32話 真っ赤な巨体 ~地雷の海~

ザァァァーー



「今日は雨か」



 私はテントに当たる雨の音で目が覚めた。すごく嫌な音。


 あれからあまり日にちは経ってない。早くグリーンヒルズ菜園に向かわないと。



「グリーンヒルズ菜園には後5日で着く。余計な寄り道しねぇで、とっとと行くぞ」



 プリンはそう言うと銃を片手にスタスタと歩き出した。

 どうやらもうあまり休憩をする気はないみたい。まぁ、昨日の事があったから仕方ないけど。

 私はテントを片付けてプリンの後を追った。



 それにしても血だらけで私の前に現れたから、また死にそうなのかと思ったけど敵の返り血とはね。

 なんかプリンらしいけど。もう死にそうになるとか本当にやめてほしい。

 あんな思いしたくないし、私今一人になったら耐えられなくて死んじゃうよ。

 私、メンタル弱いから。


 まぁ無事だったからいいけどさ。それにしても後5日もあるのかぁ。

 遠い道のりだな。なんかプリンいつもと違ってあんまり喋んないし。

 やっぱり昨日の事があって疲れてるのかな?

 少し歩いたら休憩した方いいんじゃないかな?

 でもどうせプリンに言っても、必要ねぇとかって言うんだろうな。


 まぁいいか。5日も歩き続けるのは無理だし、放っておいてもその内休むよね。




「おい注意しろよ、この辺は地雷が多い」



 考え事をしながらボーッと歩いてる私に、そう言いながらプリンは地雷を避けながら道の端を歩いている。



「え? 地雷とか、また? もう勘弁だよ」



 本当に勘弁。あの頭おかしい男がいた研究所に設置されてた、大量の地雷を見つけてから私は地雷恐怖症になった。

 いや、ゲームでもめちゃくちゃ地雷踏みまくって死んでたから、元々地雷は嫌いだけどね。

 でもゲームで地雷見るのと、実際に目の前にするのとじゃ違うしね。

 実際の方が断然怖かった。まぁそれでもスチムパックを取りに行こうとした私は、相当バカだよね。

 だから大輔にいつもバカにされるんだよ⋯⋯。



ピピピピピーー



「あぁ! なんでいつも踏んじゃうのよ!」



 地雷を避けて歩いてるつもりだったけど、地面に潜っていた地雷を踏んでしまったらしい。



「ったく⋯⋯急いで走れ!」



 私達は全速力で地雷の海を駆け抜けた。



ピピピーーピピピーーピピピピピーー



 すると地雷が地雷を感知し、私達が通った所が順々に起動されてしまった。



ピピピーーボォンーーピピーーボンーーボォン



「ふぅ~あっぶなぁ!」



 私達はなんとか地雷の海を突破したようだ。ゲームみたく、咄嗟にジャンプする事はないから、まだマシかな。



「あっぶなぁ、じゃねぇよ。気ぃ付けろ」



 プリンはさすがにお怒りのようだ。確かに死ぬかと思ったけど、そこまで怒んなくてもいいじゃん。

 死なずに済んだんだし!



 私達は地雷の海を通り過ぎると、目の前に小さな農園のような場所を見つけた。目的のグリーンヒルズ菜園ではないみたいだけど。


 プレハブのような造りの建物を2つ繋げて、その間に畑が数個と馬小屋みたいなものがある。

 馬もいるみたいだけど、この馬大丈夫なの? RADにやられて凶暴化してないかな?



発見 サメル農園 EXP50



#__i_85681673__#



 あ、発見しちゃった。っていうか発見経験値たかっ!

 まぁでもさすがにまだレベルは上がらないか。そういえばプリンってレベルどんくらいあるんだろ? 凄い強いけど。

 この世界、人のレベルとか見れないからな。名前すらわかんないし。



 私が目の前の小屋の前で棒立ちしていると、小屋の中から人が出てきた。

 アゴヒゲを生やして髪が短く⋯⋯っていうかボウズ? それで銀髪に⋯⋯筋肉質の男だ。

 これもプレイヤー? だめだ、もう全員がプレイヤーに思えてきた。本当にNPCは消えてなくなっちゃったんじゃないの?


 このゲームの世界、大丈夫かな? NPCが消えちゃったら、ゲームとして成り立たなくない?

 まぁそもそも私達がゲームの中に入り込んだ時点で、ゲームとして成り立ってないけど。



 歩いてきた男は私達の前で立ち止まり話しかけてきた。




「あいつを⋯⋯見なかったか?」

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