閑話 もう1つの温泉会

アイラ目線


真っ白な湯気が綺麗な金髪にかかっているのを見て、改めて綺麗だな、と思った。

少し小柄で細く、しかし多くも少なくもない筋肉のついたその身体は、本当にしなやか、っていう言葉がぴったりで。

その姿は、女のあたいから見ても、なんとも言えない色気があった。

その滑らかな肌は、あたい含めて世界中の女に喧嘩を売っているとしか思えない。

あたいもそこまで気にする方じゃないけど、目の前にこんなのがあったら、やっぱり女の自信が傷つくのを感じちゃうもんだ。

しかも、その小柄な体に似合わず、くっついている2つの山は明らかにあたいのよりも大きい。

「アイラ?」

首を傾げ、こちらに向ける可愛らしい顔は温泉とかいう、地面から湧く不思議な暖かいお湯のせいで軽く赤くなって、それがまた彼女の肌の白さをはっきりと見せていた。


「はあ、ユニは綺麗で良いよね。」

「?ありがとう。けどアイラも綺麗。」

「お世辞はいいよ。あたいはユニみたいに可愛くないし。」

「多分、それは無い物ねだり。」

「無い物ねだり?」

「そう。アイラは綺麗。髪も綺麗な赤色だし、背も高くて手足もスラっとしてる。顔だって、鼻が高くて目もスッとしていて……」

「わ、分かった分かった!あたいから言っといてなんだけど、もういいから!」

そっか。そんな風に見えるのか。

ユニは言葉数が多いわけじゃないけど、その分ストレートに言うし、本心から言ってるのが分かるから、流石に気恥ずかしくなった。

もちろん褒められればあたいだって嬉しいけれどさ。


「それにしてもこの温泉ってのは気持ちいいんだぜ。」

「うん。ルークが入りたがっていただけはある。」

「ルーク、か。なあ、ユニとルークって、もう付き合ってるんだろ?」

「!?」

「いや、そんな、なんで知ってるのみたいな顔をされても。多分、ヴィーゼンを出る直前だよな。」

正確には、あのクソ司教をルークが殺した時だと思うけど、あんな奴のことを口にもしたくない。

「そう、だけど。なんで分かったの?」

「そりゃ、見てればさ。あたいはまだ喋ってないルークの感情はよく分からないけど、ユニはなんというか安心してる顔になったよな。」

「そう、なのかな?」

「まあ、テオが気づいてるかは分からないけどさ。」

「テオは多分、分かってない。」

「そうなのか?ユニとは双子だし、ルークとも付き合い長いんだろ?」

「だからかな。近すぎてよく分からない、みたいな。」

「ふーん。そんなもんかな。」

「アイラ。」

「なんだい?」

「テオには内緒にして欲しい。」

「ああ、良いよ。2人がわざわざ言わないのに、あたいがバラしたりしないぜ。」

「ん、ありがとう。ところで。」

「なんだ?」

「アイラはテオと、どう?」

「どうって。」


どうって言われてもさ。

実際どうなんだろう。

テオはあたいにとって、冒険者の仲間で、一緒にアレクシア教の話が出来て、たまに教会にも行っている。

2人ともアレクシア教を信じてるから話も合うし、テオは物知りだから話していて楽しいな。

それに、グラントではあたいが間違えた時に叩いてくれた。別に叩かれて喜ぶわけじゃないけど、あの時はテオがそれだけ真剣に怒ってくれてるのが、あたいにも分かったんだ。

そんな男の子は初めてだったから、思い出すと何故かドキドキしちゃう。

けど、あの時は怪我もさせちゃって。なのにテオはそのことは全然怒んないんだよな。

そんな風に考えていると、

「うん。分かったから大丈夫。」

「ふぇっ!?」

ユニの声にびっくりして変な声が出ちゃった。

「って、分かったって。あたい、声に出してた?」

「ううん。でも大丈夫。聞きたいことは分かったから。」

「聞きたいこと?」

「なんでもない。ねえ、アイラ。」

「な、なんだい?」

「これからもテオのこと、よろしくね。」

急にユニがかしこまって驚いたけど、そんなの決まってる。

「ああ!もちろんさ。」


その後もあたい達は、のぼせるまで、色々とおしゃべりを続けたんだ。

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