。ハ?」


「。。。さっさと、トドメを刺すっス!」


「ハ?」




 せっかく殺すの後回しにしてあげいい気分でグリグリしてたのに、この紫色コバエは何を勘違いして良い子ぶってるんだろう?


 魔法少女ゴキブリのくせに、私に命令。。。?ただの足手纏い雑魚のくせに?


 私は返事の代わりに、足元に落ちていた採れたてピチピチの左ニーソを紫色コバエの顔面目掛けて蹴飛ばした。

 障壁にぶつかった左ニーソ生足は、ビチャ!っと血飛沫を飛ばして転がるが、紫色コバエは私を見つめたまま瞬きすらしなかった。



 私はあの眼が気に入らない。。。



「。。。ロリッ娘、アンタのソレはじゃないっス。ただの弱い者イジメっス。。。もう勝負はついているのに。。。無駄に長引かせて、相手を苦しませて、ソレをアンタは笑って楽しんでる。。。


 そんなの、先輩がっスか?

 そんなこと、先輩がと思うっスか?

 今のアンタを見て、先輩やと思うっスか?」



 まるで可哀想な者を憐れむ様な偽善に満ちた偽物の、魔法少女特有の正義漢ぶった変に暖かみのある正義を無理矢理押し付けてくる、あの眼が気にいらない。。。



「。。。お前が、」


「先輩は、先輩は。。。絶対アンタを許さないっス!」


「お前がお姉ちゃん達を語るなーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」



 私の怒りに呼応して、魔獣に刺さっていた氷の刃は内側から大量の棘を生やしその黒い体をズタズタにした。魔獣から私の中に流れ込んでくる大量の魔力は、ソレが致命の一撃だったことを示している。


 殺す、もう殺す!

 どいつもこいつも皆殺す!!!


 生ゴミから刀を引き抜き、紫色次の獲物へと向かう私の背後。



「み。。ゃ。。。。。。」



 事切れる瞬間のソレの泣き声を、私は知らない。


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