第5話 この世界について考えてみる

生活のパターンに、風魔法の訓練が入った。

1月も続けると、なかなか魔力が尽きないようになり、今では両手に空気の玉を作っている。

それでも尽きなくなったら、集める魔力量を増やしてみようか。



とりあえず今後の目処が立ったところで改めてこの世界や私の現状を整理しよう。


まずこの世界を表す名前はない。

まあ、異世界の存在を知らない以上、この世界の大部分の住人にとって世界といえばここ一つだ。名前が無くても困りようがない。

また大陸もここ1つしか知られていない。

前世で住んでいた地球のように、いくつもの大陸がある可能性も否定できないが、少なくとも現在、その存在は確認出来ていない。

そして唯一であるこの大陸についても、十分な調査は出来ていない。

その原因のうち大きなものは文明の低さと魔物の存在だ。

そう、この世界には魔物が存在する。

魔物とは、魔力を持つ動物で人間に危害を加える存在らしい。

当然見たことは無いので、本での知識だが。


この部屋にあるたくさんの本に目を向ける。

どれも子ども向けだが、世界についての基礎的な勉強には十分すぎるものばかりだ。

他にも木の馬やらのおもちゃも豊富にある。

これは推測だが、生まれる前、もしくは生まれた後しばらくの間に両親が用意したのだろう。


それだけ子どもを楽しみにしていたのだと思う…

前にも言ったが、私は両親を恨んだり憎んではいない。

むしろ同情的なぐらいだ。

もちろん、育児放棄は立派な虐待の1つだが、使用人を雇って、こうして生きていけるだけの世話はしてもらっている。

願わくば、今度こそは愛せる第2子が生まれることを。


とはいえ現実は変わらない。

そう。今の私は、どれだけ否定されようと、グラント王国の貴族、ゼルバギウス家の長男だ。

グラント王国は現在私が知る唯一の国家だ。王がいて、それを貴族が支えている。

ゼルバギウス家はそのグラント王国の貴族だ。

爵位などもあるのだろうが、今はそこまでは分からない。

ただ、「こんなのが将来の領主様か」と言われた記憶があるので、世襲制ということと領地を任されている事は確からしい。

また「あの領主様にこんな子が生まれるなんて。お可哀想な領主様」と真面目なトーンでいう言葉も聞こえ、父は領民からは慕われているようだ。


今わかるのはこの程度だろう。やはり何故前世の記憶を持ってこの世界に生まれたのかは分からない。

とはいえ、この世界を生きているのはまぎれもない事実。

だからこそ今後も体を鍛え、魔力を鍛え、知識を磨き、立派な領主を目指そう。

それぐらいしか、目標にできそうなことはないからな。

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