エピローグ

第29話 エピローグ

「むにゅぅーもう食べられないのですー……」

 みなが帰った後、ひなたはソファーの上でぐっすりと眠りについていた。

「遊ぶだけ遊んで疲れたら寝る。昔から変わらないな」

 隣で眠る妹の頭を優しく撫でながら、護は笑みを漏らす。そして、二人きりで静かになった部屋の中で、今日のひなたの話を思い返す。

「でも、少し大人になったのかもな」

 ずっと自分にくっついてきた妹が、少しばかりだけど自立しようと頑張っていた。それは紛れもない成長の兆しであり、それは同時に兄である自分からの自立の兆しでもあり。嬉しいような、どこか寂しいような、そんな複雑な気持ちになってしまう。

「さて、俺は後片付けでもするかな」

「お兄ちゃん……」

「え?」

 立ち上がろうとしたところで袖を引かれ、護は振り返った。傍には頬を紅潮させた妹が横になったまま、自分の瞳をじっと見つめていて。

「女として愛しているんですよ?」

「っ!?」

 艶やかなウィスパーボイスで囁かれて、思わず動揺してしまった。

「ひなた……それは一体どういう……!?」

「ふみゅぅ……」

 ひなたは掴んでいた袖を離し、ソファーの上でごろりと寝返りを打った。そのままソファーから落ちそうになる妹を、護は慌てて受け止める。腕の中の妹はすやすやと寝息を立てている。

「寝言、か」

 護は胸を撫で下ろした。

「そうだよな、兄妹だもんな」

言いつつも、妹にどきどきしてしまった自分を悔いるように、護は恥ずかしそうに頭を掻いた。そんな護の苦悩も知らず、腕の中で眠る妹はいい夢を見ているのか、とても幸せそうに頬を緩めていた。

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天然少女は企んでいる 御茶ノ宮悠里 @OtyanoMiyaYuri

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