第11話 友達なんか大っ嫌ぃ!




「チコちゃーん?オーイ、どこ行ったの?削り節あげるよ?

 おかしいな。。。ごめんね、ミコちゃん。いつもはね、呼んだら直ぐに出て来てくれるんだよ?」




 私が学校に復帰して3週間と少し。

 ようやく朝のダルさにも慣れてきた、ある日の放課後。私は面倒なことに、小さい方の委員長眼鏡と他数名の女子取り巻きに学校の裏山へと拉致されていた。


 まぁ拉致と言っても、相手はあの委員長。『貴女少し生意気なのよ!』とかいう方の面倒事ではない。

 何でも委員長達は、裏山にあるこの公園の空き倉庫秘密基地で子猫を保護餌付けしていたらしく、それをわざわざ私に見せようとしていたそうだ。。。この委員長真面目なら、『ダメだよ?寄り道なんかしちゃ!』とか言いそうな感じなのだけど、猫が絡むと話は別らしい。。。本当、頼んでもいないのに迷惑な話。



「ねぇ。。。なんだか、変な匂いしない。。。?」



 取り巻きの一人ツインテールが言う様に、この辺りには微かに嗅ぎ慣れた不快な臭いが漂っている。もしアレ害虫がまだ近くに居るのなら、こんなピチピチの女の子餌達を前にして襲って来ないわけがないけれど。。。これ以上長くなるのも面倒なので、私は周囲の魔力探知をする。


 魔力探知。

 こんなのは、魔法ですらない。ただ眼を閉じ、周囲の魔力の流れを辿るだけ。。。お姉さん眼鏡に教えてもらったの一つ。



「。。。居た」



 近くに怪人の気配は無い。

 代わりに探知に引っかかったのは、とても弱々しい小さな気配。立ち枯れした木の根元に出来た隙間の奥で、今にも死にそうな感じの黒い子猫だった。

 可哀想にその小さなお腹は、クロスボウの矢で串刺しになっている。



 えっと、因果応報?だったっけ?

 こういうのを観ると、怪人になろうが人間のままだろうが、結局ヤってることって変わらない。

 弱い者を意味も無くいたぶって、苦しむ様を観て笑い、散々楽しんでから止めも差さずに放置する。。。まだバリバリと食べる分、怪人の方がマシかもしれない。

 そんな思いすら沸くほど、クダラナイと思える光景。

 本当何で人間生ゴミなんか助けなきゃいけないの?意味が解らない。つくづくそう実感する。


 まぁでも喜ばしいことに、委員長達は気付いていないけど。私達の居るこの公園の周囲の木の上には、この子猫を苛めたであろう人間生ゴミ達の残骸があちこちに散らかっている。心底ざまぁ~♪


 そしてここから先は、私の一時の気の迷いでしかなかった。普段だったら多分しない。本当に、ただの気紛れ。


 私は子猫に突き刺さった矢を抜き、お姉さんウザ眼鏡に教わった治癒魔法をかけた。八つ当たりするみたいに、ありったけの魔力を込めて。。。



 。。。治癒魔法。

 大抵のケガや病気位ならほとんど治せるチートな魔法。ただしそれは、死んでいなかったらのお話。だから、私のお姉ちゃんみたいに死んじゃってたら、全然効果の無い魔法。



「にゃぁ~♪」


「あっ!チコちゃん!!!ミコちゃんすごいね♪どうしてそこに居るのが解ったの?」


「。。。別に」



 私は別に、この委員長達の為に子猫を助けたわけじゃない。本当にただの気紛れでしかなかった。

 だってあの時の気紛れなお遊びが、まさかこんなことになるなんて♪この時の私は思ってもいなかったのだから。

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