幼なじみ現る

とある放課後。


「あ、センパイそこ罠置いてください」

「おっけー。任せとけ」


生徒会嗜好部の部室では、今日も少年と少女がゲームに耽っていた。

あの日以来、元々ゲームが好きだった少年がどハマりしたため、暇さえあれば通信プレイをする毎日。

そんなとき────。


ガチャッ


「希愛、最後に麻酔頼んだ」

「いきますよー!」


テクテクテク。


「よっし! 意外と楽勝だったな」

「そッスねー。まあメインクエですし、こんなもんじゃ────うわっ!」

「んー、どうした…………っていつの間に来てたのか、望叶もちか

「……………………」


二人が一息ついて顔を上げると、いつの間にかすぐ隣に一人の少女が立っていたことに気づいた。

冬雪望叶ふゆき もちか。生徒会嗜好部の創設者であり、少年の幼なじみでもある二年生だ。

彼女は相変わらずのジト目で二人を交互に見つめると、黙って何故か手元にあるスケッチブックに何かを書き始めた。


(おい、お前何かしたのか?)

(し、してないっスよ! センパイこそまたモッチー先輩に失礼なことしたんじゃないですか!?)

(んなわけないだろ!)


「………………」


小学生かと見紛うほど小柄な彼女だが、黙々と何かを書いている姿には不思議な威圧すら感じる。

二人が緊張しながら待っていると、書き終わったのか、やがてスケッチブックをひっくり返して見せた。


『キャップもノノちゃんも、楽しそうだけど二人とも何してるの( ´・ω・`)?』

「「そんなことなら、もっと早く書け!!」」

「…………!!?」


望叶は寡黙だ。それも重度なもので、人前では言葉を全く発しない程である。

だからなのか、会話の一切は手元のスケッチブックで済ましている。


「もうお前の筆談は慣れたけど、そのたまに絵を描くのやめてくれ。顔文字と横の猫は絶対いらねえだろ」

「ほんとっスよ……遅いと何書かれてるのか分からないんですから……」


少年キャップと希愛がそう言うと、希愛は無表情のままスケッチブックにまた何か書いた。


『ごめん。で、何やってたの』


今度は早い。


「希愛に借りたゲームが意外と面白くて、最近みんな来れないから一緒にやってるんだよ」

「センパイってば夜も寝かせてくれないんですよー」

「!?」


望叶は希愛の言葉にビクッと震えると、ペンを走らせた。


『昨日隣からキャップの話声聞こえてたけど、まさかお泊まり……?』

「いや普通にオンライ────むぐっ!?」


マジレスしようとするキャップの口を、迅速に塞ぐ希愛。


「別にお泊まりってわけじゃないんですけどね。ただ夜更けまで喋りながら、同じ部屋ルームでゲームしてただけっスよ?」

『同じ部屋!?』

「むぐ、むぐぐぐっ!(お前、また勝手に!)」

「センパイも恥ずかしがらないでくださいよ。一緒にお風呂にも入った仲じゃないですか」

『おふ、おふろ……』


もちろんゲーム内の話なのだが、そっち方面に疎い望叶にそんなこと知る由もない。

それでも無表情を貫いている彼女だが、明らかに顔が赤くなっていた。


「センパイったら私に料理肉焼きまでさせたんですよ。全く酷いですよねー」

『料理なら私だって』

「まあ私は優しいですから、もちろんこんがり焼いて────あだっ!」

「望叶!?」


希愛が調子に乗ってアレコレ吹いていると、突然望叶がスケブで希愛の頭をぶっ叩いた。


『料理なら私だってできる!』

「いやそれは知ってるけど、そもそもこの話は」

「へえー、じゃあ私と同じ条件で作ってみてくださいよ」

「うん、だからゲームの」

『分かった。じゃあ今日キャップの家で肉焼く』

「えぇ……」


望叶とキャップは幼なじみであり、家が隣なため別段珍しいことでもない。

それに頑固な一面を持つ彼女が今さら退くわけもないので、もはや黙るしかないのだ。


「じゃ、ちょうどいい時間なので私は帰りますねー。今日の夜はソロで頑張ってください」

「お、おう」

『今日は早いね』

「まあモッチー先輩が来たおかげで、ぼっちなセンパイのお世話しなくてよくなったので」

「おいコラ」


軽くディスられてガンを飛ばすキャップを後目うしろめに、希愛は手早く机の上に散乱したゲームなどをかき集めて立ち上がった。


「じゃ、お先に〜…………センパイふぁいとー」

「へ?何が──」


キャップが、意味深な言葉を残した後輩の意図を計りかねていると、後ろからぽんと肩を叩かれたので振り返った。


『正座』


「へ? いやなんで」


『正座』


「だからアレはゲームの」


『正座』


「…………はい」


理不尽だ。

希愛の話が全てゲームの内容だと理解させるのに、また夜までかかった。

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