20話 生と死の狭間 ~ミュートンの巣~

「よしっ!」



 まずV.A.R.T.S.バーツを起動して⋯⋯いやっ! 木が邪魔で上手く狙えない。

 もう少し近付くか。



「ニンゲン タオス」



 やばっ! 気付かれた。

 ミュートンは結構索敵範囲広いからな。


 って⋯⋯どうしよ。近付いてきたよ。

 V.A.R.T.S.バーツ⋯⋯V.A.R.T.S.バーツ! よし。頭を狙って⋯⋯。



ピピピーー命中率83%



 ちょっと離れすぎてるかな。まぁでも83%ならいけるか。



パンパンパンーーカシャーーパンパンーー



 こちらに向かって走って来るミュートンは、銃弾が脳天を突き抜けて頭が勢いよく吹き飛び、時間差で重そうな胴体がその場にドスっと音を立てて倒れた。



「やったー!」



 V.A.R.T.S.バーツは賢いから弾が切れたら自動で装填ささるけど、その間は時間の流れが遅くなってるとはいえ、はっきり言って無防備になる。


 けどまぁ⋯⋯序盤の強敵とも言えるミュートンを一人で倒した事に、私は有頂天になっていた。



ピピピピピーー



 え? あれって爆弾ミュートンじゃん!

 嘘でしょ? こっちに向かってきたよ。爆弾ミュートンは、爆弾持って走ってきて自爆するから、やっかいなんだよな。


 よし、こういう時はアサルトしかない!

 ピストルでちまちまやってちゃ、自爆されて死ぬし。



「いっけぇぇぇ!」



ドドドドーーピュゥンーードドドドーーピュゥン



 え、なにこれ? すっごい気持ちい! 爽快感ありすぎ!


 あっという間に死んじゃったし。でも弾少ないな。消費早いし。

 やばくなった時だけ使おう。


 私はアサルトライフルを背負い、再びピストルを手に持った。



「あれ? こっち二匹しかいなかったの?」



 私は近くのミュートンを全て倒し、プリンが待っている入り口に向かった。



「ニンゲン キライ」

「ニンゲン コロス」



 えーーっ!! まだミュートン残ってんじゃん。


 入り口に向かうとそこには二匹のミュートンが、待ち構えていたかのようにミニガンを構え立っていた。



ーードゥルルルルル



「いやぁぁぁ!!」



 容赦なく襲ってくる銃弾に、咄嗟に背を向け叫びながら走った。



パンパンーーパンパンーー



「ったく、何してんだよ」



 その声に振り向くと、プリンがミュートンの頭を撃ち抜き倒れた死体の横に立ち、呆れた顔で私を見ていた。


 何してんだよって言われても、敵がいないと思って近寄ったら、いたんだよ? ミュートンが。しかも二匹も!

 普通逃げるでしょ。



「大丈夫か? さっさと行くぞ⋯⋯」



 そう言ってプリンは建物の中へ入っていった。



「待って! 私も行く」



 ため息をつきながら、建物の中に入って行くプリンの後を追い、私も中へ入った。


 するとーー



「ニンゲン シネ」

「ニンゲン ヤツケル」

「オデ ニンゲン キライ」



 待ち構えていたミュートンが沢山いた。


 建物の中に入ると、入り口が少し広めの部屋のようになっていて、その中心には数本の柱がある。

 その柱には、何かの脳みそのようなものが網目糸の袋に入っている、グロい物がぶら下がっていた。



「うぇっ⋯⋯」



 私は思わず吐きそうになったが、手で口を押え徐々にのぼってくる胃液を押し込めながら、側の柱に身を隠した。



「おい、そっから狙えるか?」

「う、うん。やってみる」



 私の隠れている場所からミュートンが狙えるか、まずはV.A.R.T.S.バーツを試してみる事にした。



ーードゥルルルル。



 そうこうしている内に、ミニガンを構えたミュートンがノソノソと歩きながら、乱射してこちらに向かってくる。



「だめだ⋯⋯こっからじゃ狙えない」



 ちょうど向こうの通路の所にミュートンが隠れていて、こっからじゃV.A.R.T.S.バーツでは狙えなかった。


 向こうだけこっちが見えてて、ミニガン乱射とかズルすぎでしょ⋯⋯。



「チッ⋯⋯ちょくら殺してくる。お前はここにいろ」



 プリンがそう言うと、銃撃が止まった瞬間に素早い動きで、別の壁に移動しミュートンを狙い撃っている。



「ちょっと! もう⋯⋯」



 ここで待ってろとか言われても⋯⋯私だって助けになりたいし。


 そこで私は、一階のミュートンはプリンに任せて二階にいるミュートンに狙いを定め移動した。



「あのミュートンを狙うには⋯⋯あそこの陰に行けばいけるかも!」



 私は二階にいるミュートンを狙える場所に行こうと、広間の中央にある飾りが施されている比較的綺麗な車の陰に移動し隠れた。



シュッーー



「⋯⋯よし!」

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