105話 HUNTER研究所 ~研究資料4~

 金庫に手をかざすと半透明のウインドウが姿を現す。



ブワンーー



 そこには先程紙切れに書かれていたような、四角い図形のようなものが描かれている。



「⋯⋯なるほど」



 プリンはそれを見ると、手馴れたようにウインドウに触れる。



「どゆこと?」

「おそらくこの金って文字の所を押せばいいんだ」

「⋯⋯?」



 あまり頭がいいとは言えない私には理解が出来なかった。

 首を傾げているとプリンは口元を緩め続けた。



「まぁ、見てろって」



 現れたウインドウに描かれていた図形のボタンを、次々と押していく。

 紙切れに書いていた金の文字の位置の図形を押しているようだ。

 三つある内、書かれていた順にこなしていく。



ピッーーピッーーピッーーピピピーー



 最後の図形を押すと、今度はアルファベットの羅列が現れた。

 それは私でもわかる。

 おそらく紙切れに書かれていた《ATS》の文字を押せばいいのだろう。


 プリンはスムーズにその通りの文字を押した。

 するとカチッという音と同時にウインドウは消滅した。



「やったね!」

「あぁ」



 金庫の解錠に成功した。

 この金庫は世界に点在する普通の金庫とは形状が違う。難易度によってスキルがあれば開く、そんな簡単なものではなかったようだ。


 プリンはゆっくりと金庫の扉を開くと、中には再びカセットが。



「やっぱりあったか」

「また研究資料とかいうのかな?」

「⋯⋯さぁな。見ればわかる」



 Pitboyピットボーイにカセットを差し込む。



カチャーー



『研究資料4。

 このカセットを手にしているという事は、あのメモを解読したという事だね。まずはおめでとうと言っておく。そして君達はどうしてもこの結界の中に入りたい。だからこのカセットを探したという事になる。この世界に転送された理由、HUNTERとは何故生まれたのか、それが脅かす脅威。全てを語ろう。

 私の名前は⋯⋯HUNTER博士。この名を口にすれば結界は開かれる。君達を待っているよ』



 この人物が全てを知っているのだろうか?

 これから何が語られるのだろうか?

 私は不安でしかなかったが、私達が転移した理由やゲームではなかったハンターの存在、それは知る権利はあると思う。


 私達はこの人物に会う為、結界へと足を運ぶ。






《侵入者ーー侵入者ーー》

《撤退スルカ HUNTER証ヲ 提示シテ下サイ》



 再び警備ロボットのお出ましだ。

 しかし今度は撤退するわけにはいかない。

 プリンが一歩前へ出て口を開いた。



「HUNTER博士に会いたいのだが」

《アポヲ 取ッテ イマスカ?》

「いや、このカセットを見た。HUNTER博士に呼ばれたんだ」



 プリンは先程のカセットを差し出しそう言った。

 すると警備ロボットからザザッという音が聞こえ、どこからともなく声が聞こえてきた。



《博士ーー博士ーー》

「⋯⋯なんだ?」

《カセットヲ見タ ト言ウ人ガ来テイマス 通シマスカ?》

「あぁーー通していいよ」



 無線のような何か機械を通したような声と、ロボットが会話している。

 どうやら入る許可が下りたようだ。



《ドウゾーーオ通リ下サイ》

《ヨウコソーーオ客人ーー》



 目の前の結界が無くなり、警備ロボット達が道を開けた。


 私達は当たりをキョロキョロしながら、中央の三角建物へ歩みを進める。

 入口らしき扉の前に立つと、横に開閉する扉が自動で開いた。



「えっ⋯⋯」

「なんだ⋯⋯ここは?」



 その中身はこの世界には似つかない、真新しい機械仕掛けの部屋。

 一面データで造られているんじゃないかってくらい未来感がすごい。

 翠色の壁に黒い縞模様が入り、ゆっくりと模様がうごめいている。まるで建物自体に生があるように⋯⋯。


 右側にはドーム型の機械が。

 左側にはベッドのような物が数個ある。その一つには黒いフードを被った人が仰向けに寝ている。


 そして中央には巨大な何かの装置が並んでいる。

 それに囲まれて椅子に座り背を向けている一人の男性がいた。



「どうやら辿り着いたようだね⋯⋯和也。いや、今はプリンと言うべきか⋯⋯」

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