38話 バラバラの三人衆 ~血だらけの穴~
「いいか、あいつの隙を見てこの部屋から逃げるぞ」
「うん⋯⋯わかった」
プリンはそういうと、女が乱射しているその隙を見つけようと、女のほうをずっと見ている。
血が⋯⋯私の肩から溢れ出てくる血が⋯⋯止まらない。
「よし、テン。俺が合図したら部屋の扉まで一気に走り抜けるんだ、いいな?」
私はプリンの言葉に静かにうなずいた。
今は言葉を出せる気力がない。
無事に扉まで走れるかもわからない。
しかし私の気持ちは関係なしにその時はやってきた。
しばらくすると銃声は止み、プリンは私の方を見て声をかけた。
「テン、今だ! 走れ!」
私はその声と同時に扉を目指して、出来る限り全力で走った。
しかし⋯⋯。
「逃さないわよ⋯⋯」
女はそう言いながら私の肩に付いている血を舌らしきもので舐めとった。
「うっ⋯⋯」
ビリビリと走る痛みに私は耐え切れず足を止めてしまった。
女は遠くにいたはずーー私は恐る恐る振り返るとそこには、遠くからでも届くくらい長い舌を伸ばし私の傷口をえぐってくる女の姿があった。
私の腕に長い舌を巻きつけて、二又になっている舌先で私の肩に滴る赤い液体を舐めとっている⋯⋯銃弾により体に空いた穴に、女の長い舌が絡みついて傷口を更にえぐってくる。
傷口がさらに広がり真っ赤な血が噴き出ている。
「あぁぁぁぁぁぁ!!」
その痛みに耐え切れず叫びを止める事はできなかった。
もうダメ⋯⋯耐えられない。
既に腕には感覚はなく、出血多量で死ぬんじゃないかってくらい血が噴き出ている。
「あなたの血⋯⋯とてもおいしいわ。これでまた私は強者へ近づいていくわ。ありがとう⋯⋯」
女はそういいながら私の傷をえぐっていく。
「テン! くそっ⋯⋯」
ドドドドドーーピュンーー
プリンはもの凄いスピードで近寄りながら銃を乱射し、近くにきた瞬間に銃口の反対側で女を殴った。
体勢を崩した女は私から離れ倒れた。
「大丈夫か? テン。お前、怪我してたのか?」
「クッ⋯⋯先に男を殺しておくべきだったわね」
女はそう言うとプリンの首に長い舌を巻きつけ、蛇のように長い尻尾をプリンの体に巻き付けて絞め殺そうとしている。
「や⋯⋯やめて」
私は意識が朦朧とする中、プリンのほうに手を伸ばしそう言った。
「テン⋯⋯逃げろ」
プリンは息苦しそうに私に言葉を投げた。
逃げれるわけがない。絶対にプリンを置いて逃げないし。
でもまじでやばい⋯⋯意識ははっきりしないし、血は止まらないし。
「ふふ~ん⋯⋯なるほどね」
女はそう言うと今にも絞め殺そうとしていたプリンから離れ、私に近づいてきた。
「いや、来ないで⋯⋯」
「ゴホッ⋯⋯ゴホッ⋯⋯テン、逃げろ!」
首を絞められていたプリンは一瞬で解放された為、勢いで地面に手をつき、むせながらも私にそう投げかけた。
逃げれないーー私はもう立ち上がれないほど傷ついていた。
「プリン⋯⋯私はもう歩けない⋯⋯プリンだけでも逃げて」
私はそう言うしかなかった。
私も死んでプリンも死ぬとかありえない。
せめて、プリンだけでも生きてほしい。
そして、大輔を見つけて私の事を伝えてほしい。
ーーそう思った。
「冗談は面だけにしとけ」
プリンはそう言うと再び女に銃声を浴びせた。
女は私を抱えてもの凄い勢いで飛び上がり、女の目の前に私を突き出した。
「これでも撃てる?」
そう言うと女は私が来ているアーマーや下着を噛みちぎり、私の肩に噛みついた。
「あぁぁぁぁぁぁ!!」
更に私の体から血があふれ出るーー。
半裸の私の体は真っ赤に染まり、私はもう死ぬんだと⋯⋯覚悟した。
「プリン⋯⋯私ごと⋯⋯撃って」
「ふん⋯⋯彼にはそんな事はできないわ。そんな事をする前に、私があなたの血を全て吸い尽くすわ。アハハハ。
彼も、あなたのこの真っ赤に染まった体を見て、興奮しているはずだわ⋯⋯あぁ、なんて美しいのかしら。血で染まったこの体⋯⋯ほら、顔を上げてごらん」
女はそう言うと、舌を私の首に巻き付け舌の力で私の顔を上げ、前を向かせた。
私の視界はもうほとんど見えてないけど、それでもプリンの困った顔だけは想像できた。
もうプリンを困らせたくない。
「見ないで⋯⋯撃って⋯⋯プリン」
私を見ると撃てない、だから見ないで撃って。
プリンならできるはず⋯⋯。
パァンーー
私の意識はもう限界⋯⋯意識が途絶えつつある中で、一発の銃声だけが私の脳裏に響いた。
それと同時に私は地面に崩れ落ちるのがわかった。
そっか、プリンは撃てたんだね。
それでいいんだよ。
私は恨まないよ。
むしろ感謝してるよ、プリンには⋯⋯ありがとう。
バタッーー
遂に私の意識は途絶えたーー
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