第10話 ユニとテオとの出会い

「今日はもう一ヶ所お前を連れて行く場所がある。」

「もう一ヶ所ですか?」

さてどこだろうか。

「何、行ってからのお楽しみというやつじゃ」

そう言って笑うと、いつもよりウキウキとした様子で師匠は先を歩いていく。

1時間も歩いてはいないだろう。ある建物の前についた。

先ほどのギルドは二階建てだったが、こちらは一階のみ。

しかし、見るからに広さはこちらの方がありそうだ。

そして中から聞こえる子どもたちの声。

「師匠、ここは一体?」

「中に入れば分かる。さあ、行くぞ。」

そして師匠を先頭に中に入っていく。

実は、建物の前に来た時点で予想はついていたが、その通りにここは戦闘技術に関する道場だ。

日本の剣道道場に雰囲気はかなり近い。

大きな違いといえば子どもたちの持っている道具の種類が随分と多い事だ。

ちょうど組手の時間らしくそれぞれの武器がわかる。

武器は全て木製の上に布を巻いているようで安全に気を使っているようだが、ある子は剣を持ち、その相手は槍を持っている。

かと思えば、短剣と素手で戦っている子どもたちもいる。

道場の奥には、門番のルイーズさん以上に大柄で筋骨隆々の男性が腕を組み、子どもたちの様子を見守りながら、時折、もっと踏み込めとか、反応が遅いなど声をかけている。

見た目は40歳くらいだろうか。

師匠がその男性に声をかける。

「カイゼル。忙しいところ悪いな。話していた儂の弟子を連れてきた。」

「ラトじゃないか。よく来てくれた。よし、みんなは一時休憩だ。体を休めておけ。それと武器を使っているものは、布をもう一度巻き直しておくように。」

そういうと、こちらに向かって来て、師匠と握手を交わしている。

だいぶ親しい仲のようだ。

「こいつが以前話してた弟子だな。」

「そうじゃ。ルーク、挨拶を。」

「はい。ラト師匠の弟子でルークと申します。どうぞ、よろしくお願いします。」

「おう、俺はカイゼル。お前さんの師匠とはそれなりに長い付き合いだ。見ての通り、この街で戦闘技術に関する道場をやっている。よろしくな。しかし、礼儀正しいやつだな。俺の子供たちにも見習わせたいぜ。お前さん、年はいくつだ?」

「今年で6歳になりました。」

「まじかよ。じゃあ、うちの子どもと同い年じゃないか。おーい、ユニ。テオのやつを呼んで、こっちに来てくれ。」

「ん、分かった。」

剣を持った眠そうな目をした少女が、外に向かっていく。

「あっちには弓用の鍛錬場があってな。妻が指導しているんだ。」

そうカイゼルさんが教えてくれると、すぐに先ほどの少女がもう1人、少女を連れてきた。

「こいつらは俺の子どもでな。双子なんだ。こいつはルークって言って、ラトの弟子だそうだ。お前たちも挨拶しな。」

「私はユニ。剣を勉強してる。よろしく。」

「ぼ、僕はテオです。お母さんから弓を教わってます。あの、その、よろしくお願いします。」

テオという少女は、名乗るとすぐにユニという少女の後ろに隠れてしまう。人見知りをするタイプみたいだが、6歳といえば小学生になりかならないかだ。こういう子もいるだろう。

改めて見るとどちらも可愛らしい顔立ちの少女だ。金色の髪を、ユニは肩まで伸ばし、テオは短く切り揃えている。双子というだけあり、顔立ちはよく似ているが、髪型と表情がだいぶ違うので見分けは簡単につく。

と思っていると、ユニから爆弾情報が。

「ちなみに、テオは男の子。」

「へ?」

マジか?女の子にしか見えないが。

「かっかっか。やっぱしお前さんも勘違いしたか。気持ちはわかるぜ。初めてテオを見て男だって分かったのは、ラトだけだからな。」

「ん。ラト先生はすごい。私でも、たまにテオがどっちか忘れそうになる」

「そ、それはそれでどうなんでしょう。」

「細かいことは気にしない。ところで、あなたがラト先生の弟子?」

「あっ、はい。ユニさん達のお父さんからもあった通り、ラト師匠の弟子でルークといいます。お父さんに聞きましたが、同い年だそうで、よろしくお願いします。」

「ん、こちらこそよろしく。それから私たちのことはユニとテオでいい。それに普通に喋ってくれていい。」

そう言って手を差し出してくる。なかなか社交的な子のようだ。手を握り返し、

「分かった、ユニ。」

握手を交わす。

「それにテオもよろしく。」

「う、うん。よろしく。」

おずおずと言った感じだが、それでもコミュニケーションがとれているのだから十分だろう。

それらを見て師匠が話し始める。

「仲良くなれそうで何よりじゃな。ではカイゼル。以前話した通りよろしく頼む。」

「おう、ラトにはうちも助けられている。任せてくれ。」

なんのことだろう。

いや、状況を見れば何となく予想はつくけど。

「よし、じゃあルーク。お前さんは今日からうちの門下生だ。シゴいてやるから楽しみにしてろよ。とりあえず今日は見学していけ。」

やっぱりか。

「ルーク。お前がうちの庭で棒を振りましているのは知っている。森で暮らすのに体を鍛えて悪いことはないし、ここなら儂も信頼できる。色々と教えてもらいなさい。」

「分かりました。ラト師匠。これもありがとうございます。」

「しっかりな。儂はその間、必要なものを買いに行ってくる。カイゼル、まだ時間はあるんじゃろ。」

「おう、大丈夫だ。2時間くらい後に頼む。ユニ、ルークを連れて行ってやれ。テオも戻っていいぞ」

「分かったよ、お父さん。」

「ん。ルークこっち」

ユニに手を引かれ、道場の一角に連れて行かれる。そこに座り待っていると、程なくして稽古が再開された。

再度元気な子どもの声とカイゼルさんの指導の声が行き交うのだった。




後になって振り返れば、今日は私の人生の中でも特に重要な日になった。

魔法の師匠に加え、武の師匠が出来たと共に、ユニとテオという大切な幼なじみに出会ったのだから。

ちなみにラト師匠はここで、字の読み書きを教えているそうで、カイゼル師匠と話していた時間はそれについてだったらしい。

なお仮面については、ここでも火傷があると説明した。小さい子達の中には、外してと言ってきた子もいたが、年長組からたしなめられて諦めていた。

これも師匠の言っていた、魔獣の尾を避けるということを子どもたちも知っているからだろう。

なんにせよありがたい。

折角の道場に早速通えなくなるところだった。

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