67話 ブリットン警察署 ~救いの手~

「おい、二人とも起きろ」



 私を揺らすその声で目が覚めた。

 隣を見るとマールがスヤスヤ眠っている。



「ね、マール。起きて!」



 プリンに起こされた私は、隣にいるマールの体を揺すりながら起こした。



「んっ⋯⋯もう朝かァ」



 マールは眠そうな目を擦りながら辺りをキョロキョロしている。



「出かけるぞ」

「え? 出かけるってどこに? 外はまだ⋯⋯」



 私はそう言いながら洞穴の外を覗いた。

 すると昨日の嵐が嘘のような晴天だった。

 肌に触れる心地よい風が気持ち良く、澄み渡る青空の下でいつまでも寝ていたいくらいに、気持ちのよい天気だ。



「あっ⋯⋯晴れてる」

「あぁ、管理官を探しに行くんだろ? さっさと準備しろ」

「⋯⋯うん!」



 私は、やっと管理官を探しに行けると思い、一目散に準備を始めた。



「管理官ってテンが言ってたロボットだよねェ?」



 忙しく準備をしている私に、マールがおもむろにそう尋ねてきた。



「そうだよ。嵐ではぐれちゃったから探しに行くの。マールはどうする?」

「今思い出したんだけどね、そのロボット多分警察署にいると思うよォ?」

「えっ? 本当?!」



 私はその事実に喜びを隠せず、跳び跳ねてマールに聞き返した。

 するとマールは少し自信なさげに話を続けた。



「うんッ! 昨日警察署を出る時に、ロボットっぽいのが突っ込んできて、警備してる連中に止められてたような気がするゥ!」



 それが本当だとしたら、大変だよね。確かマールが警察署の人達はロボットを目の敵にしてるって⋯⋯。



「⋯⋯早く助けに行かなきゃ!」



 立ち上がり洞穴を出ようとすると、マールの言葉が私の歩みを止めた。



「でも⋯⋯もう死んじゃってるかもォ⋯⋯」



 私は勢いよくマールの方を振り向き近付いた。



「縁起でもない事言わないで!」

「ま、まだわかんないけどねェ」



 すごい形相で近付く私に驚いたのか、マールは一歩後退りそう言った。



「とにかくだ、いつまでもここにいても意味ねぇ。さっさと警察署に探しに行くぞ」



 気まずい雰囲気になった私達の間を取り持つように、プリンは私を見てそう言った。



「うん⋯⋯ごめん」



 私はマールを一目見てうつむきながら謝ると、洞穴を出る為歩み始めた。




 洞穴の外に出ると私は足を止めた。

 私達はあの嵐の中、必死ながらに洞穴にたどり着いた為、警察署からどのようにここにたどり着いたか定かではない。


 私が道が分からず戸惑っていると、マールが私の顔を除いて話始めた。



「ファストトラベルすればいいんじゃないィ?」

「あ、そっか!」



 私はファストトラベルの存在をすっかり忘れていた。

 警察署には一度訪れているから、次からは一瞬で移動できるんだった!



「さっさと飛ぶぞ」



 え、道に困ってたの私だけ?

 プリンもファストトラベルで行こうと考えていたようだ。

 なんだか考えてるのがバカくさくなり、私は二人に続き警察署にファストトラベルした。



ブワンーー



 その音と同時に一瞬で警察署が目の前に。



「やっぱファストトラベルは便利だね」



 私がそう言うと二人は、私の言葉を無視するように警察署の入り口へと向かった。


 警察署の入り口には警備の人が二人、武装して扉の前に立っていた。



「ねェねェ、ここにロボット来なかったァ?」



 マールは警備に近付きそう問う。



「あん? あぁ、マールか。ロボット⋯⋯? お前知ってるか?」



 一人はロボットの事を知らないらしく、もう一人の警備に聞いた。



「あぁ⋯⋯昨日派手に突っ込んできた奴じゃねぇか?」



 どうやら心当たりがあるようだ。



「そのロボット、どこにいるのォ?」

「マール、お前あのロボットとグルなのか?」



 警備の一人が急に態度を変え、物凄い見幕でマールを睨んだ。



「い、いや⋯⋯違うってェ! ちょっと様子を⋯⋯」

「そうか? それならいいけど、気を付けな。中の連中はそいつを殺す気満々だぞ」

「そんなッ! どこにいるのォ?」

「あん? 地下だと思うが⋯⋯あんまり首突っ込むなよ。お前も殺されるぞ」



 マールは会話が終わると私達の方をチラッと見て中へ入っていった。

 私とプリンもマールの後に続き中へ入った。



「地下はこっから行けるよ。付いてきてェ」



 しばらく真っ暗な細い地下通路を通ると、牢屋が沢山並んだ広間に出た。

 そこは肌寒く人気がない、薄暗くて辺りは見えづらい。ネズミが好き好んで住みそうな場所だ。



「この牢屋のどっかにいるの⋯⋯?」



 不安になった私は震えた声でそう問う。



「うん、多分あそこォ! ほらァ!」

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