閑話 師弟の会話2 国の成り立ちと奴隷という存在

「ルーク達は今頃どこで何をしてるかねぇ。」


ルークとロックがひたすら魔力を練っている頃。

クチュールから遠く離れたエルバギウス大森林の中に住むミリアは、お茶を飲みながら弟子の事を懐かしんでいた。


「ミリア師匠。また質問したい事があるのですが。」

「なんだいルーク。」

「以前冒険者の成り立ちをお聞きしましたが、そもそもグラント王国とはどういう風にして出来た国なんですか?」

「ふむ。国の成り立ちかい?」

「ええ。そもそも、何故こんな魔物の多く出る土地に国を作ろることになったのかと思いまして。まあ、その森に住んでいる私達の言えた事ではないでしょうけど。」

「まあ、それは気にするな。じゃが。国の成り立ちか。では、何故ここにグラント王国が出来たのか、話してやるとしようかね。」

「はい。よろしくお願いします。」

「この大陸にいつから人間がいるのかは分かっていない。正式な記録として残っているのは、グラント王国が出来てからだからね。今から2000年程前のことだ。しかし、その前から人はいて国があった。そして当時と今の最大の違いは絶えず戦争があった事さね。ここら辺は当時の日記なんかからの推測じゃよ。」

「戦争ですか?昔はこの大陸にも戦争があったんですね。」

「そうじゃよ。後で説明するが当時は魔物が少なかったんじゃ。そしてエルバギウス大森林近くにあったいくつもの小国を征服し、巨大な国が生まれた。それがグラント王国じゃ。それでじゃ、確か冒険者の歴史は前に話したかの。」

「ええ。確か、開拓の為に兵士を派遣したのが始まりですよね。」

「その通り。よく覚えていたな。ご褒美に焼き菓子をだそう。」

「ありがとうございます。ですが、それは師匠が食べたいだけですよね?」

「ギクッ!い、いや違うぞ。儂は可愛い弟子の為に、な。」

「いえ、別に悪いとはなにも。普通に食べたい時に食べれば良いじゃないですか。師匠のお菓子なんですし。」

「じゃって、偉い魔法使いはお菓子なんて食べないんじゃぞ!」

「なんなんですか、その謎の理屈は……はい、持ってきましたから、では一緒に食べましょう。」

「相変わらず念力の魔法を小器用に使うのう。ま、まあ。弟子に勧められては、仕方ないの!それで、どこまで話したかのう?…うん、美味い!」

「食べるか話すかどちらかに、と言ったら師匠は食べる方を選びますね。まあ、いいです。確か、冒険者の話を思い出したところですね。」

「おお、そうじゃそうじゃ。それでだ。当時開拓地はあちこちあったが、最大の開拓地はすぐそばにあったここ、エルバギウス大森林じゃった。人々は木々を切り土地を広げ、そして魔物と出会ったのじゃ。」

「何故そこで魔物が出てくるのですか?」

「簡単じゃよ。森を切った事で、魔物の住む深い土地が、人間のすぐ隣の土地になったんじゃ。今、浅層と呼ばれている場所は昔はもっと奥にあり、そこと人間の土地の間には広い森があり、それが人知れず魔物を避ける盾になっていたわけだ。」

「なるほど。土地を広げたことによって、その盾が取り払われたと。」

「その通り。」

「そして兵士たちが魔物を討伐したのですね。」

「途中からはの。」

「途中から?では、初めはどうしていたのですか?」

「奴隷じゃよ。」

「奴隷!?確かこの世界には奴隷はいないと聞きましたが、かつては奴隷がいたのですか?」

「そうじゃ。かつてグラント王国は、戦争に敗れた国の民を奴隷として使役していた。そして魔物が出た時には、魔物の相手をさせていたのじゃよ。」

「そんな事が。しかし、それなら何故今は奴隷がいないのですか?」

「ある時代の、慈愛王女マールと呼ばれる人物が王に進言し、奴隷を解放させた、と言われておる。」

「なんと。そのような素晴らしい人物がいたのですね。」

「まあ、嘘じゃがな。」

「は?嘘?」

「嘘というか、民衆用のおとぎ話じゃよ。多少歴史を学んだものは誰も信じとらん。」

「では、何故?」

「1番有力な説は、奴隷達が魔物との戦闘を経て力を付け、いつか反乱するのではと、恐れたある王がいた。その王が、彼らを兵士として取り立てたのを皮切りに、徐々に奴隷達を国民として受け入れたと言われておる。まあ、本当のところは分からんがな。」

「なるほど。そういえば戦争は、その後どうなったのですか?」

「グラント王国が魔物の対応に悩んでいる頃、王家の支配を嫌った貴族が南に作った国が共和国と言われている。で、魔物に悩む王国も、出来たばかりでまだ纏まりのない共和国も戦争を避ける必要があったんじゃよ。その後も色々と理由はあるが、なんとか戦争をせずに済んでおる。」

「なるほど、そうだったのですね。ありがとうございます。今日の話もとても興味深かったです。」

「なに、可愛い弟子からの質問じゃ。また気になることがあればいつでも聞きなさい。」

「はい、師匠!」

「その時には、焼き菓子も用意するといいかもしれんな。」

「はい、師匠…」




場所は戻り、クチュールの森。日は既に傾き始めている。

「お疲れ様でした。まあ、ずっと魔力を練っていただけですが。無事に板に穴も開きましたし、明日の成功を願っています。」

「本当に先生には感謝してるぜ。明日はきっと期待に応えて見せる。」

男達の訓練は終わっていた。


祭りは、すぐ明日に迫っている。


「ごめん、ルーク。船がいっぱいで予約が取れなかったよ。」

さて、どうしようか…

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