天才現る

 とある放課後。


『爆弾仕掛ける』

「モッチー先輩チャットめちゃ速いですね…………あ、石投げます」

「おい待て俺がまだ」

「どーん!」

「てめえええええ!」

『クエストクリア。乙ー』


 今日も生徒会嗜好部はちゃぶ台を囲みながら、お菓子を片手にゲームに耽っていた。


「にしてもモッチー先輩って意外とゲーム上手いんですね」

『そうでもない。希愛の方が上手』


 そうチャットで話すのは冬木望叶ふゆき もちか。キャップの幼なじみであり、この部の創設者の一人だ。


「いやいや、私は廃人ですから。むしろセンパイが下手すぎるんですけどね」

「下手で悪かったな」


 キャップは昔からゲームが好きではあるが、どうにも上手くならない。

 こんなこと上達して何になるかという話であるが、やはりどうせなら活躍したいのは当たり前の考えだ。


「おっし、じゃあ次こそ俺が与ダメ1位になってやるよ」

「言いましたね。じゃあなれなかったらアイス奢りでっ」

「あ、てめえハンマーは卑怯だろ!」

「じゃあ先輩もハンマーにすればいいでしょ〜」


 希愛ほどゲームをやり込んでいないキャップに、張り合える武器などせいぜい一種類。彼女のスキルで攻撃専門職など使われたら勝てるはずもない。


 なんとかして別の武器を使わせようと交渉していると、部屋の扉がコンコンと鳴った。


「ん、誰だ? また生徒会かな……いやでも今日は何もしてないよな、望叶」

『怒られるようなことはしたことない』


 それは真っ赤な嘘だが、もう面倒なので追求するのは止めた。

 なぜここの部員は、こうも謙虚な心を持ち合わせていないのか。彼の永遠の悩みである。


「はーい。開いてますよー」


 キャップがそう言うと、しばしの沈黙の後にガチャッと扉が開いた。


「久しぶりね。キャップ、望叶、それに希愛」

「桜花せんぱーい!」

「おっと」


 その人物が現れた途端、希愛が飛びついた。

 彼女はスラリとした身体で、しかしそれを難なく受け止めて希愛の頭を撫でる。


「もう遠慮なく突撃しちゃってー。このこのー!」

「えへへへ」


 笑いながら希愛の頭をクシャクシャと撫で回す、勝気そうな金髪の少女。

 彼女の名前は金春桜花こんぱる おうか。キャップと同じ二年生で、創設メンバーの一人である。


『学会は終わったの?』

「うん、話つまんないから切り上げて来ちゃった」

「切り上げたってお前、かなり大きいやつじゃなかったのか!?」


 金春桜花は、いわゆる天才だ。

 その知性は人間の作ったテストでは測ることは不可能とされ、彼女がその気になれば文明レベルを数年で100年分は成長させられると言われている。本当かは知らない。


 そして彼女はついこの間、海外の学会に招待されて海を渡ったはずなのだが、


「そうなんだけど、どれもありきたりでねー。抜け出した♪」

「…………」


 いつものことなので、もはや何も言うまい。

 強いて言うとするなら「またか……」、とどのつまり自由奔放なのだ。


「ってか3人して何やってるのよ?」

「何って、ゲームだよ」

「望叶も?」

『YES』

「へえー。珍しいね」


 確かに望叶がそういうことをするのは、割と珍しい。

 ゲームそのものよりも、そっちに興味を示した桜花はキャップの画面を覗き込んだ。


「あーこれ懐かしー! 私もやるー」

「じゃあ俺の使っていいぞ」

「さんきゅー」


 彼からゲームを受け取り、まずデータを消して────。


「ちょっと待ったぁ!」

「はぇ?」


 ポテチをかじりながらとんでもない行動に出た桜花の指を、キャップが即行で止める。


「いやお前何してんの」

「何って、アンタのセーブデータでやったらズルじゃない」


 ズルではないだろ。とその場の誰もが思っているだろうが、彼女の思考についていける人はいない。


「センパイ、諦めるっス……。気が向いたらまた手伝いますよ?」

『気が向いたら、私も』

「お前らこの野郎……っ」


 しかし貸すと言った以上、引き下がれない。この部室において、その気になった桜花は神より偉いのである。

 桜花は呑気にファ〇タを飲んでいらっしゃる。


「あ、やっぱ新しいセーブデータ作るわ」

「最初からそうしろ!」


 そういえば初期には無かったなと思いながら、ようやくデータを守り抜いたことに、ほっと一息。


「ほんと、お前はいつも俺の物を使いたがるよな……」

「そー? あんま記憶に無いケド」

「いやお前、今飲んでるのも俺のだろ」

「へ…………?」


 キャップが指さしたのは、今まさに桜花が口につけたファ〇タのペットボトル。

 その意味に気づいた彼女は暫し固まり──────赤面した。


「え、ちょっ。待ってそういうのは早く言いなさいよ! バカっ!」

「いやだって普通に飲んでたし…………ってお前そこから指動かすなよ!」

「うるさいうるさい!」

「いやそれマジでシャレにならんから────ぁ」

「え?」


 キャップの声がか細くなる。

 その突然の変化に気づいた桜花は、彼の視線の先にある、自らのゲーム画面を見た。



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 とあるサイトで作ったキャラのイメージ画像です。暇でしたら見てください。


 https://twitter.com/akateno125/status/1126129731764510721?s=21

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