第50話 続・ロックリザードの討伐

しばらく歩くとすぐに異変に気づく。

右手前、いわゆる二時の方角で、私の気配探知の魔法に変化があった。

いつものように気配を感じるのではなく、何も感じない。とはいえ、そのせいで強い違和感があるため、そこに何かがあるのは確実だろう。これだけの違和感、ダイさんが心配していた群れの可能性が高い。

これが魔力を散らされるという感覚か。

おそらく、今まで気配探知に反応がなかったのはこのせいだろう。大量の群れならばまだしも、1匹、2匹では分かりそうもない。


念のためそちらに向かうと、大きな洞窟を見つけた。

気配探知を伸ばすと、奥の方に魔力的な空白地帯とでもいうべき場所がある。

「なるほど。おそらくここがロックリザードの巣になっているだろう。」

「ルーク、どうする?」

「いつもなら中まで見てみるが、今回は団体行動だ。1度戻ろう。」

「そうだね。ここは大森林じゃないし、ダイさん達に相談しよう。」

みんな異存はないらしい。

私達は足早に集合場所に向かった。


待つこと1時間ほど、他のメンバーが帰ってくる。

「早速だけどみんなはどうだった?俺たちは何も見つけられなかった。」

「俺たちもっすね。一応1匹だけロックリザードは狩ってきたっす。」

「実は…」

私が例の洞窟の話をすると、まずはみんなでそこに向かうことになった。


「皆さん。」

しばらく歩き、先程の洞窟に戻ってきた。

「ここがさっき言った洞窟ですが、魔法的な反応から、おそらくロックリザードの群があると思われます。」

気配探知の魔法のことは歩く途中で説明済みだ。

歩きながらの魔法に驚かれるかと思ったが、そこは気にならないらしい。

まあ、普段から魔法と関わりがないならそんなものだろうか。


なんにせよ、問題は目の前の洞窟だ。

明らかに奥まで続いている。

入り口は目測だが、縦は3メートル、横は5メートル程度か。

大人が集団で入っても余裕を持って歩けそうだ。

「まさかこんなところに洞窟とはな。」

ダイさんが呆然としたように言う。そして続く言葉。

「こりゃ、大変かもしれないぞ。」

「大変って、どう言うことなんですか?」

思わずと言うようにテオが問いかけている。

「ロックリザードの数が少ないのは、繁殖力が低いこともあるが、岩場の多いところに産んだ卵が、孵る前に落石で潰れたり、他の動物や別のロックリザードに食われることが多いからだ。群れを作ると言う話も聞いたことがない。」

そこで1度言葉を区切る。

「だから、もし安全に産める場所と、万が一群れを作るなんてことがあれば…」

深刻な表情のダイさん。

「ここら辺は本来餌が豊富なわけじゃない。最悪の場合、餌を求めて下山してくるぞ。」

「た、大変じゃないっすか!」

すぐさまそう叫ぶのはアーウィンさん達だ。

そしてその叫びは正しいだろう。

「万が一そんなことがあれば、ヤタの町が滅びかねませんね。」

簡単に倒せてしまったから危機感がなかったが、ロックリザードは岩を主食とした雑食で、肉も食べる。

そしてその硬い皮膚と強靭なアゴに鋭いキバは、戦闘と縁のない人々には恐怖以外の何物でもないだろう。

「とはいえ、ここにいても仕方ありません。奥に進みませんか?」

「ああ、ルークの言う通りだな。」

見たところ洞窟は深く、中は暗そうだ。

私達は収納から出した松明に火をつけ、奥へと進む。


道は一本道で、今の所迷う心配はない。

1時間も歩いだろうか。気配探知の魔法は相変わらずロックリザードの存在を教えてくれるが、姿は見えない。

その旨を伝えると、

「とにかく奥まで行ってみよう。」

と、ダイさんからの発言だ。


かくして更に進んだ私達の目の前に現れたのは広い空間。天井の穴から差し込む日の光。

そしておびただしいというべき数のロックリザード達だ。正確な数は分からないが、50匹はいるだろう。


「これは、凄いですね。」

思わずそんな言葉が漏れてしまった。

「ああ。数が多すぎる。」

「どうするんすか?このまま駆除します?」

ダイさんにアーウィンさんが尋ねている。

実際このメンバーなら対処出来るだろう。

「ロックリザードが逃げないでくれるなら、それでいいんだがな。」

日の光の差し込む洞窟は明るく、いくつもの穴が見える。おそらく私達が通った以外の入り口や通路があるのだろう。

「逃げられた挙句、町にまで行かれたら最悪だ。かと言ってこの数では応援を呼びに行く間にヤタの町が襲われかねない。」

実際問題、ヤタの町がまだ無事なのは、運が良いと呼ぶべきだろう。


しばし悩む私達。

ロックリザードを逃さず全て狩り尽くす方法。つまりは足止めか囮があればいいのだが…



仕方ないか。

「私が囮になりましょう。」

「な!?」

「何言ってんすか!?」

私の言葉に驚きの声が上がる。

いや、よく見ればユニ達は平素と変わらない。

きっと私が言いだすのを予感していたのだろう。

「それは無理だろう。」

驚きから戻ったのはやはりダイさんが早い。

「確かに数は多いですが、守りに徹すれば問題ありません。後はテオとミカさんの弓を中心に早めに殺して貰えれば。」

「いや、その心配じゃない。数回しか見てないがルークの腕が確かなのは感じたし、仲間達も心配してる風ではないからな。問題はロックリザードの性格だ。」

「ダイさんの言いたいことは分かります。」

「どういうことっすか?」

アーウィンさんの質問に答えるダイさん。

「つまりだ。最初はいいが討伐を始めればすぐに逃げてしまう。ルークが囮になっても、簡単に食えないと分かれば囮にはならないだろう。」

「なるほど。確かにそうっすね。」

そう、そこが問題だ。

ただし、今回は、というより私には、あの方法がある。


私は仮面をひと撫でし、その方法を説明するのだった。

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