第145話 ルークと秘密の部屋

ラト師匠が、門へと着くと、2人の門番へと声をかける。

「おはよう。今日もポーションを持ってきた。」

「おお。これはラト殿。いつもお疲れ様です。」

どうやら、顔見知りのようだ。

黙って師匠の後ろに立っていると、門番の1人がこちらを見て、その後師匠へと視線を移す。

それを察した師匠が私を紹介してくれた。

「これは儂の弟子で、ルークという。」

「ルークと申します。よろしくお願いします。」

と挨拶をすれば、予想外の反応が返ってくる。

「おお!君がルーク殿か。」

と、何やら友好的な雰囲気だ。

何故かと思っていると、すぐに答えを教えてくれた。

「なに、アントン達から話を聞いていてね。」

とのことだ。

聞いてみれば意外でもないが、レイ様達が共和国への留学を終え帰ってきた際に、盗賊に襲われたこと、私たちがそこへ通りがかり手助けをしたこと、そのまま1年護衛をしたことなんかを聞いていたらしい。

どうやらその中に、仮面をつけた冒険者の話もあったのだろう。

「俺たちはラト殿のポーションにはよく助けられているからな。その弟子で、凄腕の冒険者となれば気にはなるさ。ましてや、レイ様があれだけ褒める人物だからね。命の恩人だと、何度も話しているよ。」

とのこと。

まず、やはり師匠と門番達は顔見知りだったようだ。

当然だが、師匠のポーションはゼルバギウス家の騎士達にも人気らしい。

そしてここでもレイ様からは過分な評価を受けているようだ。

「命の恩人など。私達がいなくとも、レイ様達なら問題なかったかもしれません。」

「レイ様達だけならそうかもしれないが、あの時はミリアーヌ様もいらっしゃったんだろう?」

「それは、そうですが。」

「それに、君を含めて仲間達も凄腕なんだろう?」

仲間を引き合いに出されればなにも言えない。自慢の仲間達だ。

「では、いつものように、で構わないかね?」

と師匠が問いかけると、

「あ、はい。どうぞ。」

そう言って門を開けてくれた。

私達は、彼らに見送られ門の中へと入るのだった。


その後師匠に連れられて、敷地内のある建物まで来た。

目の前には、横に長い四角形の建物。高校なんかの部室棟を連想させるようなシンプルな作りだ。

ここに来るまで、師匠の足に全く迷いが見えなかったのは、それだけここに頻回に訪れているということだろう。

遠く、でもないな。

ここからは見えないが、どこからか怒号や金属がぶつかる音が聞こえる。

おそらく敷地内で、騎士達が訓練をしているのだろう。

師匠はそれに構うことなく、目の前の建物の扉を開け、中へと入っていく。

私もそれに続いた。


中もまた無骨な印象だった。

入ってすぐに左右へと伸びる廊下と、上への階段がある。外からもわかっていたが、2階建ての建物のようだ。

廊下を見れば、すぐ近くの部屋の前に団長室と書かれているのが見える。

もう少し奥には、会議室など。

どうやらここは騎士団の待機所のような場所らしい。ここからは見えないが、おそらく備品庫などもあるに違いない。

と、ここまでほぼ黙って歩いていた師匠が口を開く。

「ここらかの道はよく覚えておきなさい。」

そういうと師匠は改めて歩き出した。

まずは左へと進んでいく。

先程話した、団長室や会議室などを超えて、そのまま歩いていく。

が、師匠が急に止まった。

壁の前でなぜ?と思った次の瞬間、師匠が手を伸ばした瞬間、そこに部屋があることに気がついた。

これは後で聞いた話だが、なんでも認識を阻害する魔道具があるそうで、選ばれたもの招かれたものでなければ部屋の存在にも気づかれないのだとか。

実際に私が体験したのだ。

そんな技、魔法があるとはつゆと知らなかったが、体験した以上、納得をせざるを得ない。

そこには、備品庫と書かれた扉があった。

向かって右手。奥から2番目だ。

師匠はその部屋へと入っていく。

当然私も後に続いた。

そこは備品庫という名前の割にものは置かれていな。

私が部屋に入るやすぐに扉を閉めるように言われる。

やはりこの部屋の存在は秘密なのだろう。


私達が部屋に入ると、果たしてそこにあったのは、地下へと続いていく階段だった。

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