65話 ブリットン警察署 ~別れ~

 私達は警察署を出て目的地もなく、ただひたすら歩き続けていた。

 今日は天気が悪い。

 薄茶色の砂嵐が舞う広い世界を、一歩一歩踏みしめながら歩いている。

 少し先の建物すら見えなくて風が強く、肌に当たる砂が体に痛みを与える。


 そんな中、私達はフード付きの大きめのローブをまとって、警察署から真っ直ぐ北に進んでいた。




「ねぇ⋯⋯!! これ、どこに向かってるのーー?!」



 私は砂嵐にも負けないような大きな声で、プリンに問いかけた。



「わからない。とにかく今は隠れれる洞穴でもあればいいんだがな!」



 プリンもまた、砂嵐に負けないくらい大きな声でそう答えた。



「あわわわわ⋯⋯私はこの嵐には耐えられそうにないですが! その時は助けて下さ⋯⋯!!」



 管理官は全てを話終える前に、嵐に耐えきれず歩いて来た方向に勢いよく飛ばされた。



「⋯⋯管理官!」



 私はすぐに後方に飛ばされた管理官を追うため振り向いたが、既に管理官の姿はなく、後方に広がる砂嵐しか見えなかった。



「待て! 行くな」



 来た道を戻ろうとした私の腕を掴み、プリンは管理官を追おうとする私を引き留めた。



「なんで? 管理官が⋯⋯」

「今追うのは危険だ。まずは洞穴を見つけて、この砂嵐が止んでから探しに行くぞ」

「でも⋯⋯管理官は仲間だよ?」

「あぁ⋯⋯知ってる。だが今管理官を探しに行って、俺達まではぐれて⋯⋯そんな時に敵にでも出くわしたらどうする? いいか、今回ばかりは言う事を聞くんだ。助けに行って死んでちゃ世話ねぇだろうが」



 私はもう仲間を失う状況にはなりたくなかった。

 でもプリンの言う事はまともだ⋯⋯。



「⋯⋯わかった」



 私はプリンの言う通りに、今はまず自分達の安全の確保をする事にした。



ザッザッザッーー



「おーい⋯⋯」



 私達が洞穴を探して歩いていると、遠くから私達を呼ぶ声がした。



「おーいーー!!」



 まただ。

 さっきより声が大きくなった。

 どうやらこっちに近づいてくるようだ。



「あ、いたいた! おーい! 待ってよぉ!」



 声の主は管理官ではないみたいだ。

 女性の声だ。


 私達はその声の主を確かめる為、砂嵐に耐えながらその女性らしき人が近付くまで、その場で立ち止まった。



ザッザッザッーー



「ひどいよォ! 警察署にいるって話だったじゃんッ!」



 近付いてくるなりその子はそう言い放った。

 声の主はマールだったようだ。



「えっ?! なんでここにいるの?」



 マールを見て驚いた私がそう問うと、嵐の中マールは怒り混じりに話してきた。



「なんでって⋯⋯テン達がいなくなったからでしょ! ドルタから聞いて慌てて追いかけてきたのォ!」

「ドルタに説明したんだけど⋯⋯」

「えェ? そうなの? テン達がいなくなったの聞いて、すぐに飛び出して来たから理由なんて聞いてないよォ!」



 そう言うドルタを見てみると、確かに慌てて出てきた様子だ。

 何か作業をしていたのか、片手にペンチを持ち作業着らしき服に煤だらけで走ってきたようだ。



「ここら辺に洞穴とかねぇのか?」



 おもむろにプリンがマールに問うと、マールは案内するかのように私達の前に立ち、指を指した。



「あ、ここじゃアレだよね。砂嵐すごいしィ。洞穴ならあっちにあるよォ! 案内しようかァ?」



 私達はマールの後に続き、近くにあるという洞穴に案内してもらう事にした。

 これで一先ずは大丈夫そうだ。






「あれ⋯⋯? こっちの方にあったと思ったんだけどなァ。おかしいなァ⋯⋯」



 マールはあちこちをウロチョロしながら洞穴を探しているようだ。

 やっぱりこの砂嵐で見えづらくなってるのかな。


 ちょこまか動くマールに付いていくのが精一杯で、私のスタミナはどんどん削られていく。



「おい、本当にこっちであってるのか?」



 不安になったプリンがそう問うと、少し離れた所からマールが叫んでいる。



「あったよォーー!! こっちだよォーー!!」

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