第98話 調査依頼の結果
結局、ダンジョンから戻った翌日はほぼ1日寝て過ごしてしまった。
そして今日、私達は改めてギルドへと来ている。
「おはよう。昨日は休めたか?」
「あら、おはよう。今日もよろしくね。」
ムバラクさん達、マフムードさんとそれぞれに、挨拶を交わす。
何故かマフムードさんがユニにウインクをして、ユニも笑い返しているが。
まあ、ダンジョンから出るときにも2人は仲が良さそうだったし、馬が合うのだろうか。
挨拶を済ませギルドに入ると、こないだの部屋に案内された。
程なく扉が開く。
「今日はわざわざ来てくれてありがとう。」
入ってきたのは、ギルド長のナセルさん。
座るなりそのまま話を始める。
「では、早速こないだの話の続きをしよう。まずはマフムードが生け捕りにしてくれたダンジョンアントだが、いくつか特徴が分かった。」
それは今後に役に立ちそうだ。
「あの後持ってきて貰ったダンジョンアントも調べたら、少ないが全体の1割ほど似たものがいてね。」
ナセルさんによれば、
まず大きさに関しては普通のダンジョンアントのうち最も小さいものに比べても、更に一回り小さい。
また、顎に関しても小さく、普通はある曲線部分がほとんどなく、直線的な形状をしており、内側に向けての棘が数本生えていたらしい。
ここから毒を流し込むのだろうか。
「まあ、私達に分かるのは見て分かることくらいだがね。なんにせよ、ソフィテウスには事情を話しもう専門家が向かってくれているらしい。」
実質新種の発見だ。専門家からすれば、居ても立っても居られないのはらしい話だ。
ちなみに生け捕りにした個体は、マフムードさんの袋を借りてそのまま生かしておくらしい。
餌やりは危険なため元冒険者であるナセルさんの仕事になったとか。
「それで、もう1つ。大剣級と名付けられたソードタイガーについてだが、これも分かったことは少ない。」
大きさに関しては、言うまでもなく普通のソードタイガーの数倍。
また背中の剣と呼ばれる棘の数も大剣級の方が多く、初めての戦闘の際に振るわれた尻尾の瘤は大剣級の特徴らしい。
そして、皮を始め素材自体の強度も大剣級の方が優れているようだ。
つまるところハイリスクハイリターン。
「今後も調査は必要だが、もし手練れによって普段から素材が手に入るようになれば助かる面もあるだろう。」
ただ、気になるのはマフムードさんが見つけられなかったと言うこと。
ダハのダンジョンにしか出ないとなると、今まで初心者用とされていたダンジョンの難易度が変わってしまい、同時にギルド側のサポート体制も変える必要が出てくる。
「それも踏まえて今後も調査はしないといけないだろうね。」
そうナセルさんが、締めくくった。
まあ、なんにせよ今回は私達は報告を聞くだけだ。
今後の調査結果がどうなるかも気になるが、いつか分かれば嬉しい物だ。
その後報酬を受け取る。
調査依頼の金貨1枚に、素材の方はとにかく平等に等分することにして1人9枚。
なんと1人金貨10枚という収入になってしまった。年収換算にして3年ちょい。
ちなみにアイラに関して。
今回ははっきりとした活躍はないが、集団行動において回復役がいるという安心感は大きい。
それはこの場の全員が理解しており、アイラにも他の人と同様の報酬が出ることに反対は出ない。
「本当にいいのか?」
むしろアイラ自身が1番困っているくらいだった。
やることを終え、ギルドを出る。
「じゃあ、ここでお別れだな。」
「ええ。ムバラクさん達もお元気で。」
ムバラクさん達は、ダハの町に戻るとのこと。
時間そのものは大したものではないのだが、ここ数日の内容が濃かった分、随分と印象に残った気がする。
いつかまた機会があれば出会いたいものだ。
そして、マフムードさんなのだが。
「じゃあ、このまま馬車を拾いましょ。」
なんと、一緒にマフムードさんが本拠地にしているヤクトの街へと行くことになった。
というのも、そもそもの予定では実はダハの町のダンジョンを出た後はここで最初に寄った港町ラーカに戻って船で王国まで行くつもりだったのだが。
予期せず隣町まで来てしまい、それならもう1つの港町イルサに行ってしまおうと昨日宿屋で話して決まった。
そしてそれを先ほど話したところ、マフムードさんから、ならヤクトまで一緒に行かないか、と提案があったのだ。
私としてはどちらでもいいのだが、ユニが随分乗り気で驚いた。テオやアイラからも反対は出ず、今の状況というわけだ。
「なんかあったのかな?」
前を行くユニとアイラ、それとマフムードさんに目線をやりながらテオが話しかけてくる。
ユニとマフムードさんが親しいことについてだろうが。
「まあ、気にしてもな。そもそも悪いことじゃないだろ。」
いや、まあ。確かにマフムードさんは生物学上は男性だし、恋愛対象も女性らしいが。
3人の話をする風景が女子会にしか見えないあたり、私の神経も太くなったというかなんなのか。
なんにせよ、せっかく世界を旅しているのだ。
色んな人との出会いもまた財産なのだろう。
まだ登り続ける太陽を背に、そんなことを思うのだった。
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