第42話 初デート

さて、今日はどうしようか。

「みんなは何かしたい事はあるか?」

「せっかくだし今日は自由行動でいいんじゃない?」

「あたいも賛成だ。依頼を終えたばかりだしな。多少はのんびりしようぜ。」

「そうか。ユニはどうだ?」

「ん。私もいいと思う。」

では決まりだな。

「じゃあ今日は自由行動とするか。とはいえ、それならそれで何か行きたいところでもあるのか?」

「うん。実は宿の人に大きい本屋の場所を教わってね。そこに行ってみるよ。」

「へぇ、面白そうだな。あたいも行っていいか?」

「もちろん。じゃあ、僕達は早速そこへ行くよ。」

そういうと、2人は返事も聞かず部屋を出て行った。

全くせっかちな事だ。いや、これはバレている、ということかもしれないな。


「ルークはどうするの?」

ユニが聞いてくる。

「特に目的があるわけでもないが、折角だし街を見てこようかな。ユニは今日も寝ているか?」

「そのつもりだったけど、私もルークと一緒に行きたい。ダメ?」

「そんなわけないさ。じゃあ、一緒に行くとしよう。」

「うん!」

そう言ってユニは可愛らしく微笑むのだった。



要するにこれは初デート、というやつではないだろうか。

街を歩きながらそんな事を考える。

そう思うと急に緊張してしまう。

なにせ前世を含めて約60年。1度の人生なら還暦を迎えるという時間を過ごして、初めてのデートだ。

これは失敗は許されないな。



と、意気込んだのは良いのだが…

かれこれ10年近くの付き合いだ。

既に気兼ねは無く、一緒にいるだけで自然体になってしまうのが私達の関係だ。

しかし私はそれでも良いが、やはりユニは女性としてデートに対する期待もあるのでは無いだろうか。

「すまないな、ユニ。」

「?いきなりどうしたの?」

「いや、折角2人で歩いているのにこれではつまらないだろう?」

「…」

ユニは急に立ち止まった。

その表情はいつもに比べて固い。

「どうしたんだ?」

何か怒らせるような事を言っただろうか。

「ルークは。」

「あ、ああ。私は?」

「うん。ルークは頭がいいよね。」

「いや、そんな事はないと思うが。」

予想しなかった言葉だ。

確かに子どもの時は多少リード出来ていた。そのイメージのせいだろう。

なんて考えていると、

「ほら。今変なこと考えてるでしょう。」

「そ、そんな事はないぞ?」

言うまでもないが私は今仮面を付けている。この状態の私にこんな事を言えるのはユニとテオくらいだ。

「ううん。ルークは頭がいい。だけど、そのせいか意味のない事を考えちゃう。」

「意味のない事?」

「そう。前も、私がルークを好きなのは他に男の子の知り合いがいないから、とか言っていた。」

「それは…」

実を言うと、その気持ちは今も無くはない。

もっとまともな容姿の男友達がいれば、そちらに好意を持ったことだろう。

もちろん、だからといって今更ユニを離したくはないが。

「大丈夫。私はルークが好き。」

なんだかこの心の読まれ具合、女神を思い出すな。

「そんな、どこにもいない男の子の話なんて私は興味ない。だから、ルークは意味のない事を言っている。」

「…」

「それに今日もそう。私はルークと居られればそれでいい。楽しませてくれようとするのは嬉しいけれど、それでルークが謝るようじゃ意味がない。」

さっきから反論が出来ない。

そしてユニは言う。

「だから。」

「だから?」

「楽しい事は2人で探そ?」

「…ああ、そうだな。」

本当にユニと出会えて良かった。


そしてどうやら、私は尻に敷かれることになりそうだ。



その後、私達は露店を見て回っている。

「ユニ、これはどうだ?」

「どれ?あっ、可愛い。」

そう言って私達が見ているのは、おそらく貝で出来た耳飾りだ。

おそらくと言うのは、巻貝や二枚貝のような綺麗な形では無く、割れて四角くなった貝のかけらを更に加工しているためだ。

光を反射して、虹色に輝いている。

値段を見れば銅貨5枚。アクセサリーのことは詳しくないが、高価なものではなさそうだ。

「店主。これをお願いします。」

「へい、毎度!」

「いいの?」

店主から品物を受け取る私にユニが聞いてきた。

「構わない。というより、私がこれを付けているユニが見たいんだ。こちらこそ、いいか?」

「うん!」

ユニの笑顔が眩しい。


そしてそんな私達のやり取りに怪訝な顔を隠せない店主。

まあ、仕方ないな。

美女と野獣というか、美少女と化け物のような組み合わせだ。

素顔よりマシとはいえ、この仮面をつけた姿が奇異に映るのは避けようがない。

前世の夜道で会えば、都市伝説入りは確実だろう。


まあ、そんな事は置いといて。

ユニが早速、先程の品を耳につける。

子どもの時と比べだいぶ伸びた金色の髪。その下から見える形の良い耳。

そこについた耳飾りは相変わらず虹色に輝いて、ユニの魅力を引き立てていた。


「とてもよく似合っているよ、ユニ。」

「ん。ありがとう、ルーク。」

そう言って少し恥ずかしそうに微笑む彼女は、女神よりも美しかった。


今、私達は昼食を食べるために屋台があると言う区間に向かっている。

先程の露店から1時間も歩かずに、沢山の屋台の並ぶ場所に来た。

グラント王国のクーベルでも似たような場所があったが、あれよりは小規模ながら勝るとも劣らない熱気に溢れている。

私達は色々な屋台を物色し、塩を振って焼いたエビが刺さった串焼きを購入した。

味は期待を裏切らず、私としては久々の、ユニにとってははじめての引き締まったエビの身を堪能していると、

「おっ、あんたらは」

男性の声が聞こえた。


そこにいたのは今朝別れたばかりの船乗り、ロックさんだった。



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