のじゃ現る


 とある放課後。

 今日も生徒会嗜好部は騒いでいる。

 先日金春桜花が帰還したことで、そろそろ本来の活動をすると思いきや、


「桜花先輩、そこ尻尾斬り落として!」

「おっけ、任せてー!」

『私が囮になる』


 マルチ最大人数の4人になったため、更に狩猟活動が活発に。


「多分あと3回で尻尾斬れるよ。それに合わせて麻酔弾お願い」

「じゃあ罠置いて終わりっスね」


 更に桜花の目にはモンスター各部位のHPが見えているらしく、素材集めも非常に効率が良くなった。天才って怖い。

 今回も全部位破壊でパーフェクトクリアだ。


「…………もうこれ俺いらなくね?」

「何言ってるんスかセンパイ。そんなこと無いですよ」

「希愛……」


 実際、ただでさえデータを消されたキャップにできることはほぼ無い。

 せいぜい死なないように立ち回るだけ。


「どんなにセンパイが役立たずでも、1人増えるだけでヘイト分割されるから助かってますよ?」

『逃げるのだけは上手い』

「そんなことだろうと思ったよ!」


 最近はいつもこんな扱いだ。

 その原因の殆どが桜花によってデータを消されたことなのだが、そんなこと今更言っても仕方ない。


「まあいいや。じゃあ次は────」

「みんな久しぶりなのじゃ!」

「あだっ!」


 後頭部に強い衝撃。

 ただでさえ狭いから被弾率が高いというのに、大声で入室した少女が全力で扉を開けたことでドアノブがキャップに直撃した。


「おお、すまぬセンパイよ」

「あ、秋月。英語の補習終わるの早いな……」

「おうとも! 先生が呆れて離してくれたのじゃ」

「それは良かったのか?」


 彼女の名前は秋月小紅。

「のじゃ」と変わった口調で話し、何故か1人だけ制服ではなく着物で過ごしているという、いわゆる変人だ。


「おやおや皆揃って面妖なもので遊んでおるのう」


 今も部員4人が持っているゲーム機を興味ありげに眺めては、つついてみたりして疑問符を浮かべている。

 まるで演劇か何かで昔の人を演じているような感じだ。


「のわ、動いた!」


 しかしこれは本気の反応。この前全員でようやくスマホの使い方を教え込んだのだが、どうやら応用力が無いらしい。

 未だに機械類を見ると壊しかねないので、基本は近づけないようにしている。


べにちゃんはゲームやったことないんスか?」

「希愛がたまにやってるものか。我が家は俗世間に距離を置いている故、触れたことも無いのう」

「じゃあやってみます? モッチー先輩もついこの前始めんたんですよ」

「そうか、しかし……」


 それでも小紅は決めあぐねる。それも当然で、望叶は希愛と同じで割と何でもそつなくこなす天才肌。

 小紅はキャップと似ていて全てにおいて不器用で、古武術や琴などの習い事以外は壊滅的だ。


「壊しても大丈夫っスよ。センパイの使えばいいですから」

「うむ、それならまあ……」

「おいコラ。全然良くねえぞ」


 この前もデータ消されたのに、今度は破壊とか冗談じゃない。

 まあこれ希愛のだからいいけどさ。よくないけど。


「大丈夫よ。希愛のなら私が直してあげるから」

「桜花先輩大好きー!」

「ふっふっふ」


 希愛に抱きつかれた桜花は誇らしげにキャップを見るが、別に羨ましくない。

 もっと素直で可愛い後輩なら良かったのにと心底思う。


「まあ確かに俺のじゃないしな……ほら」

「おお……!」


 小紅はキャップからゲーム機を受け取り、まるで貴重な展示品のように眺めている。

 仕方ないので電源だけは付けてやる。


「な、なんなのじゃコレ。どこを、どう動かせばいいのじゃ?」

「ん? いやテキトーに動かせばできるから頑張れ」


 小紅にとっては馴染みのないゲーム機。

 将棋や囲碁しか知らない彼女からすると、電気で動くそれは全く未知の世界。

 不思議そうに弄る姿はまるで小動物のようで、可愛らしい。


 キャップは手持ち無沙汰なので、お茶でも入れようと立ち上がった。


「…………そういえばなんですけど」


 希愛は小紅がアタフタしてるのをボーッと見ながら、おもむろに口を開いた。


「この前、私も弟にやられたんスけど。なーんで小学生って、他人のデータを意図せず消しちゃうんですかね〜」

「さあ? まあ初めて触るのって訳分からないから、仕方ないんじゃないか?」

「そうなんですかねー。仕方ないんですかねー」


 キャップには彼女が何を言いたいのか、よく分からない。

 ただ視線だけが、ぐるぐる目をまわしている小紅を追うばかりだ。


 彼女の小柄な容姿も相まって、まるで初めてゲームで遊ぶ子どものようだ。

 初めてゲームで遊ぶ…………?


「ちょっ秋月ストップ!」

「す、すとっぷ? いやそもそも────お、何かできたぞ!」

「だからそれはダメなやつだってええええええええ!!」


この日を境に、キャップを哀れんで部室でマルチゲームをすることは無くなった。


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とりあえずキャラはこんな感じです。

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