第17話 ダンジョンに新しい階層が生まれてた
田助は自分の脳内マップで現在位置を確認する。
「……間違いない。確かにここは突き当たりで、行き止まりだった」
「ですが、今は階段がありますね」
「つまり!」
「つまり?」
「どういうことだ、アンファ?」
田助はアンファに尋ねた。
アンファは見た目かわいらしい赤ちゃん以外の何ものでもないが、その正体はダンジョンコアなのである。
つまりこの場で一番ダンジョンに精通している存在と言ってもいいだろう。
「た~!」
アンファはご機嫌な笑顔を浮かべて、両手を挙げてみせる。
「なるほど。さっぱりわからん」
アンファががっくりとうなだれる。
どうしたものかと田助が思っていると、
「田助様、アンファ様を鑑定していただけますか?」
衣子が突然、そんなことを言い出した。
「いいけど、どうしてだ?」
「鑑定していただいた後でお話しさせていただきます」
よくわからないが、アンファを鑑定して欲しいらしい。
というわけで、アンファを鑑定する。
――――――――――――
名前:アンファ
性別:女
年齢:0歳
職業:ダンジョンコア(幼体)
レベル:2
HP 121
MP 70
力 107
体力 94
知力 86
俊敏 85
器用 108
運 123
スキル:ダンジョン創造/ダンジョン管理
――――――――――――
その結果がこれだ。
「アンファ、レベルが上がってるじゃないか!」
「むふー!」
田助の言葉に、どんなもんだいとアンファが胸を張る。
その姿がかわいらしくて、愛らしくて、田助はアンファを思いきり抱きしめて頬ずりした。
「先ほどのアンファ様の発言ですが」
衣子の声に田助は我に返って、「ああ、うん」となる。
「レベルが上がったため、新しい階層を作ることができるようになったということらしいです」
「そうなのか、アンファ?」
「た~!」
そうらしい。
「けど、それならどうして俺に教えてくれなかったんだよ。水くさいじゃないか」
「たーう」
「アンファ様は田助様を驚かせたかったんですよね」
「たー! たーぉ?」
「どうですか? 驚きましたか?」
「驚いたし、めちゃくちゃ興奮してるよ!」
今までのダンジョンでも充分ワクワクしていたが、新しい階層ができたということは、今後、アンファがレベルアップすればさらに新しい階層が増えていく可能性があるということではないか。
「ありがとな、アンファ!」
「た~」
思いきり抱きしめ、それから腕を伸ばしてアンファを見つめれば、ぷにぷにの手で顔を隠して照れていた。
「ふふ」
そんな田助とアンファを見て、衣子が微笑んでいる。
「けど、衣子。アンファが何を言っているのか、よくそこまで正確にわかるな?」
田助も何となくはわかるが、それでもここまで正確ではない。
「もしかしてあれか? ふたり、一緒にいる時間が長いから友情に芽生えた的な」
「いえ、まったくの偶然です。ですよね? アンファ様」
「たーう」
うなずき合う二人である。
「え、そうなの? マジで……?」
「はい」
「たーぃ!」
まったく同じタイミングでうなずき合う二人である。
どう考えてもめちゃくちゃ仲好しにしか見えないのだが。
いえーいとハイタッチしているし。
「何にしても階層が増えたおかげで、また新しい発見ができるってもんだ」
胸が熱くなる。
「けど、アンファはどうやってレベルアップしたんだ?」
WEB小説の定番ではダンジョン攻略にやってきた冒険者を倒したり、取り込むことでダンジョンがレベルアップしていた気がするが。
「まさか俺の知らない間に冒険者を退治していたとか?」
「むー」
していないと首を振るアンファ。
「ちょっといいですか?」
と言い出した衣子には仮説があるらしい。
「たとえば私たちが病気になった時、体内に抗体が作られますよね」
「
「ええ。アンファ様のレベルアップはそれと同じことが起きたのではないでしょうか?」
衣子に言われたことを自分の頭の中でかみ砕いて考えてみる。
「つまり……俺がダンジョンでモンスターを退治しまくったから、それに対応するためにアンファのレベルが上がったってことか?」
「はい」
それが本当だとしたら最高なのだが。
田助がダンジョンを堪能すればするほど、ダンジョンの階層は増えていき、ますます堪能できるという好循環。
まさに絵に描いた様なWINWINの関係!
これは後日談になるが、実際にモンスターを倒しまくることでアンファのレベルが上がり、衣子の仮説が証明された。
「ああ、もう! 俺が手に入れたダンジョンコアがアンファでよかった! これからもよろしくな、アンファ!」
「たーぅ!」
田助がアンファを抱きしめ、その蒼色の髪をくしゃくしゃになるまでかき混ぜれば、アンファは何ともくすぐったそうな、しあわせそうな顔をするのだった。
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