第18話 嬢王のPCは夢いっぱいだね!
教室に戻り、自分の席へと戻る。昼休みもあと5分もない。早くやり取りしないと……隣に嫌々と目を向けて見る。
あー……こっち見てるよ。なんだよ。PCだけ寄越せやゴルァ。って言うのはわけもない事だが、そんなんで断られたら
「あの、
顔をなんとか引きつらせないように話すと、声が引きつるという二重トラップ。
待ってましたとでも言うように微笑みで返す新垣。
「陣内さんから聞いています。なんでもノートパソコンを貸して欲しいとか?」
「あぁ、ちょっと野暮用で。貸してくれると助かるんだが」
「いいですよ」
ノータイムレスポンス、怖すぎる……。何企んでやがるんだ……?
「事情とか聞かないの……ですか?」
「何言ってるんですか。他ならぬ
鞄から取り出したかなり薄型のノートPCを取り出し、まるで長年の親友に対してでもあるかのような言葉を向けてくる彼女に対し、俺は軽く身震いしてしまった。
「で、でも、人に見られて困るものとかあるんじゃ」
「そんなもの、私にあるわけないじゃないですか」
嘘つけぇ! と全力で突っ込みたくなったが、そういう系は流石に自分以外見れないように、こいつならしてるだろうな。
「お、おぉ……じゃ、じゃあお借りします。あ、あとこのノートPCカメラは使えるか?」
「勿論ですが、スカイプでもするの?」
「その感じならスカイプは入ってんだ。当たらずとも遠からずって感じかな」
俺がノートパソコンを開いて確かめようとすると……なんか色々と書いた紙切れが挟まっとる。
横を見ると、ニコーッと優しい笑顔をこちらに向け、崩さない新垣。
なるほどね。こいつが周りに対して口には出せないダークな部分がこの紙切れに書かれてるわけだ。
俺は起動させながら紙片の文章を読む。
【ノートパソコンを貸す代わりに私の言うこと一つ聞いてもらうから】
「はぁ!?」
そこまでしか読んでないのに、俺が大声をあげたもんで、教室中が何事かとこちらを凝視した。
「あ、や、な、なんでもない、っす」
チクショオォー! 人の弱みにつけ込みやがる。なんて女だ! 知ってはいたけども! イライラしていると、ログイン画面に移り変わる。あ、当然だけどログインパスワードあるじゃねぇか。
俺は新垣に新垣に画面を指さして見せる。
すると、急に新垣は慌てたようにノートPCを奪取、俺の訝しむ視線から避けるよう、見えないようにパスワードを打ち込んでいるようだった。なんだ?
「はい、ごめんなさい。起動のログインは誰でも出来るようにしておいたから」
「お、おう」
いつもの優しい笑顔の仮面が剥がれとる。
様子から察するに、ログインのパスワードが知られたくないものなのだろうか。
ノートPCを受け取り、カメラを起動。イケるな。後は……スマホからテザリングしてるなら、ネットも使えるわけだけど。
「なぁ、一個だけアプリ落としていい?」
新垣に尋ねると、キョトンとわざとらしい可愛い顔で小首を傾げる新垣。
「アプリ?」
「うん、チームビューア。あれがあれば、このパソコンを簡単な監視カメラに出来るからさ」
「チームビューアって確か、一方のパソコンから別のパソコンを遠隔操作させるアプリですよね?」
「おぉ、よく知ってんね。で、ダウンロードしていい?」
「いいですけど」
めっちゃ不服そうな顔してるじゃねぇか。何だよ。結構便利だよ?
ダウンロードしてる間、俺は紙切れの続きを読み進める。
土曜日、名駅銀時計に10時に来なさい。
「はぁ!?」
またまた大声を出してしまった俺に一斉に視線が向く。
「す、すんません」
まーた俺がみんなから怪訝な視線を受けてしまったじゃねぇか……。
「受けてくれますか?」
俺の反応から読み終わったのを悟ったらしく、新垣ゆかなにいつもの仮面が戻る。
端的に言うとすっげーー嫌だ。理由もわからんし。
昼休み終わりのチャイムが鳴る。何故か俺にはこれがゴングの音に聴こえた。
だが、遥さんのため……これは……遥さんの為の聖戦!!! 恋愛の神からの挑戦状と捉えるならば!!
「おうよ、受けて立つぜ」
「それは良かった」
こうして、好きな人の非常事態中にもかかわらず、
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