46話 奴隷を住民にしてみた件

 解放したものの、行き場が無いので村の住人になりたいと志願する元奴隷の皆さんは以外に多かった。

 近くに家族がいる者ならば帰る場所もあるが、離れた位置であったり、まともな自宅がない者達も少なくない。

 奴隷から解放したと言っても金銭が無いし、大半の人は長旅の経験もないので、帰りたくとも帰れないのだ。


 エルフの街に残るよりは、人手が必要とされる開拓村の方が居場所も出来て溶け込みやすく、働きさえすれば家も持てるかもしれない。

 しかも、周囲に盗賊の類はおらず、防衛戦力も充実している。

 解放してくれたという恩義もあるのだろうが、打算もあっただろう。


 村の管理者としては一気に40人前後の住人が増え、食料が不安になる。


「おー、もう建設が始まってますよ、カデュウ!」


 無邪気な表情で、アイスが元気良く両手を広げた。

 その言葉通り、各所の予定地に土台が組まれ、早い所ではすでに出来上がっている箇所もあった。

 生産に従事する人達の為の家だ。


「うん、驚いたね。ちょっといなかっただけで、もう家が1つ建ってるとは」

「よーお、帰ってきたか。すげえだろ、暇だから俺達も手伝ってやったぞ」


 木材を抱えたゾンダ団長が、土木工事の手伝いをしているようだ。


「戻ったかね、魔村長。見たまえ、私の街がついに作られていくのだ。傭兵団の諸君も快く協力してくれたよ。おかげで大分捗っている」

「段々作られていくのって、なんだか楽しいですね。ターレスさん」

「しかも各所に私のセンスと工夫が入っているのだよ。地下水路を利用して、街全体に水を張り巡らせる。それぞれの家でいつでも水が出せるようになるのだ」

「ふふん。それは私のアイディアだぞ。あいでぃーあ! この、天才のな!」

「おお、ソト君。君の協力もあってゴーレム水路は完成が近いぞ!」

「え? ゴーレム水路って……何?」


「くくく。この天才魔術師ソトが、街の機能としてゴーレムを使いかゆい所に手が届く、ゴーレムの魔都を作ろうというのだよ!」

「やめてください、死んでしまいます。お金が」


「そこで、魔霊石の補充をだな……」

「まさか、もう使い切ったんですか……?」

「うん♪」


 この金食いロリめ。


「それで、その水路のゴーレムってどれぐらい持続するんですか?」

「壊れない限りは半永久的に動くぞ、水の流れがある限りな。役割を限定してあるからその分、融通が利くんだ」


 それはかなり凄い代物だ。

 ソト師匠はゴーレムに関しては本当に天才である。

 かかった費用ぐらいは大したものではないのかもしれない。


「元々、魔王城にそういう設備があったと話してやったら、まさかゴーレムで作るとはな。さすがの余も予想外であったわ。はっはっは」

「あ、魔王さん。ただいま戻りました」

「うむ、ご苦労。……ほう、後ろの者共が新たなる村人か」

「新入りの皆さん、こちらが魔王さんです。特に害は無いので気にしなくていいです」


 横から現れた魔王が、新たなる村人達を見据える。

 魔王と聞いて、驚いたり、怯えたり、わかっていなかったり。反応は様々であった。

 そのうち慣れていくだろう。多分。早ければアイスのように数分で。


「お、可愛いエルフちゃん達が一杯だな! カデュウ、よくやった!」


 そこに通りすがりのフルトもやってきた。


「フルトさん。これからこの村で一緒の生活する仲間達です、よろしくお願いします」

「よろしくしちゃうよー。どっかの可愛いくないエルフと違って初々しいな!」


 そのフルトの前に、後ろからエルフが歩み寄ってきた。

 怒りの表情に笑みを浮かべて。


「どうも、可愛くないエルフちゃんです」

「げ! エルバス……。いらっしゃったので?」

「ゴミフルト、可愛いエルフの為に森の肥料にしてあげますよ。よろしく」

「地味ですらなくゴミ! よろしくじゃねーよ、死んじゃうだろ! このゴリラエルフ!」


 猛烈な勢いで走り逃げながら罵倒を浴びせるフルト、それを追いかけるエルバス。


「作ってる所、壊さないでくださいね~」




 さて、新人のエルフ達は森で採集なり、狩りなり、出来る事は色々とあるだろう。

 だが、人間は少々仕事を考える必要がある。

 高級奴隷の候補だけあって、男女問わず容姿端麗で若く、華奢だ。

 雑用はともかく、力仕事は難しそうだ。


 そこで特技の有無を聞いていって、使えそうな者を選抜していく事にした。

 縫製が出来る者、木工や革細工など工芸が出来る者、料理が出来る者、釣りが出来る者、農業が出来る者などなど。


 何も特技が無い者は、希望する分野をとりあえず経験してもらう。

 細かい物の運搬などの雑用も交代でお願いした。


 牧畜をしていたという子達もいたが、生憎と家畜は飼っていない。

 そのうち、何か飼ってみてもいいだろう。


 それぞれ配属さえ決めておけば後は担当者が面倒を見てくれる。

 そこから先は魔村長の仕事ではないのだ。

 そもそも魔村長ってなんだって話もあるが。


「次は、採集された希少素材、っと」


 魔王城の一室に、山菜採りのエウロ婆さんが集めてきた薬草毒草や、傭兵団の皆さんが狩ってきた獣や魔物の素材が並べられている。

 食用の肉は別の場所に置かれ、こちらには希少なものを選別してあるのだ。


「おお、これは良い毒だよ。こっちも麻痺薬になるし、希少な薬草も結構あるね」

「へぇ、懐かしい。先生に貰った麻痺薬でしょう?」

「うん、そうだよ。クロスのはなくなっちゃった?」

「私は使う機会なんて無かったからね、お城に置いてきちゃった」

「はは、お姫様が使うものじゃないよね」

「交易商人が使うものでもないけどね」

「うーん……、薬屋さんならあるいは……」


 毒物を見比べながら嬉々としているカデュウとクロスに、ユディが苦笑しながら近づいてきた。


「毒の会話してる商人と姫ってのも凄い絵面」

「カデュウは商人じゃないですよね、アサシンです」

「そうだった、毒の会話はむしろ自然」


 一緒に物を眺めていたアイスまでもカデュウをいじりにくる。


「アサシンじゃないから、薬も商品になるから、冒険でも使うから」

「王侯貴族も毒は使うはずね……セーフ」


 華々しくもドロドロしてる、ある意味正しい王侯貴族の世界であった。

 毒殺公とかそんな人も歴史上に居た気がする。


「ユディは毒好きじゃない? 便利だよ」

「普通、こっちの上物の銀狼の皮とか、ハーピーの羽根とかを喜ぶ」

「それも良い品だよね」

「いいえ、こちらのレヒアリザードマンの鱗やサイクロプスの皮や骨でしょう?」

「そんなの住んでたの!?」


 さすが元魔王城と未開の地域である。

 色々凄い生物も同居していらっしゃったらしい。

 リザードマンは海側の北部に生息しているのだろうか。


「どっちも女の子とは思えない品物喜んでるじぇ……」

「私はこっちの黒壇の木が良いですね、落ち着きます」


 意外に落ち着いたものを好むアイス。

 カデュウも木材にはこだわるので、気持ちはよく分かった。


「それも渋い趣味だじぇ……」

「お前ら、もうちょっと女の子らしく可愛い物をだな……」

「ソト師匠も毒いかがですか、ゴーレムから毒を出すとか」

「ゴーレムに毒を仕込むか……、それもアリだな。ふーむ、しかし量がな……」


 所詮ゴーレム厨であった。

 そのまま毒マニアになって仲間になるが良いのだ。


「……女の子らしさ皆無」

「イスマは何が欲しい?」

「……おにく」

「イスマは可愛いなぁ」

「その子は、ただ食い意地が張ってるだけだじぇ……」


 さて、次は探索の報告書を読まなくては。

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