第26-2話 ひなたがんばる(2)

「おっ掃除~! おっ掃除~! 綺麗にします~!」

 次は掃除をすることにしたらしい。ひなたは部屋の隅に置いてあった掃除機を手繰り寄せて、意気揚々と自作の歌を口ずさむ。

「あれ、全然動かないのです……掃除機が故障しています……」

『コンセントと繋がっていないぞ』

『田舎のおばあちゃんか! ほら、紺乃つけたげなさい』

「あ、ついたのです。中々言うことを聞かないなんて、掃除機さんは面倒くさい性格をしているのですね。まるで千瀬ちゃんみたいです」

『アァ?』

『こらえて!? ひなたちゃんの言うことなんだよ!?』

 拳を振り上げた千瀬を、紺乃は飛びつくように取り押さえた。

 一方、ひなたは笑いながら掃除機を動かし始めたところで、

「あ」

 次の瞬間、棚に置いてあった陶器の置物がガシャンと音を立てて壊れた。

「ど、どど、どうしましょう!? とりあえず箒を――あぅ!?」

 廊下へと駆けだそうとしたひなたは掃除機を手放すのを忘れていた。結果、振り回された機体が勢いよくテーブルにぶつかり、上に置いてあったお皿が落下してバリンと割れた。

「えっ、えっ!? なんでそうなるんですか!?」

 混乱したひなたが割れたお皿のほうへと近づこうとした、その時。掃除機のコードが椅子に絡まっていたのか、ぴんと張られたコードにひなたは足を引っかけてしまった。

「ふにゃああああ!?」

勢いよく前に転ぶひなた。その胸ポケットに入れてあった携帯が、その勢いで空中へと射出される。前方へ飛んで行った携帯はお皿や茶碗を収納した食器棚にぶち当たり、その衝撃によって棚が一段ごとガタリと滑り落ちた。当然、棚に置いてあった食器は全て落下する。

「あ、ああああああ……」

バリバリバリーンと。悲惨な音とともに無力なひなたの声が響いた。

『なんですのこれ……どこのピタゴラスイッチですの……』

『冗談言ってないで助けるぞ。割れたガラスによる二次被害、三次被害が怖い』

『命令するなですの。しかし、この短期間で全てのガラスの破片を片付けるのは難しいですのよ』

『超次元圧縮式空間消滅砲を使えば楽勝だ!』

『設定だけは間違えないでくださいまし』

「あれ……全部なくなってます……?」

 ひなたがリビングに戻ってくると壊れたはずのものが全て消えていた。

『さすがに怪しかったか?』

「これは……わたしの隠された能力が開花したのでしょうか」

『天然で助かった』

 彼方は胸を撫で下ろした。

『まったく天然で困るわ。そこは『敵のスタンド攻撃か!?』よね』

『本当にそのツッコミは正しいんだよ?』

 ちなみに、箒を取りにいったはずのひなたの手には、なぜか入浴剤が握られていた。

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