本編 ~ 第六章 ~
56話 汚染された水道工場 ~RADまみれ~
私は今水道工場に来ている。
そこは遠目でも分かる程水だらけだ。まぁ水道工場だから当然か。
コンクリートで出来た渦巻いている要塞の中心は辺り一面汚れた水で溢れている。
水の中にはプカコーラの空き瓶やらただの布切れやらが浮いている。
おそらくその水に近づくとチリチリと音がするだろう。
いや、実際に今音がするのかは分からないが、RADだらけなのは見て分かる。
近づくのはやめておいたほうがいいだろう。
水道ポンプなのかわからないが、それらしきものが汚れた水の中に顔を出して点々とある。
そしてそこを迂回して行くと、奥には水道工場の中に入れる扉があった。建物の裏手に回ると裏口なのか鍵がかかった扉を発見した。
ゲームをやっていると分かるけど、これはおそらく中から
ビビビーー
「テン、気を付けろ」
裏手に回ると小さい虫が群れを成している。
小さいと言っても人の顔以上には大きい。
パスーーパスーー
私達は手分けしてその小さな虫を始末した。
近接武器で一匹ずつ殴っていくと、素早く動かしていた羽が破れ虫の肉体が切断された。
この程度の敵なら私は何とも思わず簡単に倒す事ができるようになっていた。
「そっち片付いたら中に入るぞ」
プリンがそう言うと、私と管理官はプリンの後に続き再び建物の正面に向かった。
ガチャーードスーー
正面に回り水道工場の重たい扉を開け中に入った。
そこはおそらく今は誰も管理していなくて廃墟になっている為か、そこら中が水浸しで滑りやすくなっている。
入り口から入ってすぐの広間は受付のような弧を描いたような机が置いてあり、その内側に行くと机の棚の中には何かの書類やクリップボード、えんぴつや古いレジなどが置いてあった。
放置されていたせいか、それは散乱していて私達が使えそうな物はなに1つなかった⋯⋯。
「おい、そこ気を付けろ」
私が広間から左の通路に入ろうとしたとき、プリンはそう言って私の足を止めた。
私がその先に行こうとしていた通路の足元をよく見ると、レーザーのような赤くて半透明に光っているような線を見つけた。
「お⋯⋯あぶなっ!」
おそらくそれに触れると足が真っ二つになるか、警報が鳴り敵のお出ましか⋯⋯どちらかだろう。
こんな所で無駄に敵と戦いたくはない。
どう考えても分が悪い。
技術があればレーザーを解除する事も出来るが、私にはそんな技術はなかった為そのレーザーに当たらないように慎重に
その通路の先にはポンプがいくつも並んだ部屋や電源を管理する部屋、それにオフィスのようなデスクがいくつも並んだ部屋があった。
その部屋は見る限りでは特に入手できそうなものはなかった為、私達はその部屋をスルーしもっと先へ進んだ。
機械類は下手に触ればとんでもない事が起こったりする。機械に疎い私はそれに触ってしまう事を恐れ、それらの部屋には入らなかったのだ。
元より私達はこの水道工場へや探索をしに来たわけではない。私達の住む家を探しに来たのだ。
こんな水浸しの水道工場だと知らなかった為、ここに来るしかなかった。
でもこの状態を見た今、ここに住めるのだろうか? と思いつつある⋯⋯。
そして私達はある部屋に入った。
そこはーー
「なんだこれ?」
「え、どうなってんの?」
「これは迷いそうですね!」
私達は困惑していた。
そこはとても水道工場とは思えない部屋だった。
足を踏み入れると部屋全体が回転しているように見える⋯⋯いや、正式には床が丸くなっていて床だけが回転している。
目が回りそうだ。
部屋の各所に設置された扉に目がいく。
「ねぇ、どの扉に入ればいいの?」
「わからねぇ⋯⋯一個ずつ潰していくぞ」
「あっ! ちょっと待って。あれ、防具じゃない?」
回転する床の上に見えるのは捨てられた防具。
おそらくあれは腕の部分に当たる防具だと思うんだけど⋯⋯。
「おい、やめとけ」
プリンのその言葉を無視し、私は回転する床を動き回る。
「あっ⋯⋯もう! もうちょっとなのに!」
床が回転しているせいで思うように前に進めない。
タタタタタッーードン!
「よしっ!」
防具目掛けて一気に駆け抜けた。
手が届いたと同時にバランスを崩し、顔面を強打してしまったが貴重な防具を手に入れる事が出来た。
結果オーライだ。
「ったく⋯⋯」
呆れるプリンをよそ目にすかさず防具のチェック。
インベントリに入れ確認してみると、どうやらこれはメタルアーマーのようだ。
ゲームと一緒で重量は重いがその分性能が優れている。
左腕と右腕しかないが、その内集まったら装備する事にしよう。
ウイーンーーガシャーー
「こ、これは⋯⋯目が回ります」
管理官を見るとクルクルと回っている。その姿を見ていると、私まで目が回りそうだ⋯⋯。
ガチャーー
プリンがいくつもある扉の一つを開けた。
「おい、こっちだ!」
私は回転しながら手を伸ばすプリンの手に捕まり、何とか一つ目の部屋に入る事が出来た。
「私を置いて行く気ですか?」
私が部屋に入り管理官のほうを見てみると、管理官は回転しながらそう言った。
何度か試みたが、ロボットの為手を伸ばす事が出来ず、私達がいる部屋へ入る事ができなかった。
「管理官、もっと外側に来て!」
私がそう言うと管理官は回転床の外側へ回転しながらも移動した。
管理官をそのまま抱きかかえ、プリンに体を支えてもらいながら体を乗り出した。
「ふぅ⋯⋯」
ようやく部屋に入る事が出来た私達は一息付くのもつかの間、その入った部屋を見て更に驚愕した。
「え⋯⋯何、この部屋?」
その部屋は銀色の筒状の通路がいくつもあり、その筒の中を覗いてみるとどれも見た目はすぐに行き止まりのようだ。
筒の奥の行き止まりは全部で5つあり、どれも奥の壁に渦のように奇妙に動いているものがある。
「この渦みたいなやつ⋯⋯なんだろうね?」
私のその言葉にプリンは不思議な顔をしてその渦に触れた。
「うぉ!」
プリンが驚いた声を出したと同時にプリンの姿は私の目の前から消えた。
「え⋯⋯? プリン? どこ行ったの?」
私は不安になりプリンを探す為、同じように渦に触れようとしたその時ーー
「おい! テン、聞こえるか?」
どこから聞こえているのかわからなかったが、間違いなくプリンの声だった。
「うん、どこにいるの?」
「俺は大丈夫だ。ここは小部屋に繋がってるみてぇだ。何もねぇからお前は別の渦を調べてくれ」
そう言うとプリンの声は途絶えた。
他の渦を探せって言ってもどこから行けばいいんだろう⋯⋯。
とりあえずプリンの指示通り私と管理官は別の渦に入る事にした。
「管理官、ここに入ろう」
まだ回転床の影響で目が回っている管理官を無理やり引っ張り別の渦に入ろうとした。
「私はここにいます⋯⋯気分が悪いです」
管理官はそう言うとそこから動く気がないようだ。
仕方なく私は管理官をその場に置いて、一人でその渦へ入る事にした。
「うわっ⋯⋯!」
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