第12話 語彙力が可憐しか無い元ヤンくん
そんなこんなで昼休みである。
遂に、俺の天使!
因みに更生してからの俺は授業をしっかりと拝聴しながら、板書を取って、予習は完璧にしてきてあるので、問題にも答えられる。
予習というのは、いっつも学年1位の
「さぁて、じゃあ
携帯を触りながら近づいてきた昂輝が、なんでもなさそうに言うので、感心してしまう。
「相変わらずテキパキしとんね。副会長殿は」
「
「だってそっちの方がロックだろ」
「確かに会長はそっちの方が喜びそうだ」
柔和に笑む昂輝。
会長になる前の去年はそんなんじゃなかったと思うんだけどね。何の影響なんだか全く。
「それで、石原さん、どう
「お、おぉ、口説くか。そうだよな。これから口説くんだよなァ!」
「いきなりテンション高い……」
やだ! あたすそんなにテンション高くなっちゃってるかしら!?
上がってますねうん。おのぼりさんですわ。
「まずお昼一緒に誘おう。孝宏は弁当?」
「いんや、学食。250円ラーメンのつもりだった」
「了解、ほら行くよ」
昂輝が前の方の自分の席で、一人昼食に勤しもうとしてる
「石原さん今ちょっといいかな?」
「はい」
昂輝と、俺、交互に視線が移ったところで、遥さんは凛と頷く。あぁ、今日もショートヘアが似合っておられる。可憐だ。
「今日一緒に学食で食べない? 生徒会の事で相談したい事があるんだ」
「お、おねがいしやす!!」
俺は全力で90度を意識したお辞儀をかます。
「はい」
抑揚のない、クールな返事。なんて凝縮された無駄の無いレスポンスなんだ。可憐だ。
三人で廊下へと出て、学食まで向かう。
「石原さんは、いつも弁当なの?」
「はい」
「そうなんだ。まさか手作りとか?」
「はい」
「凄いなぁ。料理上手なんだね」
「はい」
いいなぁ、昂輝。会話できていいなぁ。
と眺めていたら、昂輝が頬をひくつかせながら、遥さんに聞こえないように耳打ちしてくる。
「あのさ、孝宏なんでこの子の事好きなの? 俺さっきからこの子から『はい』しか聞いてないよ?」
「話せば長いぞ。聞くか」
「あ、いいや、うん」
何でそんな興味無さそうなんだ……。
よ、よし。俺も遥さんに話しかけてみるぞ。
「石原は……今音楽部では何の曲やってるんだ?」
ち、ちょっと素っ気なかったか? 自分の声音に自信を持てないでいると、遥さんはこちらをジーっと見てから、言い放つ。
「明日に渡れ」
「明日に渡れ?」
昂輝が分からなそうに軽く首を横に傾げるが、俺はおぉーと感嘆の息を漏らす。
「合唱曲か。石原はアルト? ソプラノ?」
「ソプラノ。でも本当はアルトの方が得意」
「音楽部の人が少ないからソプラノやってあげてるんだろ? 大変だよな」
「平気。ソプラノもアルトも歌うのは両方楽しいから」
「そーか。俺も歌は好きだぜ」
「そう」
おおーなんかそれっぽい会話が出来たぁ。今日は朝からクソみたいな一日だったと思っていたが、過去最高に幸福な日に早変わりだぜぇ!!
俺が心の中でPERFECT HUMANを踊り出していると、横から信じられないものを見るような視線を向けられている事実に気づく。
「俺より孝宏の方がコミュニケーション取れてしまう女子がいたなんて」
「おい、ショックの受け方失礼過ぎるわ」
そんな会話と言えるか微妙なラインの話を交えつつ、学食へ着くと、俺は食券の方へ、弁当の昂輝と遥さんは二人で席を取りに行った。
遥さん、生徒会入ってくれるかなぁ。入ってくれたらもう本当俺の生きる
さーて、ラーメンラーメン、俺のラーメン。
「やっからー、やっからー、ブッキーやっからー」
……この馬鹿にしたような馬鹿な感じの歌を歌う馬鹿の声はまさか。
振り向くと、そこにいたのは、わたくしの中ではクソ会計こと
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